テラーノベル
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「ありがとうございます!!」キミはやけに嬉しそうに僕の声が入った瓶を抱きしめるように持ってて。
「僕、時雨さんが僕の名前呼ぶ声大好きなんです」
「落ち着くっていうか…甘くて優しい声で」
「僕が求めてたような」
「あ、早く瓶閉めなきゃ!」
キミはガチャガチャと慌てて瓶のフタを閉めて。
それから僕の方をへへんと自慢げに見てきて。
それが僕は酷く嫌で。
つい、目を逸らした。
キミにバレてないといいな。
いちばんのお目当ての棒付き花火飴が売ってる屋台に向かう。
けれどここらから急に人が増えてきて。
「ね、キミ。はぐれると危ないから」
そう言って前を向いたままだが後ろに手を差し出す。
が、どれだけ待っても温もりが来なくて。
振り返った。
ら、キミの姿がどこにもなくて。
一気に肝が冷えた。
慌てて名前を呼ぼうとする口を噤む。
「…ぁー…さいあく」
そんな声を漏らしながら足を返す。
が、すぐ止まる。
買ってから行った方が。
先に買った方が。
2つ買ってから探しに行けば。
だいぶ会場から離れたところでキミを見つけた。
木々が少しばかり開けた場所にキミが。
キミに群がるようにしてあのキンモクセイに似た蝶の大群がキミを囲うようにして飛んでいて。
見つけた。やっと。キミを。
安心したからだろうか。
急に目の前に天気雨が。
いや天気雨じゃない。
涙だった。
無意識に僕は探しながら大粒を瞼の相棒にしていて。
「キミ、こんなとこで何してるの」
涙声鼻声を殺すように普通のハリボテをキミに見せながら声をかける。
と、キミは振り返って僕と目が合って。
「あ!時雨さんごめんなさい!!」
「…蝶々追ってたら迷子になっちゃって」
キミの周りを飛ぶ蝶たちは僕の前をヒラヒラと飛んで。
涙に反射して蝶たちは虹色に輝いて存在しない生物と同じように見えて。
「あれ?キミ、お面は?」
「…お面?狐面ですか?」
「うん、そう」
キミは不思議げに首を傾げて自分の頭をぺたぺたと触って。
「……失くしちゃったみたいです」
「…すいません……」
失くした?
しかも迷子で?
「大丈夫だよ、きっと迷った時に木の枝とかに引っ掛けちゃったんでしょ?」
できる限り優しい声を出しながらキミの頭を撫でて。
もし僕が見つけれてなかったら。
もし蝶たちが周りにいなかったら。
そう考えると嫌な想像ばかりしてしまって。
「あ、そうだ僕これ買ってきたんだよ!!」
話を逸らすようにして棒付き花火飴をキミに渡しながら会場の方に戻る。
早く帰らないと。
早く戻らないと。
花火が始まっちゃうから。
「時雨さん!!これ美味しいですよ!」
振り返るように見ればもう既にキミはさっき僕が渡した花火飴を口に。
羽海汐遠
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会場に着けばもう花火は始まってて。
「僕も〜」
そう楽しげに言いながら、少し小高い丘に座って。
飴を口に…
と、思ったが何やら形がキミと違う気が。
「あれ?僕とキミの形違くない?」
もしかして違うやつ買ってきたとか? そう不安に思ってるとキミは
「違います!これ食べると弾けて線香花火みたいになるんです!!」
と自慢げに言ってて。
「そうなんだ?!」
面白い〜、そう言葉残しの声を心の中で呟きながら僕も飴を口に。
途端、口の中で飴はぱちぱちと弾けて。
むしろ痛いくらいで。
そんなことよりも天気雨なのに花火は上がるんだ…
不思議にそう思ってるとキミもそう思ってるのか隣からぶつぶつとモノローグが聞こえた。
が、何を言ってるのかは聞き取れなくて。
けど多分同じことを思ってると僕は思っていて。
花火は一瞬で終わっちゃって。
口のも宙のも。
やけに呆気なく終わった気がして。
心の1番美味しい部分が奪われたような気分で。
最後の大きな大群花火は上がって弾けて天気雨を降らせた。
だからか一瞬空には虹が見えていて。
辺りは気づけば夜になっていて。
社に戻る帰り道、またあの蝶たちが。
キミの周りを飛んでいて。
なんだか懐いてる気もしたが口には出さなかった。
キミは嬉しそうに人差しの指先に蝶を留めて微笑んでて。
それを壊したくは無かったから。
「あ!」
急にキミが大声を上げて宙を指差して。
釣られるように僕も見上げて。
キミの指先の蝶…
いや違う。
ムーンボウだった。
白い虹。
「…あれなんですか?虹?」
「…うん、虹」
「すごい珍しい虹で幸福を呼ぶ虹って言われてるんだよ」
そう言いながらキミの方を向く。
と、
「じゃあ幸福半分こですね!」
「僕と時雨さんと!!」
「そうだね!」
笑顔のキミに返す僕も笑顔で。
伝染するみたいに。
社に着いてキミは持ってる瓶を恋人を見る目で見ながら音を聞いていて。
「そういえばなんでキミは焚き火と風鈴の音入れたの?」
「…焚き火は前に本で落ち着ける音だって読んだので!」
「あと風鈴は時雨さんです!」
「僕?」
前見たキミみたいに僕も小首を傾げる。
「時雨さんの風鈴ピアスです!!」
「僕、時雨さんの隣歩いてる時に聞こえてくる時雨さんの風鈴ピアスの音大好きなんです!!」
声といいピアスといいキミは僕の何もかもを壊してくる。
まるで振り払っても取れない気色の悪い紐のようで。
コメント
3件
ああ、今回の話も良かった…!夏祭りの雰囲気とか、キミが迷子になった時の時雨さんの焦り方がすごくリアルで、一緒に「やばい」ってなったわ。花火飴が口の中で弾ける描写とか、ムーンボウの話も入ってて、詩的な雰囲気が良いよね。でもそれ以上に、時雨さんがキミの声とかピアスの音とか「壊される」って感じてるところが気になる…。あの蝶たちも含めて、何か隠してる感じがする。続きが気になるわ🔥