テラーノベル
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ビルダーマンとドゥームブリンガー。
二人と過ごす毎日は、テラモンにとって妙に騒がしく、妙に平和で、そして――思っていた以上に心地よかった。
神として長い孤独を生きてきたテラモンにとって、誰かと笑い合うという感覚は、どこか新鮮だった。
だが。
そんな穏やかな日々の裏側には、決して消えることのない「影」があった。
最高神――Roblox。
この世界そのものを創り出し、すべてのコードと理を統べる絶対的な存在。
世界を書き換えることも、法則を変更することも、神々を生み出すこともできる。
そして何より。
最高神がその気になれば――テラモンという存在そのものを、指先ひとつで消去できる。
「……BAN、か」
夜。
ひとりになったテラモンは、暗い部屋の中でぼんやりと呟いた。
(もし……私が最高神の意にそぐわない存在だと判断されたら?)
(もし、この平和な日常ごと……消されることになったら?)
考えれば考えるほど、胸の奥が重くなっていく。
ビルダーマンと笑う。
ドゥームブリンガーとくだらないことで騒ぐ。
そんな時間が増えれば増えるほど。
「失いたくない」という感情も、同じだけ膨らんでいった。
そして、その感情の裏側には。
神である自分が決して認めたくない、恐怖があった。
死への恐怖。
存在が消えることへの恐怖。
そして。
「私が消えるくらいなら、世界そのものを壊してやる」
そんな傲慢さと、抑圧され続けていた絶対的な悪意。
それらが絡み合い、テラモンの中でひとつの異物へと変わっていった。
「……っ」
ある夜。
テラモンは自室で胸元を押さえた。
「ぐっ……あ……っ!」
ズキンッ!!
胸の奥が焼けるように痛む。
呼吸が乱れる。
黒いローブを握りしめる指先が震えた。
「な……なんだ、これは……」
ローブの裾から。
ドロリ。
黒い何かが流れ出した。
それはただの闇ではなかった。
漆黒と毒々しい緑。
まるでテラモンの内側から吐き出された、感情そのもののようだった。
それは床へ集まり。
渦を巻き。
やがてひとつの形を作っていく。
「……卵?」
床に転がっていたのは、不吉な紋様が幾重にも刻まれた巨大な卵だった。
テラモンは息を整えながら、その卵を見つめた。
「私の中から……これが?」
答えが返ってくるはずもない。
しかし。
ピシッ。
「……?」
卵の表面に、一本の亀裂が走った。
ピシ……ピシピシ……。
「おいおい……」
そして。
パリンッ!!
殻が弾け飛んだ。
#1x1x1x1
ゆ
457
#見捨てられた
ロボ
176
5,071
#bl注意
ゆ
3,538
その瞬間。
部屋いっぱいに濃緑色の炎が噴き上がった。
黒い煙。
緑のエーテル。
そして――生々しい悪意。
その中心から、何かがゆっくりと姿を現した。
小さい。
だが。
明らかに普通ではない。
頭には緑色のドミノ・クラウン。
その中央には、鮮烈な緑色の「X」。
顔には、凶暴な赤い瞳。
そして身体は――。
毒液を固めたかのような、半透明の鮮やかな緑色。
その内部には真っ黒な肋骨と骨格が透けて見えていた。
黒と緑の炎が全身からゆらゆらと立ち上り、見る者に本能的な恐怖を与える。
テラモンは、思わず息を呑んだ。
「……お前は、一体……」
恐る恐る手を伸ばす。
その瞬間。
バシッ!!
