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「梨那さんはアイツと縁を切って、結婚するのね!」
香帆は、夫の不倫相手の幸せを祝福した。
因縁の女だが、話を聞くと、彼女も桜志郎の被害者だ。
「で、アイツはどうなったの?」
「悲惨な状況やで」
いつものソファーに少し浮いて座る颯真は、桜志郎の話を始めた。
香帆はダイニングテーブルで、冷凍食品の炒飯を食べながら聞いた。
「落ち込んで部屋に籠ってる」
「ホストクラブは辞めたの?」
「失敗したから、出られへん」
「え? 何したの?」
「店のナンバー1の誕生日会で、客を怒らせたんや」
ホストの『生誕祭』は、ホストクラブの重要イベントだ。
しかも『ナンバー1の生誕祭』となると、桁違いの売上になる。
この大切な日に、桜志郎はナンバー1の〈エース〉を怒らせた。
ホストの客の中で、一番お金を使う客を〈エース〉という。
ナンバー1の〈エース〉は、店にとっても上得意様だ。
その一番大事な客を、桜志郎は怒らせた。
金のことで頭がいっぱいで、つい対応が雑になった。
「しまった!」と思ったときは遅かった。
「何なの、この人。感じ悪い!」と〈エース〉の機嫌を損ねた。
桜志郎はバックヤードで店長と支配人に𠮟責された。
それから出勤していない。すべてにやる気を無くしたからだ。
不動産会社からの督促も始まった。
「人を殺してまで金を手に入れようとした報いやな」
「自業自得よ。梨那さんを苦しめた分も、地獄に堕ちればいいわ」
あとは、香帆と颯真の情報を桜志郎に教えた者だが……、
「調べたけど、関係無かったで」
昭和頭のパワハラ上司は、退職して実家の居酒屋を継いでいた。
店は郊外だ。桜志郎と接点があるとは思えない。
香帆と颯真の復讐は終わった。
颯真はやっと成仏できる。期限の1ヶ月に間にあった。
「明日、三途川さんに会いにいく」
「じゃあ、私が仕事から帰るまで待ってくれる?」
「ああ、最後に はなししたいし」
次の朝、香帆は宅配便の営業所に出勤した。
そして、予想外のことが起こった。