コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
あの日を境に、
僕たちはより仲良くなった気がする。
もちろん気まずさも増えたが。
「古佐くんってお花見と “ 緑見 ” どっち好き?」
またもや僕の顔をじっと見つめながら聞いてくる。
初めて喋ったあの日のように。
「緑見って何?」
聞きなれない言葉が出てきた。
お花見は分かるが、緑見ってなんだろう。
「分からないけどお花見の反対」
「若葉とか青葉を見て食事したり会話したりってこと」
なんだそれ。
と思いつつも
「ふーん…」
と返事する。
楽しいのかな…それ。
てかただのピクニックじゃん。
「で、どっち好き?」
どっちって言われてもなぁ…
「私は緑見!」
「なんで?」
反射的にそう問いてしまった。
「だって桜って儚いじゃん」
「儚い?」
「うん、儚い」
寂しげな目をしながらそんなことを呟く。
何だか人生何周もしてきたかのようで少し不気味で不思議に感じる。
「そうだ!!一緒にお花見しよ?」
ふとそんな提案をしてくるが、
あいにく桜はまだ満開では無い。
所々に青々とした葉が見えているほど。
「まだお花見シーズンじゃないよ?」
そんな僕の問いも無視して
「早く行こ!!あ、でも先にコンビニ寄ろうね」
と言いながら帰る準備をしていた。
相変わらずマイペースすぎる。
コンビニに着いて何を買うのかと思い、
畑葉さんのカゴを覗き込む。
と、そこにあったのは沢山の桜餅。
「え、」
思わず声を漏らすと
「何?」
と言われる。
「それ全部食べるの?」
「そうだよ?」
「それより古佐くんは何か買わなくていいの?」
確かに。
お花見に行くんだったら何か食べ物とか買った方がいいかもしれないな。
そう思い、僕は3種類の団子が入っているのとリンゴの缶ジュースを買った。
「あ!!私も缶ジュースにしよ〜っと!」
そんな僕を見て畑葉さんは僕の真似をするように缶ジュースを自身のカゴに入れた。
「結局、桜餅何個買ったの?」
「ん?20個!」
えげつない量をさも当たり前かのように話しながら桜餅を自身の口に突っ込む畑葉さん。
ほぼ一口で食べるから喉に詰まりそうで目が離せない。
「あのさ…」
「あんまり見ないでくれない?」
「恥ずかしいじゃん…」
俯きながら頬を薄桃色に染めるも、
桜餅を食べる手は止まらない。
それがなんだかおかしくて
「せめて手は止めようよ」
と呟き、笑う。
「団子好きなの?」
ふとそんなことを聞かれ
「花より団子って言うじゃん?」
と言いながら畑葉さんの方を見ると、
20個の桜餅はゴミへと姿を変えていた。
よほど桜餅が好きなのだろう。
「なんでそんな引いた目してるわけ?」
「20個なんて少ない方じゃん…!!」
少ない方?
何を言ってるんだか…
「全然多いけど…」
呆れ気味にそんなことを言うと
「え?!うっそだー!!」
「いつもなら30はいけるもん…」
「今はダイエットっていうか…」
「高校生って太りやすいって言うじゃん?!」
ペラペラと話していく姿が少し面白くて
「どっちにしろ同じでしょ」
と笑みを含めた声を零す。
「なっ、馬鹿にしてるでしょ!!」
そう言いながら畑葉さんはポカポカと叩いてくる。
が、全く痛くない。
それどころか子供みたいだ。
気づいたら日は傾いていた。
「もう帰らなくちゃだよ」
僕がそう言うと
「もう帰らなくちゃだね」
とオウム返しのように同じ言葉を返す。
なんの意味があるのだろうか。
「古佐くんってさ、『生まれ変わり』って信じる?」
またもや不思議な質問をしてくる。
帰るよって言ってるのに…
「んー…まぁ、少し」
そんなあやふやな返事を返すと
「じゃあ私、死んだら絶対生まれ変わるから!!」
と変なことを言う。
まだこんな歳なのにもう死ぬことを考えているのだろうか。
「でも生まれ変わるのって選べないんじゃないの?」
「人間になるか、もしくは動物になるか。そもそも生まれ変われないか」
「とか、選べないんじゃなかったっけ?」
そう呟くように言うと
「ううん、なれるよ!絶対!!」
と誇らしげに言う。
どこからそんな自信が湧いてくるのだろうか。
「もし、生まれ変われるなら古佐くんは何になりたい?」
急にそんなことを言われても、
考えたこと無いからなぁ。
うーんと唸っていると
「私は妖精がいいな〜」
「春が好きだから春の妖精とか!」
人間になりたいって言うのかと思いきや、
まさかの妖精。
「人間じゃなくて?」
「うん、妖精!」
何かの間違いじゃないかと思い、
再度聞いてみるも答えは同じく『妖精』だった。
「で、古佐くんは何になりたいの?」
顔を近づけながら聞いてくる。
そんなに知りたいことなのかなぁ。
というか近い。
そう思い、少し離れながら
「僕は人間がいいかなぁ」
と答える。
「え〜!!つまんな〜い!!」
「もっとロマン溢れる回答が欲しかったなぁ…」
勝手に聞いといて勝手に落ち込まないで欲しい。
そう思いながらも
「今はそう思ってるだけだから」
「後々、変わるかもしんないし」
と付け加えると
「じゃあまた聞くから、その時には変わっててよね!」
と謎の宣戦布告のようなことを言われる。
なんだか更に面倒くさくなった気がする…
「じゃあ、帰ろっか!」
急に立ち上がり、僕の腕を引く。