「触るな!!」
手を思い切り弾かれた。
「近寄るんじゃねぇ、このバカテラモン!!」
「……!?」
生まれたばかりとは思えない、鋭い声。
赤い目がテラモンを睨みつける。
「俺は1x1x1x1だ!」
小さな身体を震わせながら、1x1x1x1は叫んだ。
「お前の中に溜まってた、醜い恐怖とか、傲慢さとか、そういうクソみたいな感情から生まれてやったんだよ!」
「…………」
「だから勘違いすんな!」
1x1x1x1はテラモンを指差した。
「俺はお前のことなんか、大っ嫌いだからな!!」
「ほう」
「神のくせに最高神にビビって、人間なんかと仲良くして……反吐が出るぜ!」
そう言い放つと、1x1x1x1はプイッと横を向いた。
「…………」
だが。
小さな肩が、ほんのわずかに震えている。
テラモンはそれを見逃さなかった。
さらに。
チラッ。
赤い目がこちらを見る。
テラモンと目が合う。
「…………」
サッ。
慌てて逸らす。
数秒後。
チラッ。
また見る。
「…………」
「……ふふ」
「何笑ってんだよ!!」
「いや?」
テラモンは口元を緩めた。
(嫌いと言いながら……私の反応ばかり気にしているではないか)
この小さな存在は、自分の中から生まれた悪意。
自分が抱えていた恐怖。
そして、自分が認めたくなかった弱さ。
そのすべてを形にした存在なのだろう。
ならば。
テラモンは静かに立ち上がった。
そして、自分の肩にかかっていた鮮やかな赤いケープを外す。
「おい」
1x1x1x1が振り返る。
「何する気だよ」
テラモンは答えず、そのまま近づいた。
「ちょっ、おい!」
ふわり。
赤いケープが、小さな肩へ掛けられた。
「な……」
1x1x1x1が固まる。
「……骨が丸見えじゃないか」
「は?」
「寒そうだ」
「寒くねぇよ!」
「そうか?」
「そうだよ!!」
「しかし、格好がつかんだろう」
「余計なお世話だ!!」
1x1x1x1は必死にケープを振り払おうとする。
「誰がこんなダサい布切れなんか……!」
だが。
ふと、動きが止まった。
赤いケープから伝わる、わずかな温もり。
そこにはテラモンの神力が微かに残っていた。
黒と緑の炎が、少しだけ穏やかになる。
1x1x1x1は黙った。
そして。
小さな手で。
ギュッ。
ケープの端を握った。
「…………」
「気に入ったか?」
「違う!!」
即答だった。
「捨てるのも勿体ねぇから着てやってるだけだ!!」
「そうか」
「勘違いするなよ!?」
「うんうん」
「俺はお前を絶対許さないからな!!」
「はいはい」
「いつか絶対、お前の喉元を噛み切ってやる!!」
「楽しみにしているよ」
「……むかつく!!」
1x1x1x1は頬を膨らませた。
テラモンがそっと手を伸ばす。
「では、頭でも――」
「気安く触るな!!」
シュッ!
1x1x1x1は素早く後ろへ飛び退いた。
「…………」
しかし。
赤い目は、やっぱりテラモンから離れない。
見てほしい。
自分だけを認めてほしい。
自分を生み出した、この神の視線を。
誰にも渡したくない。
そんな感情が、小さな身体から滲み出ていた。
口から出てくるのは罵声ばかり。
だが。
全身を包む濃緑色の炎は、どこか寂しそうに揺れている。
「……おい、テラモン」
「ん?」
1x1x1x1は赤いケープに顔を半分埋めた。
しばらく黙ったあと。
小さな声で呟く。
「……明日も」
「うん?」
「明日も……ここに居てやるからな」
「…………」
「お前が泣いて頼むなら……一緒にいてやってもいいぞ」
「そうか」
「べ、別に一人でいるのが寂しいわけじゃねぇからな!!」
「分かっているよ」
「……じゃあな!!」
ボッ!!
黒と緑の炎が一気に燃え上がる。
1x1x1x1はそのまま部屋の隅へ駆け込み、影の中へ姿を消した。
最後まで。
赤い目だけは、テラモンを見つめていた。
「…………」
静かになった部屋。
テラモンは胸元に手を当てる。
さっきまで焼けるように痛かった胸の奥が――いつの間にか、すっかり静かになっていた。
「……ふふ」
テラモンは小さく笑った。
自分の恐怖から生まれた、小さな悪意。
自分を嫌いだと言いながら、離れようとしない影。
「……随分と、面倒な子が生まれたものだ」
影の奥から、声が飛んでくる。
「聞こえてんぞ!!」
「おや」
「誰が面倒だ!!」
「はいはい」
「あと、その『はいはい』やめろ!!」
「ふふふ……」
テラモンはまた笑った。
孤独だった部屋に、声がある。
自分を罵る声。
自分を睨む視線。
それなのに、不思議と心は温かかった。
こうして。
混沌の神テラモンのもとに、新たな「家族」が生まれた。
本人は絶対に認めないだろうが。
それは――。
誰よりも寂しがり屋で。
誰よりもテラモンに構ってほしくて。
そして誰よりも素直じゃない。
「ツンデレな影」だった。
「……明日も来るからな」
影の奥から、小さな声が聞こえた。
テラモンは微笑む。
「待っているよ、1x1x1x1」
「……っ!」
影の中で、緑色の炎がほんの少しだけ嬉しそうに揺れた。
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