テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
周りに背が高い木が果てしないほどある森林の中、2人の少年が雨宿りをしていた。
今は雨がやんだものの雫が木の葉を伝って地に落ちていた。その雨のせいで地面は泥と化していた。木の葉の隙間からだんだん光が差し込んできた。
「雨…やんだかな…?」
近藤剛史(こんどうたけし)は友人である浜竹賢太(はまたけけんた)に話しかけた。
「帰る?」
「そうしよっか」
時刻は午後5時を超えていた。すでに帰らないといけない時間であった。2人が家へ帰ろうと足を進めた途端。なにやら物音がした。
ドシドシ
大きな足音と思われる。2人は進めた足を止めた。
そして目の前を見た。そこにいたのは大きな人影だった。はっきり姿は見えないが大きな人と思われるものがいる。剛史はそれに怖がり、賢太の背後に隠れた。すると、その大きなものはこちらを向いた。そのとき、2人は確信した。
「鬼だ…」
大きな体は赤色で藁のパンツを穿いていた。頭には銀色の尖った三角の角が生えていた。目は黄色に光り、2人は恐怖で体が動かなかった。
「ウシロノオトコヲダセ」
重低音の声が響く。それを聞き、剛史は答える。
「俺のこと?」そう言うと剛史は前に出た。
「ハッハッハッハッ」
鬼がそう笑う。すると、鬼は赤い大きな腕を剛史の居る方に伸ばし、大きな手で剛史を掴んだ。そして剛史は身動きが取れないまま鬼の口の中に運ばれた。
ゴクン
賢太は強張った体を無理やり動かし、足元の泥と化した床を蹴り飛ばした。そして、どんどんどん遠くなる。後ろは振り向かなかった。
「は〜ったくよ〜あの先生は…」
高校生一年生になった賢太は勉学に明け暮れていた。この日の一限目は科学だった。賢太は科学担当であるピンク色のメガネをした先生が嫌いなのだ。名前は池谷花江(いけがやはなえ)という。性格は賢いと自画自賛しており、いつも気取っている。そしてなにより、理不尽なことが多い。ほとんどの人が嫌っていると言ってもいい。
「まっ頑張ろうぜ〜」賢太の友人である熊谷雅人(くまがやまさと)はいつも軽く、思い詰めない。そんな彼は弓道部で全国大会へ駒を進めた。賢太はバスケ部でいつも練習を頑張っているが全国大会はいけず、予選2試合目で敗退した。青春を満喫している2人は高校で出会った。言ってしまえば今年だ。
「あっ!そうそう、弓道の大会来てくれるよな?」
「まあそれはな」
「おお!よっしゃー!やる気が湧くぜ!」
他愛のない会話をし、休み時間を潰した。そんな日が毎日続くのだ。波乱万丈よりはいい。賢太はそう思っていた。
そんなある日。今週は部活がないということで賢太は雅人と家へ帰っていた。その時。曲がり角から賢太たちが通っている高校の制服を着た、男子高校生が歩いてきたのだ。そしてその男子高校生の顔を見た瞬間、賢太は驚いてその場で立ち尽くしてしまった。
「はっ…た…剛史…?」
剛史とは賢太が小1の頃仲良くしていた友人だ。しかし、不思議な出来事があり彼は死んでしまったと思っていたのだった。その彼と顔がそっくりだったのだ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!