🩺医療編:碧診区の記録
碧族――その命は、碧素と呼ばれる力によって巡り、寿命は《ライフカード》に管理される。
フラクタルによって都市を創り、戦い、支え合う彼らにも、**“不調”**がある。
記憶の欠落、碧素の偏り、他者との共鳴による自我の揺れ……。
それらに向き合うのが、隠れ里の一角にある《碧診区(へきしんく)》――。
ここでは、“杭の記憶”と“料理の力”をも用いた、碧族特有の医療が行われている。
診療に当たるのは、フラクタル医師《フラクト・ドクター(通称:フラドク)》たち。
碧素心理を読み取るカウンセラーや、共鳴を測定する技師、そして看護に特化した《メディすずか》も彼らを支える。
ある者は暴走した杭に怯え、
ある者は自らの記憶が消えていく恐怖に抗い、
またある者は、残された時間をどう使うかを問う――。
そして、そんな“命の揺れ”に寄り添うもう一つの力がある。
それは、料理と記憶をつなぐフラクタル食堂の処方料理。
タエコの旧友が営む“医療フラクタル食室”では、
心をほぐす一皿が、碧族の明日を照らす光になる。
これは、命を「削る」ことに意味を問う物語ではない。
これは、命を「重ねる」ことに意味を見出す物語だ。