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《リュウトパーティー》
「あれが……魔神城……」
タナトスの群れを迎撃してもらいながら、鬱蒼とした森を抜ける。視界の先に目的地が現れた――が。
想像していた威圧的な要塞ではなく、海辺にぽつんと立つ小さな灯台のような建物だった。
「うんっ、間違いないよっ」
「……拍子抜けだな。もっとこう、城壁とか尖塔とか、物々しいもんかと」
今までの魔王どもは必ずといっていいほど、居城を強化し、罠と防衛魔法で固めていた。
だが、目の前の“魔神城”は、外見上はあまりにも質素で、罠の気配も感じられない。
「でもねっ、あの建物は破壊不可能なんだよっ。どんな魔法も跳ね返すし、物理攻撃でも傷一つ付かないっ」
「……防御特化、か」
なるほど、下手に巨大な城を構えるより、小さく作って入り口を絞った方が防衛は容易だ。
いや――もしかすると、中に入った瞬間、どこかに転送されて詰むパターンかもしれない。
「……」
視線を背後に向ける。
そこではまだ、三人が数を減らさぬタナトスの群れと戦い続けていた。アンナがいるとはいえ、限界突破状態を維持してもう何時間も経っている。
ここまで来て引き返すわけにはいかない。
「一か八か、だな……」
距離が縮まり、魔神城の全貌がはっきりと見えるようになったとき――入口の前に二つの影が立っていた。
「ヒロユキ! ……と、ジュンパクさん?」
魔神城の門前で、こちらをじっと見据えている二人。片方は日本刀を握るヒロユキ、もう片方は白いウサギ耳を揺らすジュンパクだった。
「……行くぞ」
「あぁ!」
短い言葉を交わし、俺たちは足を踏み入れる。
運良く、内部に罠はなかった。代わりに、上階へと続く螺旋階段が柔らかな光を放ち――まるで「上がって来い」と誘っているかのようだ。
扉の外からは、遠くかすかに戦闘音が響く。
アカネ、アンナ、あーたん、ユキ、ジュンパクさん……外でタナトスを相手にしながら、俺たちの帰還を待ってくれている。
限界突破が切れれば待っているのは死。それを分かっていて、なお誰も援護に来ない――だからこそ、俺たちは行くしかない。
ヒロユキが一人で来たのは、ジュンパクも同じ覚悟だからだ。
「急ごう」
「……あぁ」
「うんっ!」
海岸では、魔族相手にホワイト団が奮戦。
外では、タナトス軍団と限界突破状態のみんなが死闘。
そして――六英雄は、アオイさんが一手に抑えている。
敵の総数は不明。持久戦になればなるほど、こちらが不利になるのは明白だ。
やるべきことは一つ――“少しでも早く”魔神を討つ!
螺旋階段を駆け上がり、小さな扉に手をかける。
ギィ……。
扉の向こうには――
「来たか、勇者よ」
黒き玉座に座し、悠然とこちらを見下ろす存在。
「来たぞ……魔神!」
その声が、魔神城の静寂を破った。
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