テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
数日後。
怪異探求倶楽部の部室には、朝の柔らかな日差しが差し込んでいた。
テーブルを囲む部員たちは、今朝配達されたばかりの朝刊を広げ、笑い声を響かせている。
「いやぁ、まさかこんな事になるなんてね」
新聞を見つめながら、感慨深そうに呟くさくらの表情には、満足感に満ち溢れている。
焔垂も大きく頷き、興奮気味に声を上げる。
「そう♬そう♬」
信愛は新聞を胸の前まで持ち上げ、嬉しそうに笑った。
「まさか私達の事が新聞に載るなんてね♬」
一同が協力して暴いた霊貴冥孤による、霊感商法詐欺事件は、地域社会への貢献として地元新聞である『古海新聞社』によって、大きく取り上げられていた。
◇ ◇ ◇
2025年──令和7年──6月25日──水曜日。
古海新聞。
狗頸学園高校の生徒が詐欺師の悪事を見事暴く。
霊感商法詐欺師霊貴冥孤逮捕。
私立狗頸学園高校の『怪異探求倶楽部』に所属する生徒5名が
ハデスの代弁者を語り、霊感商法詐欺を行っていた霊貴冥孤(本名:汀ひなた38歳)の
悪事を見事に暴き、警察に身柄を引き渡す功績を挙げた。
生徒たちは霊貴が興信所の人間と結託し事前に収集した個人情報を使った
「ホットリーディング」で信者を騙して、金銭を騙し取っていた事実を突き止めた。
後の警察による捜査の結果、霊貴による詐欺の被害総額は、約1億円以上にものぼっていた事が明らかとなっており
警察から生徒たちに感謝状が送られた。
生徒たちはこの快挙に対し
「私たちの行動が人助けに繋がった事を誇りに思う」
とコメントしており
学校側も「彼らの勇気ある行動を称賛する」
とコメントしている。
◇ ◇ ◇
新聞記事はこう締め括られており、新聞の隅には、教室の黒板の前で警察から受け取った感謝状を手にして、誇らしげに笑みを浮かべる5名の写真が貼られていた。
茜は新聞をひらひらと振りながら笑う。
「まあ、詐欺師の悪事を暴いたんだから当然っしょ♬」
さくらも嬉しそうに身を乗り出した。
「今日歩いてたら何人もの人から声かけられてさぁ♬」
焔垂は記事を指差しながら苦笑する。
「まあ、興信所の人間と結託してたってのは
後から警察から聞いて知った情報なんだけどな」
信愛は肩をすくめる。
「まあ、いいじゃん」
少し照れたように笑いながら続けた。
「ホットリーディングは実際に暴いてたわけだし
それに私たちのおかげで霊貴冥孤が
逮捕された事には変わらないんだからさ」
茜は何度も頷き、満面の笑みを浮かべる。
「そうそう♬結果オーライだよ♬」
さくらも楽しそうに笑った。
「そ〜ゆ〜事♬」
すると朝陽が新聞を閉じ、少し真面目な口調になる。
「でも、警察の人から聞きましたけど
この霊貴って人、高校卒業した後すぐに
精神分析を勉強する為にアメリカまで行って
博士号を取得してた人らしいですよ」
信愛は目を丸くした。
「博士号?」
茜は首を傾げる。
「凄そうな響きだけど、それってどのくらい凄いの?」
朝陽は少し考えてから答える。
「別で例えるなら、三つ星レストランの
料理長レベルって感じみたいですね」
「うっそ!?あの人
そんなにすごい人だったの?」
信愛は思わず声を上げた。
「らしいですよ」
朝陽が静かに頷くと、茜はため息交じりに笑った。
「バカだよねぇ~その能力を別の事に
生かせてたらこんな事にならなかったのにさ」
信愛も小さく頷き、しみじみと呟く。
「確かにね」
コメント
1件
寺島あおいです🤍 第140話、読ませていただきました。 新聞記事で称えられる部員たちの姿に、なんだかこっちまで誇らしい気持ちになりました。霊貴冥孤が実は博士号を持つほどの人物だったという真相、「その能力を別のことに生かせてたら」という茜さんの言葉がずしりと響きますね。悪用する才能の哀しさを感じさせる、締めくくりとしてとても味わい深いエピソードでした。5人の写真が載った新聞、想像するだけで胸が熱くなります。