「なあなあ、阿部ちゃんのさ、本気で『分かんない…』って悔しがってるとこ、見てみたくない?」
雑誌撮影の合間、佐久間が床に寝転がりながら、いたずらっぽく言った。その一言に、周りにいたメンバーがピクンと反応する。
「うわ…それ面白そう。あの知的キャラを崩壊させたい。」
渡辺が、ニヤリと口角を上げる。
「クイズでミスりまくらせる…とかできるかな。」
岩本がボソッと言うと、全員の目が輝いた。
「例えば例えば!俺らは『日本の首都は?』みたいな超簡単な問題で、阿部ちゃんには俺らが作った、この世に存在しない問題とか出してさ!」
佐久間が身を乗り出して熱弁する。
「え…って言われたら、『まぁまぁ、阿部ちゃんはインテリだから!俺らと同じ土俵じゃダメじゃん?やっぱ、ハンデは必要じゃん?』みたいな?!」
向井が完璧な追い討ちフレーズを思いつく。
「「「それだぁ!!」」」
Snow Manの頭脳に仕掛ける、壮大なドッキリ計画が、こうして静かに幕を開けた。
***
「はいどうもー!Snow Manでーす!今日は抜き打ち!インテリ力チェックをしまーす!」
ニセのYouTube企画がスタート。司会はもちろん深澤だ。
ターゲットの阿部は、クイズ企画と聞いてやる気満々。腕まくりまでして、自信に満ちた笑顔を見せている。
「じゃあまずは…しょっぴーから!」
「え、俺ぇ?まあ、いいけど。」
深澤が出した問題は、「犬も歩けば?」という、あまりにも簡単なことわざの穴埋め問題。
「…棒に当たる?」
自信なさげに答える渡辺に、全員から「正解ー!」と拍手が送られる。
その後も、「アメリカの首都は?」(目黒)、「パンはパンでも食べられないパンは?」(ラウール)といった、超サービス問題が続く。全員が楽々と正解し、スタジオは和やかな雰囲気に包まれている。
そして、ついにその時が来た。
「さあ、お待たせしました!我らが阿部ちゃん!」
深澤が、ニヤリと笑って問題パネルを掲げる。
**【問題】17世紀ネーデルラントで活躍した画家、ヨハネス・フェルメールの幻の作品とも言われる『窓辺で手紙を読む老婆』。この絵に描かれている老婆が読んでいる手紙の内容は何でしょう?**
「…え?」
阿部の、自信に満ちていた顔が、ピシリと固まった。
(…『窓辺で手紙を読む老婆』…?そんな作品、あったか…?いや、俺が知らないだけ…?手紙の内容…?)
頭の中の膨大な知識データベースを、猛スピードで検索する阿部。しかし、該当する情報は一切ヒットしない。
「…すみません、分かりません…。降参です…。」
絞り出すような声でそう言うと、メンバーから「えー!」「阿部ちゃんが!?」と驚きの声が上がる。
「阿部ちゃん、ドンマイ!じゃあ次!」
向井が、わざとらしく場を盛り上げる。
**【問題】古代エジプトのファラオ、ツタンカーメンが愛用していたとされるサンダルの、正確なサイズ(センチメートル)を答えよ。**
「いや、分かるわけないだろ!」
思わずツッコミを入れる阿部。しかし、周りのメンバーは「え、これ分かんないの?」「意外と簡単じゃん?」と、さも知っていて当然、という顔をしている。
「え、みんな知ってんの!?」
「まあまあ、阿部ちゃんはインテリだから!俺らと同じ問題じゃ、ハンデがないとダメじゃん?」
向井が、打ち合わせ通りのセリフで追い討ちをかける。
「そうだよ!阿部くんは僕らのラスボスだから、これくらいじゃないと!」
ラウールもキラキラした目で続く。
その後も、「存在しない国の首都」や「架空の数学者が提唱した定理」など、悪魔のような問題が出題され続ける。
いつもなら輝くはずの「正解!」の音が、今日に限っては一度も鳴らない。
ついに、阿部は悔しさと自分の不甲斐なさに、ぐっと唇を噛みしめ、俯いてしまった。
その、誰も見たことのない姿に、メンバーたちは(やべ、やりすぎた…?)と内心焦り始める。
その瞬間だった。
「…っていう、ドッキリ大成功〜!!!!」
深澤の叫び声と共に、スタジオのモニターに【※全てスタッフが考えた架空の問題です】というテロップが大きく映し出された。
「…は?」
顔を上げた阿部は、しばらく呆然としていたが、やがて全てを理解すると、その場にへなへなと崩れ落ちた。
「うわーーーー!やられたーーーっ!!」
顔を真っ赤にして叫ぶ阿部に、メンバーがワラワラと駆け寄る。
「ごめん阿部ちゃん!マジで自分の知識不足を疑ってたでしょ!」
「あの悔しそうな顔、最高だった!」
「当たり前だろ!俺、この収録終わったら、図書館に籠ろうかと思ってたんだぞ!」
みんなにワシャワシャと頭を撫で回され、最初は本気で悔しがっていた阿部も、最後にはつられて笑ってしまった。
「でも、あの架空の問題に、本気で立ち向かおうとしてた阿部ちゃん、マジでカッコよかったよ。」
岩本がそっとフォローすると、阿部は照れくさそうに「…うるさ…」と笑うのだった。
Snow Manの頭脳は、今日もメンバーからの愛のあるイタズラによって、その輝きを増していくのでした。
コメント
1件

ドッキリじゃなかったらマジで図書館こもって調べてそうw めちゃめちゃあべちゃんらしい作品だった! 続き楽しみにしてます