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ある夏の日、海に行った
ある夏の日、友達と遊んだ
ある夏の日、チセと遊んだ
ある冬の日、雪遊びをした
ある冬の日、チセと雪だるまを作った
ある春の日、チセに似顔絵をあげたの
そんな遠い昔の思い出に囚われた幼いお嬢様と、召使いのお話。
チセが死んで、屋敷も何もかもが燃えてなくなってから,,,
✕✕年程経って、いつものように。意味もなく眠りから目を覚まして。いつものように
『このままずっと寝られたら』
『お母様やお父様,,,チセと会えたら』
と考えながら、目を軽くこすり、軽く辺りを見回す。
,,,ん?
一つあり得ないモノが視界に映り、困惑の色が表情へ溶け出す。冬の日なのに汗が止まらない、目が滑って、”それ”と目が合わせられない
「ほら、深呼吸ですよ。お嬢様」
,,,あぁほら、幻聴だ。ついに気でも狂ったか。と思いもう一度軽く目をこすり、ソレが居た場所へと目を向ける。
,,,どうやら、今日は厄日のようだ
そんなことをぼんやりと考えながら
「あら、随分と遅かったわね。寝坊かしら?」
と、昔のように。チセ,,,いや幽霊(仮定)へと軽口を叩く
「随分と手厳しいですね,,,早起きをしたつもりなのですが」
昔と変わらないように、相手も軽口を叩く。
そうだ、こんな関係が心地よかったのだな、と少し思い出に耽っていると、先に相手が口を開く
「ふふ、にしても先程の顔は面白かったですね。随分と焦ったご様子で」
ケラケラと軽く笑いながら話す彼女に、少し苛立ちを覚え。こちらも同じように返す
「あら、クビにするわよ」
「首はもう飛んでますけどね〜、物理的に」
,,,なんてことだ、笑って良いのか微妙に判断しかねるブラックジョークが飛んできた。と少し頭を抱える。
「あれっ、そこは笑うところですよ〜?」
敬語なのにどこか気の抜ける話し方、昔の記憶から全く変わっていない、成長したのも私だけ。貴女は悪霊にでもなったかしら?と話そうとするが、踏み込んだ話をすると、過去の亡霊が消えてしまいそうで、口をキュッと噤んだ
「今日はいつもに増して表情がコロコロ変わりますね,,,百面相みたいです」
ぶん殴ってやろうか、いや辞めだ。幽霊に物理攻撃が効くとも思えない
「,,,あぁそうだ、私実は今とーっても困っておりまして」
どこか真剣な顔で、チセはそう言う。
「あら、何を困っているのかしら」
少し気になり、聞き返してみる。この言葉を発するべきではないのだろうが、好奇心はどうにも止められない
「成仏できないんですよぅ!」
いきなりぶっこんで来やがった。こちらが思い出や感傷に耽っている時に。こんなのだから駄メイドと言われているのに気づかないのだ、馬鹿め。
あぁでも、生前彼女に何もしてあげられなかったせめてもの詫びとして。不服だ、大変不服だ,,,が、その課題を解決しなければならないだろう。”元”主人としても。
「,,,はぁ、しょうがないわね。手伝ってあげましょう」
「本当ですか?やったぁ!」
子犬のように笑う彼女に、くすりと笑みをこぼす
さて、本題に戻ろう。彼女を成仏させなければならないという課題ができたのだ、不服だが。
幽霊になる原因としてよく聞くのは、執着や未練,,,彼女にそんなものがあるかどうかは別として。だが
「単刀直入に聞くけれど、あなた。未練や執着はあるの?」
「全くないです!」
「それはそれでどうなのよ,,,」
少しも考えず、さっさと答えた辺り。自分でも考えてはいたのだろう。と思いつつ、頭をフル回転させる
,,,いけない、頭をフル回転させるとどんどんと邪な考えが浮かんでくる。
『いっそこのまま永遠に,,,』
とか
『成仏させる必要はないでしょ』
,,,とか、正直少し。いやかなり、思いつく度に感情が揺れている。ふとチセの方へ目をやる。きょとんとした顔でこちらを見ており。こちらの欲望になんて何も気づいていないような純粋な顔で。
,,,腹が立つ、自分に、というのもそうだが。私に対する警戒心が一ミリもないこの子にも。
教育をミスったかな。と少し思考がズレる
そんなことをあれやこれや考えていたら、チセが口を開く
「あの〜,,,お嬢様がしたいようにしてくれてチセは構わないですよ?私はお嬢様に仕える身ですから」
,,,本当に、人の感情を揺らすのが上手い。これで無自覚なのだろうから余計タチが悪いのだ。
これ以上考えてもなんにもならないので、
もう吹っ切れてやることにした。
もうチセの成仏したいなんて願いはどうでもいい、いやよくないが
私のしたいようにあの子が言うならそれに従おう
悩んで頭を悩ませるのはもうやめだ、もういい子になる必要もないのだから
,,,無意識のうちに、考え事をしている内に。チセを抱き締めていた。涙も流れているとな、歳だろうか。そう思っていると、自身の口から言葉が溢れ出す
「,,,いやだよ。二回も目の前から居なくなるのは」
子供が親に縋るように、ボロボロと涙を流しながら言っていただろう
すると、チセが口を開く
「えぇ、承知致しました。貴女様がそういうのであれば。私はソレに従うだけですから」
こうして、幽霊と成っても侍ろうとした召使いと、幼いお嬢様のお話はお終い。
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チセ:名前の由来は忠誠。
忠誠から二文字抜粋してチセ