テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「れぃ……倫子。本当に“禁断の地”って感じだけど……」
悩ましげなラインを描く麗香の腰を、そっと指でつつく。
「大丈夫だって。……なら、禁断の地は撤回。快楽の地に変更」
「快楽……!?」
思わず声が突き上がった。その声量にはっとして、慌てて口元を押さえる。
その反応を面白がる麗香は、くすくすと笑っている。
「いらっしゃいませ。お二人様、お待ちしておりました」
扉の前に立つガードマンが恭しく一礼し、重厚な扉に手を掛ける。
「こんばんは」
麗香はまるで常連客のような余裕を漂わせ、優美にに微笑み返した。私も慌てて頭を下げる。
ガードマンに押され、重厚な扉がゆっくりと開いていく。
「……あれ? また扉?」
身構えていた分、拍子抜けした声が漏れた。
五メートルほど先には、再びガードマンが一人。
その傍らには、一般的なホテルの客室より少し大きな片開きの扉がある。
「びっくりした? 次は肩透かしなしだから安心して」
麗香は悪戯げに目を細めた。
そして――
動揺を隠せない私の前で、二つ目の扉が静かに開かれた。
私の目の前に広がっていたのは、思い描いていた光景とはまったく違うものだった。
広々としたワンフロアの空間。
二十人ほどの男女が、会話を楽しみながら立食している。
紳士的な雰囲気をまとったスーツ姿の男性たち。
気品と大人の色香を漂わせるドレスアップした女性たち。
年齢も二十代から六十代ほどまで様々に見える。
「ねぇ……」
私は反射的に麗香の手首を掴んだ。
会場に入って三歩。
そこで足が止まってしまう。
「え? なに?」
手を引かれた麗香が振り返った。
「ここ、本当に私なんかが来てもいい場所? ……想像してたのと全然違うんだけど」
どう見ても超セレブたちのホームパーティーだ。
そしてどう考えても、こんな場所に私がいていいとは思えない。
今は医師という職業に就いている。
けれど、生まれ育ったのは決して裕福とは言えない田舎町の家系。
そんな自分が紛れ込んでいい空間には見えなかった。
場違い。
その一言が頭に浮かぶ。
「やだぁ。まだ入ったばかりで何を圧倒されてるの?」
麗香は呆れたように笑った。
「この部屋ね、普段はパーティー会場じゃないの。会員制の重要な会議なんかに使われてる場所。このホテルで一番高価で、一番広いスイートルームよ」
「市内で一番高価なホテルの、一番高価なスイートルーム……」
聞かなければよかった。
ますます私が足を踏み入れていい場所には思えない。
華やかな装いの人々を見渡しながら、必要以上に瞬きを繰り返す。
「とにかく行こ。こんなところで突っ立ってたら、かえって目立つわよ」
麗香は私の手首を引いた。
「大丈夫。患者さんと話す時みたいに微笑んで、適当に話を合わせてればいいから」
「ちょ、ちょっと……倫子、待ってよ」
患者さんと話す時みたいにって。この空気の中でそれは無理でしょ!
「大丈夫、大丈夫。まずは何か食べよう。食事してるうちに緊張もほぐれるから」
色とりどりの料理が並ぶテーブルの前で足を止める。
そして麗香は、真っ白な皿を私へ差し出した。
「はい、どうぞ」
#狂愛
柏木さくら
829
西原衣都
866
#ロマンスファンタジー
Jasmine
724
瑠璃マリコ
10,376
コメント
1件
「禁断の遊び(3)」読了したわ!第10話、いよいよパーティー会場に突入か…と思いきや、二重扉の仕掛けとか、場違い感にビビる主人公の心情がめっちゃリアルだった。麗香の余裕ある大人な対応との温度差がいいアクセントになってるよね。この高級スイートルームでどんな“遊び”が始まるのか、続きが気になりすぎる🔥 柏木さくらさんの世界観の広げ方が上手いなあ