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「リョウコ」
電話が入った俺は会場の外に出て話をしてから再び会場へ戻ろうとして、廊下で佇むリョウコを見つけた。
名前を呼んでもここからは聞こえなかったか。
「リョウコ」
もう一度呼びながら彼女の方へ向かおうとした時、リョウコはくるっと踵を返してしまう。
颯佑は?先に出た?
リョウコのいた出入口から中を覗こうかと思った時
「はっきり物言えよっ…クッソッ……」
「大きな声出さないでよ~颯佑く~ん。ヨシコつまんないんだもん。なのに颯佑くんも佳佑くんも小さい時からヨシコをずっと構っちゃって~私も同じ幼なじみなのに、なんだかヨシコの方を大切にしてるのが許せないっていう感じ?あははっ…だから他の子はヨシコと距離ができるように命名しちゃったら大成功っ。1年生で思いつくって私天才?あははっ。颯佑くんたちもノリでヨシコって呼ぶかと思ったけどそこはしっぱ~い」
颯佑の声に負けない恵麻の大きな声が聞こえる。
リョウコが聞いていたか?
「颯佑っ!」
「あ~佳佑くんいらっしゃ~い」
恵麻を無視して颯佑に言う。
「帰るぞ。急いで帰る」
颯佑はそこでリョウコがいないことに気づいたのか、顔色を変えた。
「白川さん」
「あははっ、佳佑くん‘白川さん’だってあははっ…」
「俺たちあんたと縁切るから。今から幼なじみでも何でもない」
「二度と話掛けるな。店にも出禁。来たら頭から塩と水を浴びると覚悟しておけ」
「脅しじゃない。本当にやるから」
そう言い残し、俺たちは走りながらスマホを手に会場を出る。
「俺電話、颯佑メッセージ送れ」
タクシーに乗り込み、とりあえず自宅へ向かう。
「出ないな…」
「既読もつかない」
「とにかく家に戻っていたらいいんだが…」
電話とメッセージを繰り返しながら到着したリョウコの家には、灯りひとつ灯っていない。
「今から戻って来るかもしれないからここは離れられないな」
「ああ。リョウコがどこから聞いていたかわからないが何があった?」
俺は自分が聞く前の話を颯佑から聞いた。
「マジか…恵麻のそんなの……全く気づかなかった」
「俺も…あの誕生日の話はよく覚えてるんだ…リョウを真ん中に俺と恵麻が並んで手繋いで帰った日…あれを仕掛けたのが恵麻……」
「もう名前を聞くのも蕁麻疹が出そうだ」
「怖すぎるだろ」
「女って信じられないな」
「「リョウ(コ)以外は」」
「佳佑ここにいて。俺ちょっと駅方面を探してくる」
颯佑がリョウコの家の前から駅に向かい歩き始めたと思ったら、急に走り出す。
「リョウッ!」
その声に俺もすぐに颯佑を追った。