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しかししばらく経ち煽っていた生徒たちも、少しずつ変わっていった。
最初は面白半分だったはずだ。
留年、年上、先輩。
からかいやすい要素を並べただけ。
でも先輩は、全部を否定しなかった。
「そうだね」
「教えてくれてありがとう」
「気にしてくれてるんだ?」
そんな返しを、いつも同じ温度で続けた。
強くもなく、弱くもなく。
ただ、優しい。
すると不思議なことに、
煽っていたグループの空気が、だんだん変わっていった。
「藤澤って人さ、普通にいい人じゃね?」
「話しやすいし」
「なんか安心する」
いつの間にか、
からかいはなくなり、
名前で呼ばれ、
笑って会話をするようになっていた。
それはまるで、
氷が溶けるみたいに自然だった。
(……すごいな)
正直、尊敬した。
先輩のような優しさで、人との距離を溶かしていく。
気づけば、あの人の周りには人が集まっていた
昼休み、パンを食べながら話す姿。
廊下で呼び止められて、立ち話をする姿。
誰かに相談されて、静かにうなずく姿。
「藤澤先輩、ここ教えて」
「あとで一緒に帰りません?」
友達は、確実に増えていった。
なのに。
(なんでだよ……)
胸の奥がざわついて仕方なかった。
俺は教室の隅から、
先輩の横顔を見つめていた。
溶かしているのは、周りだけで、
自分のことは、ずっと凍らせたまま。
そんな気がして、
喉の奥が、少し苦しくなった。
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