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因縁の相手
灰色の空が広がる摩訶不思京の街並み。21世紀のような建物に、どこか不穏な影が差している。ここは呪術と都市伝説が支配する街。俺はロシア、今日も任務でこの街に足を踏み入れた。
――よりによって相棒はアメリカだ。胸の奥が冷たく重くなる。
「よぉ、ロシア! 今日も寒そうだな!」
うるさい。なんでこいつはこんなに声がでかいんだ。俺の心臓が跳ねるのは、驚きじゃなくて苛立ちだ。俺は深く息を吐く。白い吐息が夜気に溶ける。
「……静かにしろ。ここは魔訶不思京だ。何が出るか分からない」
「へぇ? お化けでも出るのか?」
心の中で舌打ちする。お前が一番のお化けだ、アメリカ。陽気で豪快で、俺の神経を逆撫でする。二十年前、あの地獄に陥った時、間接的にこいつの影もあった。振り返るな、過去に囚われるな――そう思っても、心の氷は軋む。
裏路地に足を踏み入れると、急に静かになった。風の音すら消える。ビルの影が歪み、視界にちらつく。
――来る。ここはそういう街だ。
「おいロシア、なんかやべぇ雰囲気だな」
「黙れ」
心の中で冷たく吐き捨てる。息を潜め、氷のように神経を尖らせる。魔訶不思京は、感情の隙を食う。俺の心が揺れれば、敵に飲まれる。そんな街だ。
アメリカが先に歩く。背中が妙に頼もしいのが、また癪に障る。俺は氷の結晶を掌に宿す。何か出たら、凍らせる。心臓の音がうるさい。……最近、中国に会っていない。あいつの声も視線も、今は届かない。代わりに隣にいるのがこいつだなんて、最悪だ。
「……あれ、見ろ」
アメリカが指差す先、ビルの壁に人影が貼り付いていた。血のような赤い瞳が、暗闇で光る。心臓が冷たく跳ねた。
「お化け……じゃねぇな。敵だ」
氷が広がる。空気が白く凍る。アメリカは銃を構え、俺は氷刃を手にする。背中合わせになる瞬間、胸の奥がざらりとした。
――嫌いだ。けど、この瞬間だけは、こいつと戦うしかない。
魔訶不思京の闇が、俺たちを試すように蠢いていた。
しなもん ここあ たん .ᐟ
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コメント
1件
第4話、読ませていただきました! ロシアの胸の内にある過去の傷と、アメリカへの複雑な感情がひしひしと伝わってきました。「心の氷が軋む」という表現、すごく好きです。嫌いだけど背中を預けるしかない、その距離感が絶妙で…。魔訶不思京の不気味な空気感もたまらなくて、次の展開が気になります!