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高地は、視界の隅で倒れた樹を捉えた。
「⁉」
持っていた銃を投げ捨て、駆け寄る。4人も気づいた。
「樹⁉」
「おい!」
「嘘だろっ」
高地は振り向き、「お前らは続けてろ!」
と叫んだ。樹を背負い、急いで車まで運ぶ。「おい、大丈夫か」
揺さぶるが、ぐったりしていて反応は薄い。
楽なほうがいいだろうとネクタイを取り、シャツを緩めた。
「くそ…、ごめんよ樹。守ってやれなかった…」
そっとシャツをまくると、右の脇腹に傷口がある。わずかに息を呑んだ。
「…どうしよう」
トランクに回り、入っていたタオルを持ってきて押さえた。みるみるうちにタオルが深紅に染まっていく。
こういうのは慣れているはずなのに、目を覆いたくなった。
まさか身内が怪我するなんて考えていなかったから、あとの対応がわからない。とりあえずドアを閉め、ほかのメンバーが終えるのを待った。
4人が半ば焦るようにターゲットを片付けると、先に戻っていた高地と樹のもとに走って向かう。
「樹は!?」
「何があった」
高地は振り向き、「……撃たれてる。脇腹らへん」
「え…」
「とりあえず急いで戻ろう」
冷静な北斗の声に、高地もうなずいて運転席に乗り込んだ。「ちょっと誰かここ押さえてて」
車を発進させると、
「処置どうしよう…」
ジェシーが不安そうに樹を見つめながらつぶやく。
「病院に連れてったら銃創ってわかるよね、たぶん」
樹の手を握る北斗が悔しげに言う。
「それはまずい。警察に嗅ぎつかれるかも」
大我は身震いした。
ずっと苦悶の表情を浮かべている樹に、心配は募るばかり。
すると突然、「あっ、そうだ!」
車内に響いた大声はジェシーがあげたもの。
「どうした」と目を丸くして聞く。
「俺のアメリカ人の友達に、医者やってるのがいる。都内に住んでると思うから、連絡取ってみるよ」
スマホを取り出し、操作しはじめた。
「そんなの初耳なんだけど」
「すげーな」
と驚きだ。
電話が繋がったらしく、ジェシーは英語で喋りだした。少し話したあと、
「来てくれるって。俺の仕事のことも知ってるし、ずっとアメリカでやってきたから銃にも慣れてる」
良かった、と安堵の息をついた。
「樹、ベッド寝かせるよ」
無事に家に帰ってきた6人。さっきまでの仕事の殺気はどこへやら、高地が優しく声を掛ける。
そのまま寝室に行き、慎太郎が持ってきたバスタオルの上にそっと寝かせた。
「大丈夫?」
大我も心配そうに聞くと、「あぁ…」
弱々しい声が返ってきた。
チャイムの音がして、ジェシーが立ち上がる。少しして、長身の男性を連れて戻ってきた。
「ウィリアムっていうの。前はロサンゼルスで、今は東京で外科医やってる」
と紹介すると、「こっち。来て」
彼を寝室に案内した。
状態を説明すると、うなずいた彼はタオルをそっと取る。「Oh…」
優しく樹に声を掛けながら、処置をしていった。
「治りそう…ですか?」
不安げな北斗の声。
「臓器はやられていません。少しかすっただけでしょう」
ほっとため息を漏らす。
「でも油断はいけません。安静にしていてください」
ウィリアムが帰ると、やっと肩の力が抜けたように安心した。
「ふう…」
「当分は現場出れないな」
「もし依頼来たらどうする?」
「じゃあ俺行くよ」と手を挙げたのはジェシーだ。
「とりあえず大仕事終えたあとだし、ゆっくりできるといいけどね」
「うん」
「…樹、痛くない?」
ベッドに横たわる樹を見て、慎太郎が声を掛けた。腹部に包帯が巻かれている。
「…ああ」
もらった鎮痛剤を飲んだおかげか、少し落ち着いた様子だった。それを確認し、毛布を掛けてリビングに戻る。
「なあ、ちょっとガチな話していいか」
その時、聞いたことのないような硬い声で言ったのは、高地だった。
続く