前回のドッキリから数日後。楽屋の空気が、妙に張り詰めていた。
その中心にいるのは、Snow Manの頭脳・阿部亮平。彼は、いつも穏やかな笑顔を完全に封印し、真顔で腕を組んでいた。
「…で?あのくだらないドッキリ、どうせ思いついたのも佐久間でしょ。」
地を這うような低い声で尋ねられたメンバーたちは、ビクッと肩を揺らし、視線を泳がせる。
「…な、なんでわかんの…?」
図星だった。その瞬間、阿部はスッと立ち上がった。
「…絶対仕返しする。命賭けてもやる。みんな、手伝って。異論は受け付けない。」
それは、いつもの優しい阿部ちゃんからは想像もつかない、絶対王者のような宣言だった。メンバーは、その静かな怒りに満ちたオーラに気圧され、誰一人逆らうことなく、コクコクと頷くことしかできなかった。
***
ターゲットは、もちろん佐久間大介。
ドッキリの内容は、「佐久間の愛するアニメの世界を、メンバー総出で全力で否定する」という、彼の心を最もえぐるであろう、悪魔の計画だ。
舞台は、ニセの雑誌取材。「Snow Manのプライベートな趣味に迫る!」というテーマで、佐久間には「アニメ愛」について存分に語ってもらう、という企画だ。
「よっしゃー!任せて!俺の嫁たちの魅力を、余すことなく伝えちゃうぜ!」
何も知らない佐久間は、大量の私物(フィギュアやDVD)まで持ち込み、テンションMAXで取材に臨む。
インタビューが始まり、佐久間は水を得た魚のように、大好きな作品について熱く語り始めた。
「…で!このシーンの〇〇ちゃんがマジで神なんですよ!この作画と、声優さんの演技が相まって…!」
熱弁する佐久間。しかし、インタビュアー(もちろん仕掛け人)も、周りのメンバーも、なぜか反応が薄い。
「へえ…。」
「あ、そうなんだ。」
渡辺が、興味なさそうにスマホをいじり、ラウールはあからさまにアクビをしている。
「…え?みんな、聞いてる?」
さすがに不安になる佐久間。
そこで、阿部が静かに口を開いた。
「佐久間、ごめん。俺、正直アニメの良さって、あんまり理解できなくて…。だって、絵じゃん?」
その、あまりにも純粋で、残酷な一言。
佐久間の顔から、サッと笑顔が消えた。
「え…あ、阿部ちゃん…?」
「俺もっすね。時間があったら、筋トレした方が有意義かなって。」
岩本が、筋肉を見せつけながら言う。
「僕も、どちらかと言えば舞台鑑賞の方が…。」
宮舘が優雅に紅茶(のフリをした麦茶)をすする。
次々と繰り出される、仲間からの「アニメ否定」発言。
いつもなら「まあ、人それぞれだからな!」と笑ってくれるはずのメンバーが、今日に限っては、全員が同じ意見だった。
「え、嘘だろ…?こーじは!?こーじは分かってくれるよな!?」
最後の望みをかけて向井に助けを求めるが、向井は困ったように眉を下げた。
「ごめんな、さっくん…。俺も最近、カメラの方が楽しくて…。」
絶望。
自分の「大好き」が、一番の仲間たちに、誰一人として理解されない。
持ち込んだフィギュアたちが、なんだかとても寂しそうに見えた。
「…そっか…。ごめん、なんか、俺だけ浮かれてたみたいだね…。」
ついに佐久間の瞳が、みるみる潤んでいく。いつも元気な笑顔は完全に消え、本気で傷ついた顔で俯いてしまった。
その、あまりにも悲痛な表情を見て、首謀者の阿部が、スッとスケッチブックを掲げた。
『ドッキリ大成功!僕の気持ち、わかった?by阿部亮平』
「…へ?」
顔を上げた佐久間は、しばらく状況が飲み込めなかったが、やがてニヤニヤと笑うメンバーたちの顔を見て、全てを察した。
「うわああああん!お前らのバカーっ!!」
その場に崩れ落ち、子どものように泣きじゃくる佐久間。
「ごめんごめん!阿部ちゃんを怒らせた罰だ!」
「俺らずっと笑うのこらえるの大変だったんだからな!」
メンバーたちが、わらわらと泣き虫な特攻隊長に駆け寄り、頭をワシャワシャと撫でる。
「俺のアニメ愛は!世界を救うんだぞ!」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら叫ぶ佐久間に、阿部は、いつもの優しい笑顔でそっとハンカチを差し出した。
「ふふっ、知ってるよ。…ごめんね、佐久間。でも、これで貸し借りなしだから。」
その言葉に、佐久間は「阿部ちゃんのバカぁ!」と言いながらも、そのハンカチをしっかりと受け取るのだった。
結局、どんなドッキリを仕掛けたって、お互いの「大好き」を本当は誰よりも尊重している。
それが、Snow Manという最高の仲間たちなのである。
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ブラックあべべやばいw 絶対怒らせんとこ 佐久間、どんまい! やったことは帰ってくるってことやな 続き楽しみにしてます!