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炎が爆ぜる瞬間を、彼は見ていた。
崩落寸前の建設現場。
本来なら専門の能力者が出動する案件。
だが、その前に。
ひとりの少女が飛び込んだ。
「……無謀だな」
低く、静かな声。
少女は未熟だった。
動きも荒い。力の制御もできていない。
だが――
地面を走る氷。
爆ぜる炎。
そして、淡い治癒の光。
彼の瞳がわずかに細められる。
「三属性……?」
あり得ない。
この社会で確認されている最高保持数は二つ。
三つなど、記録にない。
しかもあの治癒。
自己修復だけでなく、他者への適用。
それだけでも希少だというのに。
「……ふむ」
だが、彼が注目したのはそこではない。
少女は迷わなかった。
自分が傷つく可能性など、最初から考えていない。
倒れ込む直前まで、笑っていた。
『大丈夫ですか!?』
震えた声で、他人を気遣う。
あの精神構造は――危うい。
「力よりも、心の方が問題だな」
使えば使うほど自分を削る三属性。
それを、躊躇なく使う性格。
いずれ壊れる。
確実に。
だからこそ。
彼は通信端末を取り出した。
「――特例推薦枠を一つ用意しろ」
相手が驚く気配が伝わる。
「対象は、朝比奈陽葵。未登録能力者だ」
短い沈黙。
「……はい、理事長」
通信が切れる。
彼は最後に、担架で運ばれていく少女を見る。
「目を覚ました時、どんな顔をするだろうな」
わずかに口元が上がる。
興味。
期待。
そして、少しだけ。
「……壊れる前に、導いてやろう」