テラーノベル
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「魔王が死んだ。」国王の声が耳を貫いた。
前代未聞の事件、そうかもしれない。
この世の終わりが来てもありえないと思っていたな、こんなことは。
魔王。…この世の頂点であり、尊敬されるほどの誠実さを持つ彼。
その彼が死んだ。
なるほど、国王陛下が私を呼び出してまで言ったなら、事件解決の命令だ。
胸に手を添え、頭を下げる。
「お任せ下さい、我が君。」
♢−魔王城−♢
コツ、コツ、コツ……。
冷たい床を、重厚なブーツが踏みにじる。
王座の横のテーブルには、欠けたティーカップがある。
アップルティーの甘ったるい匂いが鼻腔を突き抜ける。……嫌な匂いだ。好きじゃない。
ティーポットには茶葉が入っている。
緑の葉は色素が抜け、僅かに茶色く染まっている。その中に、一際目立つ葉があった。
紫色。色素は抜けていながらも、その葉はどこか美しい。
「カミカゼさん。魔王様の遺体から毒が検出されました。」
鑑識課から書類を手渡された。
……死因は大量に蓄積された毒らしい。
毒?
……じゃあ、あの茶葉の、一際目立つあの紫の葉は……
葉じゃない。花だ。
「……トリカブトだ」
気づいた時には口走っていた。憶測でしかない。それなのに言った。……現場を惑わせる言葉を探偵が言っていいものではないだろう。
「トリカブト……ですか?…何故?」
それはそうだ。鑑識課が目を細め、疑い深そうに聞いた。
こうなれば仕方がない。違和感がある、たったそれだけだ。緑だらけの茶葉の中に、一際目立つ紫色の花。今のはただの憶測でしかないが、言うしかないだろう。
「ティーポットの茶葉を確認してください。……1枚、また1枚。きっと、混じっている花弁が続々と出てくる。」
あぁ、クソ。ただの憶測だろうが。なんで確実なことのように言い切った?頭が回っていないのか?
冷たい床を駆け回る音が聞こえる。書類が捲られる音、ピンセットの鉄の音。確実に現場が騒然としている。
マジで顔を上げたくない。こんな空気は昔から嫌いだ。私の力を過信しすぎている人間が、嫌で仕方がない。憶測だ、憶測なんだ。一言付け加えておけばよかった。馬鹿め、今更考えても仕方がないだろ。
あー、誰か助けてくれ。もう無理だ、宮殿直属の探偵について早5年、こんなにも嫌な事件は初だ。クソ、逃げたい。この城から飛び出して布団に体を沈めてしまいたい。寝たい。ただただ寝たい。
……この先が思いやられる……。
コメント
1件
「魔王が死んだ。」の第一声から背筋が伸びました。カミカゼさんの、言い切っちゃった後悔とか「寝たい…」って本音が妙にリアルで好きです。アップルティーの甘ったるい匂いと紫のトリカブト、映像が浮かぶようでした。どんな毒が蓄積されたのか、続きがすごく気になります…!
法蓮 創
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