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ruruha
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ふとんがふっとんだ
#恋愛
#ホラー
天音ろっく
227
『これはとても不可解な事件です。』
ホワイトボードに書かれた名前、文字、写真を見て私は大きなため息をこぼしてしまった。
「相澤、ため息をつきたくなる気持ちもわからないでもないけど…」
隣に立っていた青山刑事が苦笑いを浮かべる。
「平良(たいら)警部を最後に奇っ怪な事件はパタリと止まったわけだ」
「はい。その代わり、私たちは平良警部の後始末に追われていたわけですが…」
事件の捜査とマスコミ対応。
寝る間を惜しんで働いても、事件の糸口は未だ掴めずにいた。
「霧島唯(きりしま ゆい)と前田剛徳(まえだ ごうとく)が菊原(きくはら)親子を殺害したのは、ほぼ確定した」
「まさか、前田剛徳の冷凍庫に菊原親子の肉片があるとは……」
「肉片の入ったタッパーには霧島唯の指紋と霧島本人が書いたと見られる文字もあった」
”召し上がれ”という可愛らしい文字とハートマークが描かれていたが、そうやって人の肉を食わせようとした霧島唯はどう考えても異常だ。
「小宮祥太(こみや しょうた)も、小坂さんの証言で中村殺害の容疑が固まりました。でも、こちらは…中村のしたことを思うと…」
私が言葉に詰まると、青山刑事も「そうだな」と短く返すだけに留めてくれた。
中村は同級生を三人手にかけている。
もちろん、人を殺めることは重罪だ。
だが、その動機が過剰防衛だったのか、明確な殺意を持っての犯行なのかは容疑者である小宮が死んでしまった以上伺い知ることはもうできない。
「大西茂(おおにし しげる)の方が大変だな。まだ、身元がわかってない遺体があるんだろ?」
「はい」
かなりの人数の身元は特定できた。
遺骨を親御さんに返すこともできた。
だが、まだ身元が明らかになっていない遺骨はある。
いったい、どれだけの人間を、あの大西茂という化け物は殺したというのだろうか。
彼は曰く付きの家には誰も寄り付かないと高をくくって、好き放題やっていたのだ。
申し訳ないと思うのは、あのニュースを見て過去のトラウマが蘇ってしまった子がいるということだ。
大西茂に拐われた子供たちから”目の前で人が殺された”という証言を聞いて、我々警察官は言葉を失った。
「でもさ、俺が思うに…」
青山刑事はホワイトボードを見つめたまま呟く。
「犯人は最低でも二人はいると思うんだよ」
「複数犯、ということですか?でも、どうしてそう思うんです?」
「霧島唯と平良警部の遺体は山の中腹にあった。どちらもおそらく行きは車に同乗していたはずだ。でも、殺したあと徒歩で帰るだろうか。二人とも右手を殺害現場で切られている、返り血は相当の量になるはずだ。そして何より、そんな時間に一人で歩いていれば警察が職務質問するはずだろ?」
「そうですね」
「だから、迎えが来ていた。あの場で着替えて車に乗ってしまえば車内に血痕はつきにくいし、車なら妙なところに停まっていない限り職質はされにくい」
青山刑事の推理はもっともだと思った。
「そして、何より気になるのが大西茂が無抵抗で殺されたということだ」
大西の死因は、正面から腹部を”複数回”刺されたことによる失血死だった。
確かに、元警察官の大西があっさりやられてしまうのも、抵抗しなかったのも不自然だ。
「大西茂は、一人でやっていなかったかもしれないな」
「協力者がいて、その人物に殺された。またその人物こそがこの一連の事件の真犯人ってことですか?」
「推測の域を出ないけどな。人の手を切り落とすって言うのは簡単だが、実際はそんな楽なもんじゃない。小宮祥太をバラバラにするのだってそうだ。ある程度の経験があったからこそ、できたんだろう。それに…」
そこで青山刑事は一旦言葉を切ってから、小さく息を吸う。
「自分に服従していた人間が歯向かうなんて思っていなければ、無抵抗で刺された理由にもなる」
「そう、ですね……」
「弱みを握った誰かを巻き込んだのか、同じ性癖を持った誰かが協力者になったのか…」
青山刑事の言葉を聞いて、私は再びホワイトボードを見つめる。
「そうだとしても、犯人の動機がわかりません。とくに、なんの罪も犯していない佐々木志保さんの殺害動機が不明です」
被害者の中で唯一、後ろ暗い話の無い人物が佐々木志保さんだった。
なぜ彼女が、犯罪者たちに紛れて殺害されなければならなかったのか。SNSでもいろいろな憶測が飛び交っている。
「これはとても不可解な事件です」
私が言うと青山刑事は大きく頷いてみせた。
「おそらく、今はまだオレたちは事件の表層、うわべしか見ていない。この裏や深層にたどり着ければ、事件は解決するんだろうな…」
「その糸口があればいいのですが…」
「あるだろ」
「え、あるんですか?」
私が驚いて青山刑事を見ると、彼もこちらを振り返った。
「同じ性癖を持った者ならスマホかパソコンの中にやり取りが残っているだろうし、弱みを握って誰かを巻き込んだのなら、攫ってトラウマを与えた子供の可能性だってある」
「子供に遺体の処理を頼んでいたというんですか?」
私が嫌悪感を露わにして言うと、青山刑事は鼻で笑う。
「子供の前で人を殺す人間の思考がまともだと思っているのか?こっちの常識なんか通用しないんだよ」
「い、いえ……でも、子供の腕力では人をバラバラにするのは難しいかと……」
「確かになぁ…」
そう言って青山刑事は、視線を宙に彷徨わせる。
「…大西茂が警察官をクビになった理由。子供に猥褻行為をしようとした男に暴行を加え、瀕死にした事件だが、あれから十年かそこいら経っているはずだな。その子が成人になっていれば共犯者になり得る」
「被害者が…加害者にってことですか?」
そんな恐ろしいことがあっていいのか。
だが、青山刑事が先ほど言った通りまともじゃない人間の思考回路は理解できるわけがないんだ。
「その可能性があるかもしれない、って話だ。何の糸口も無いし、そっから手をつけてもいいんじゃないのか?」
「そうですね。至急、調べてみます」
私が踵を返し、駆け出すその背中に青山刑事はポツリと呟く。「闇が深いな…」と。
コメント
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めっちゃエモかった…!🥺✨ ホワイトボードの捜査会議だけでここまで引き込まれるのすごくない?「犯人は最低でも二人いる」って青山刑事の推理、鳥肌立ったよ…特に大西茂が無抵抗だった理由、弱み握られてた説と子供時代の被害者が共犯になってる可能性、めっちゃゾクゾクする展開すぎる😭💕 佐々木志保さんだけ動機不明なのが不気味で仕方ない…続きが気になりすぎるよ〜!!