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「まずい……」
竜巻が自分達の兵を巻き込み、血の砂煙を上げながら接近してくるのを視界の端で捉えつつ、
俺はサラサラの金髪の髪を振り乱し、兵隊達を気絶させていく。
「みんな解ってるの!?あの魔法は君達も巻き込んで__」
「しねええ!」
「この!バカちんがぁ!」
ダメだ!こいつら聞いてない!くそ!
相手も相手で一向に攻撃の手が緩まない。
少しでも気を抜くと俺はあの剣や槍に貫かれて死ぬ!
「くそくそくそ!」
死ぬ! 死んじまう!
雨のように魔法や武器が飛んでくるせいで、通信の暇すらない……つまり、自分でどうにかするしかない!
考えろ、俺……! 考えろ!
襲いかかる敵を気絶させ、糸で拘束しながら竜巻との距離を取ろうとする……が、足はまるで進まない。
後ろから感じるあの風圧、もうすぐ背中に届く――!
「退いて! 邪魔っ!」
竜巻の気配を背に受けながら、体中に冷や汗が噴き出す。
……例えるなら、下校中に催してるのにトイレがどこにも無い、あの絶望感!
――いやいや、そんなこと考えてる暇じゃねぇ!
もう目と鼻の先まで、竜巻が迫ってる!
俺の手持ちの魔皮紙じゃ、アレは止められない!
万事休すか!?
……その時だった。
地面が“コンッ”と音を立てたかと思えば、青く透明な“クリスタル”が次々と隆起し、俺の周囲の兵たちを下から串刺しにしていく!
「な、なんだこ、ぐぎゃっ!」
「がッ」
「に、にげ――」
目の前で兵士たちが一人、また一人と突き上げられ、その血が俺に降りかかる。
それでも俺は、その地獄の光景を直視した。
「た、助かった……けど、グロすぎ……」
一歩間違えれば、串刺しになってたのは俺だった。
でもやっぱり……これはグロい!
なおもクリスタル串刺し刑(勝手に命名)は止まらず、気がつけば一本の道を“掃き清める”ように兵士たちを排除し、ピラミッドまでの直線ルートが出来上がっていた。
「ユキさんかな? それともキールさん……? でも、あそこに入らないと、竜巻にやられる!」
俺はピラミッドに向かって全力で駆け出す。
途中、魔法で妨害しようとした敵兵も、魔法陣を展開した瞬間――地面から貫かれ、動かなくなった。
最後にピラミッドの中へと滑り込み、すぐさま振り返ると――
入り口は、あの青いクリスタルで完全に塞がれていた。
「……って、僕も閉じ込められてない?」
外から兵達が来る心配はなくなった。けど同時に、自分も出られないじゃん!
とはいえ、竜巻からは逃れられたし――ま、まぁ、どのみち今の俺にできることは一つしかない。
「このピラミッドを調べるか……」
本来の目的だってそうだったし。
もし、ここに魔王が居るとしたら――
「全員に通信した後、救援が来るまで時間を稼ぐ……か」
【獣人化】しているおかげで、暗い内部でも視界は良好だ。
敵が居ないとも限らない。慎重に周囲を警戒しながら、俺は奥へと足を踏み入れる。
……にしても、あのクリスタル。
どこかで見たことあるんだよなぁ……うーん、なんだっけなぁ……