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こんにちは! カエデです!
今日はとっても嬉しい日なんです!
略してジョイフル・カエデ!
だって…
「よかったね! 冒険者になれて!
ほーらこれ! お祝いのパンだよ!」
冒険者登録祝いをしてくれたアンナさん! 優しい!
「わぁ! ありがとうございます!」
冒険者になれた報告にパン屋に帰ると、アンナさんが大喜びしてくれました!
「冒険者はいろんな物資を持ち帰ってくるよね!
素材とか薬草とか!
うちのパンにも使えるし、買い取るからねー頼んだよー!
あはは!」
「はい!!」
私はアンナさんに恩返しするんです! ふんす!
「でも、行くならちゃんと無理のないクエストにしなよ! あはは!」
「はい!」
私はアンナさんお手製のパンをもらって、明日に備えて早めに眠りにつきました。
◇◇◇
翌朝。
ギルドに到着すると、受付カウンターに初日とは違う、
メガネをかけた女性が立っていました。
彼女はニコニコとしています。
「あら、新人さん? 何かお探しですか?」
「あの……クエスト……を見に来たんです。私、初めてなので…」
「はいはい! クエストボードはこちらです。お名前は?」
「カエデと言います。よろしくお願いします」
「カエデさんですね。私はシルビアと言います。初めてでしたら、こちらの紙に書かれた【F】ランクのクエストがおすすめですよ」
「なるほど……私のこの胸を見て言ってますね!?」
「……ん?」
シルビアさんは優しく微笑みながら、茶色の紙が貼られた壁を指さしました。
「ありがとうございます! では……ええっと……」
クエストボードをじっくり見ていると、ある依頼が目に留まりました。
【緊急依頼:魔法の森の謎解明】
【内容:最近、魔法の森から奇妙な光が目撃されています。調査をお願いします】
【報酬:50万リフル】
【ランク:D】
「わぁ……光の謎……なんだか素敵なクエストですね!」
「え? カエデさん、それはDランクの……」
「この光の正体を突き止めるのは……
まるでファンタジー映画みたい! 私にぴったり!」
シルビアさんの表情が曇りました。
「カエデさん、すみません。
あなたはまだFランクの冒険者です。
Dランクのクエストは命の危険があります」
「でも……光の謎を解明するなんて、
きっと素敵な冒険になるはず……」
「いいえ、だめです。
まずはこちらの【草原の薬草採取】からスタートしましょう」
【草原の薬草採取】
【内容:町の薬屋さんのための薬草を集めてください】
【報酬:3000リフル】
【ランク:F】
「……薬草採取……!【F】だね」
(そうか。さっきのはDカップじゃないと受けれないのか……)
「はい、とても大切な仕事ですよ。
町の人々の健康を支える、立派なクエストです!」
「なるほど!!私がFカップだからですね!?」
「ちげーよ!! 誰が胸囲でクエスト決めるんだよ!!」
バサッ!!
シルビアさんが依頼書を投げつけてきました。
この冒険者ギルドの受付の人は急に怒るんだよなぁ……怖い。
◇◇◇
町の東にある草原。
「えっと……《湿性薬草》を10束!」
風がさらさらと心地よく吹き抜けていきます。
緑の絨毯のように広がる草原には、色とりどりの草花が咲いています。
「えっと……赤い花びらに紫の茎の薬草を10束……」
私は薬屋さんからもらった薬草の絵を手に、
草原を歩き回っていました。
「あ、これかな?
……これ遭難してる時に食べてたヤツだ!
