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「関係ないわけないだろ。……紗南ちゃんは、僕の大事な……」
「大事な、何? また『妹』って言うつもりかよ」
遥が遮るように吐き捨てた。その言葉は、凌先輩が自分自身を守るために使ってきた盾を、容赦なく粉砕していく。凌先輩は一歩、また一歩と私たちの方へ近づいてきた。その瞳は、今までに見たことがないほど激しく揺れている。
「僕は……ただ、昨日のことを謝って、ちゃんと今まで通りに……」
「今まで通りなんて、もう無理なんだよ。あんたが壊したんだからな」
遥の腕の中で、私は震えることしかできなかった。目の前にいる凌先輩は、私の知っている完璧な「お兄ちゃん」じゃない。余裕を失い、なりふり構わず追いかけてきた、ただの男の子に見えた。
「……紗南ちゃん」
先輩が、縋るような声を出す。
「ごめん。僕が間違ってた。……君が誰かと並んで歩くなんて、そんなの、考えたこともなかった。……嫌なんだ。君が、僕の知らない顔をして笑うのも、誰かに触れられるのも」
それは、先輩がずっと見ないふりをしてきた「独占欲」そのものだった。「妹」という便利な言葉で繋ぎ止めていたかった。でも、それを自分から手放した瞬間、別の誰かがその場所を奪いに来る。その恐怖に、先輩は耐えられなくなったんだ。
「今更、遅いんだよ」
遥が低い声で言い放ち、私をかばうように前に出る。凌先輩の瞳に、絶望と、それを上回るほどの剥き出しの執着が混ざり合う。幼なじみという平穏な関係は、もう二度と戻らない。三人の想いが、夕暮れの公園でついに真っ向から激突した。