とある街にあるラーメン屋は、 他のラーメンよりもとても美味しい。 しかしその理由は店長にしか知らない。
僕はこのラーメン屋のアルバイター。 毎日来るお客さんの会計を任されている。 子供の頃からこのラーメン屋が大好きで 過酷な仕事なことを覚悟して、 ここでアルバイトしている。 給料もそれなりで食費や 家賃に困ったことはない。 というよりも、食費はかなり浮いていた。 店長は全店員にまかないを 用 意してくれるからだ。 僕は そんな店長に憧れている。 いつか自分自身でラーメン屋を開いて、 お客さんの笑顔とお客さんの ご馳走様を聞いてみたい。
そんな夢を持っている中、 僕は店長を夜道で見つけた。 いつものタバコ休憩をしているのかと 納得していると、誰かと話していた。 黒いスーツと黒いシルクハットを 被った男と店長が喋っていた。 店長さんもタバコ仲間がいたんだな。 邪魔したら悪いし、別の道へ帰ろう。
【数週間後… 20XX年07月5日】 今年の夏も大繁盛、休む暇なんてない。 脳がパンクしそうだけど、 店長にも他の店員にも 迷惑かけるだろうし、我慢した。
閉店時間となり、皆帰っていく。 僕は倒れそうになったことが店長が気づき、 店長に心配された。
店長 「大丈夫かい?」 僕 「だ、大丈夫です…。」 店長 「家まで送ろうか?」 僕 「い、いや、一人で帰れます…。」 店長 「そ、そうかい… もし体調悪かったらいつでも 連絡してくれても構わないよ。」 僕 「わ、分かりました…。」
僕はさっさと支度し、帰った。
【20XX年07月05日 23:55】 頭がパンクしているのか全然眠れない。 熱も出ていて布団に入り、 冷えピタを貼っている。 念の為マスクを付けたが、呼吸をしようと思うと 苦しくなり、結局付けずに寝ようとしていたが、 家の外が何やら騒がしかった。
僕 「何だろう、こんな深夜に騒がしいの 地元のカエルの鳴き声以来なのに。」
僕は外を覗いてみると、 そこには悲惨な出来事が起きていた。
それは… 言葉では言い表せない… ただ表せられることが出来るとしたら 漢 字で4文字だけだった…
《殺人事件》
それが起きていたのだ。 しかも犯人が店長と一緒にいた 黒いスーツに黒いシルクハットの男だった。 目の前で起きた惨劇に衝撃が走った。
【翌日 20XX年07月06日】 未だにあの光景が忘れられない。 目の前で殺人事件が起きていたのだから。 ドラマの撮影とは思えないぐらいリアルだった。 いやそもそも撮影だとするなら、 カメラマンやスタッフが居るはず。 つまり、本当の殺人事件だった。 あぁ、もう考えたくない。 昨日から続く頭の痛みと 熱で動きたくても動けない。 今日はバイトをお休みさせてもらおう。
【20XX年07月09日 01:35】 何とか病院へ行き、診察をして、 薬を貰い、飲食後に薬を飲むと 頭の痛みと熱が治りつつあった。
明日からバイトを 頑張っていこうと張り切っていると、 外にて声が聞こえてきた。 盗み聞きしていると、 このような会話が聞こえた。
店長 「いつもご苦労さんです。」
その声は店長だった。 店長ってこの辺に住んでなかったような… そして別の人が店長と喋っていた。
???「それであんたの店は 繁盛してんのかい?」 店長 「繁盛してるさ。」
店長って他人に店のこと話してたっけ?
???「驚いたよ、まさか俺に対して 依頼を出してくるなんて」
依頼?何の事だ?
店長 「あんたの働きは感謝してる。」 ???「はいよ、いつものやるよ。」 店長 「いつも”美味しい出汁”を 渡してくれてありがとう。」
美味しい出汁?まさか… いや考えたくもない。 あのラーメンに「死体の骨」を使って 出汁をとってるなんて考えたくない。 チャーシューが歪な形してたのは 「死体の肉片」だったのか? 考えたくもないのに、創造してくる…。 その時ゲロが出そうだった。 いや、もう既に出そうだった。 さっさと吐き出して寝てしまおうとしたが、 歩こうとすると、ギシッと床が鳴り響いた。
???「おい、あの家からギシィって
何か聞こえたぞ。」 店長 「聞かれてたらマズイぞ、あのアパートの 誰でもいいから住人をやっちまえ。」
気づかれた?! マズイぞ…玄関からじゃなくて、 裏の方から出てしまおう。
【走り続けて数分後】 走り疲れた…。 ここまで来れば大丈夫だろう…。 でもこういうの映画で見た事ある。 大体こういうセリフが出てきた時は…
???「お前、聞いてたな?」 僕 「ッ?!」
やっぱりフラグ回収しちゃうのかよ! 僕は必死に走った。 殺人犯も僕のことを追いかける。
???「待てよ!お前はこの街の養分に なるだけなんだよォ!!」
この街の養分…かなりの人数が ラーメンの材料にされてしまったのか…。 そしてそれは僕が食べたラーメンの分も含めて。
僕 「助けてくれー!誰かー!」
深夜だろうと僕は叫んだ。 何でもいいから何かの 可能性を信じて叫んだ。 しかし僕は足を挫いてしまった。 僕は足を挫いたとしても叫んだ。 しかし返ってくるのは自分の声のみ。 諦めて殺されるしかないのか?
???「叫んだって無駄だ! 深夜という人が寝静まる時間で 誰も助けに来ることはないぞ!」
『無駄』?そんなことはない気がする。 何故ならこの世界に『無駄』なんて 言葉は似合わない。 この世界は『可能性』を信じれば、 必ずしも”それ”は叶うのだ。
僕 「助けてくれー!誰でもいい! 警察に通報してくれー!」 ???「大声を出すなよ、 静かに殺せないじゃないか。」 僕 「僕は殺人犯に殺されるー!! 誰か…誰でもいいから 助けれくれよォォォ!!」
僕はこの時気づいていなかった。 涙が流れ必死に叫んでいたことを。 でもそんなことは全く気にしていなかった。 ただ助かればそれで良いと思った。 そんな時だった。
ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…
パトカーのサイレンが遠くから聞こえてきた。 誰だか知らないが、 僕の叫び声に気づいて、通報してくれたようだ。
???「ま、マズイ、逃げないと!」 警察官「そこまでだ!手を上げろ!」 ???「おわっ!!」 警察官「07月09日 深夜02時丁度!逮捕!!」
【数日後… 20XX年07月16日】 その後、殺人犯が逮捕されたニュースが流れた。
そしてあのラーメン屋が家宅捜索され、 様々な証拠により、店長も逮捕された。 この事件は世間にとっては 衝撃に走ったことでしょう。
何故なら人間の骨で出汁をとったラーメンなど とんでもない事件だからだ。 テレビを付けるとこの特集ばかりで、 見るだけで気持ち悪くなってくる。
そして僕は、自身でラーメン屋を 開店することになりました。 名前は『皆の居場所』。 このラーメン屋で食べるお客さんは とても笑顔で溢れていた。
それ見て僕はとても幸せだった。 さてそろそろ限定のラーメンでも作ってみようかな。
The End…