苦みの後に死ぬほどの辛いヤツ!」
赤い花びらの植物を見つけ、薬屋さんの絵と見比べます。
「うん、合ってる! これを10束集めればいいんだね」
私は慎重に薬草を摘み始めました。
サクラとツバキがいたら、きっと笑うだろうな……「カエデが草摘みっていかにもだねー」なんて。
「ふふっ。でも、私って意外と几帳面なんだよ」
薬草を丁寧に束ねながら、私は独り言を呟きました。
「摘ませてもらいます……ごめんなさい……でも役に立ちますから……」
と、きっちり”ごめん”を添えて、草を摘んでました。
──その時。
風が止み──。
草が──震えました。
「……え?」
振り返ると、草が一本、また一本と、逆立つように持ち上がり──まるで集合体のように形を成していきます。
そして現れたのは──
「よくぞ来た、”草と語る者”よ」
「……な、なになになになに……だ! 誰ぇえええええ!?!?」
現れたのは、全身が葉とツタで構成された植物の巨人。
でも顔立ちはやたら整っていて、草の香りがやさしい。
「我は《草王》。草界の監視者にして、草たちの代弁者」
「草王!?そんな役職あるんですか!?」
「そなたは勇者。悪いが少し様子を見させてもらっていた。
草を摘むたびに”ごめん”と言った。
その慈愛の心。まさに勇者であった。
それゆえ……力を授けよう」
【アルティメットスキル:スピリットコール:草】
【称号:草生える者】
【効果:草が生えるような存在となる】
【獲得条件:草王との契約】──達成。
「アルティメットスキル!?
草生える者?……って、それ……悪口じゃないですか?」
「今、そなたは草である。
風と共に在れ、グラス・カエデよ。」
(やっぱり私、ディスられてない?)
「……そして、忘れるな。
その力は”アルティメットスキル”。
勇者にしか扱えぬ、精霊契約の証」
(勇者にしか!?なんか凄そう!?)
「勇者とは、常に前に出る者ではない
気付かれぬ者こそ、世界を動かす」
(うわ……長くなりそう……)
私は薬草採取を続けました。
「本来、精霊は理(ことわり)と共に在るが、
そなたは草と意思疎通を成した。
無自覚とはいえ、それは勇者の素質ゆえ」
(まだ続くのかな……お腹空いたな……)
私はポケットからパンを取り出して食べました。
「そなたは今後も数々の精霊と契約を交わしていくことであろう。
──だが、気をつけるがよい。」
(今日の晩御飯何かな?)
私はアンナさんの料理を想像しながら、水筒の水を飲み干しました。
「契約を重ねるたびに、そなたの周囲は奇妙な力で満ちてゆく。
得られるスキルが……実用的とは限らぬゆえにな」
草王さんは満足げに頷きました。
「──正式名称、《精霊顕現・第零式:草(スピリットコール:草)》」
風が舞い、草王さんが消えました。
(あ、終わったのかな?なんて言ってたのかな?)
「……あれ?草王さんが消えた!」
「──それから」
また草王さんが出てきました。
「洗った草はなるべく早めに食せ。栄養が逃げるゆえ」
(また来た)
また風が舞い、草王さんは消えました。
「──あ! そうだ!」
また草王さんが出てきました。
「食後には必ずストレッチをするのだ。便秘に効く」
(……あ……また来た)
三度目の風が舞い、草王さんは消えました。
「──あとさ?」
またまた草王さんが出てきました。
「雑草にも名はある。摘むときは呼んでやるのだ」
(……もう帰って欲しいな……)
再び風が舞い、草王さんは消えました。
「──あ、そうそう! そう言えばさ!」
また草王さんが出てきました。
「夜露は飲むな。お腹を壊す」
(……ほんとに早く帰って欲しいな……)
ようやく風が最後に吹き抜け、草王さんは今度こそ消えました。
【草王の好感度が1上がりました】
(やめて)
*
……気がつくと私は一人、草むらに立っていました。
「……草王さん……ありがとう……私、がんばる……!」
私は集めた薬草を見つめました。
「あ、そうだ! アンナさんの分も持って帰ろう!
きっと喜んでくれるよね!」
私は草むらを後にしました。
──その時、風が優しく吹いて、
草たちが揺れました。
まるで「行ってらっしゃい」と言っているみたいに。
「……ありがとう、みんな!」
私は振り返って、草むらに手を振りました。
【草王の好感度がさらに1上がりました (上限999)】
(やめて)
(つづく)