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翌朝、私は馬車の隅で胃を押さえ、死にそうな顔で窓の外を眺めていた。
(……はあ。最近よく気持ち悪くなるのよね。疲れかしら。アンナに用意させた吐き気止めのハーブも全然効かないし……。でも今は耐えるのよ。1000万……1000万ルク……。昨日あれだけ体を張ったんだから……絶対に、1ルクの妥協も許さないわよ……!)
カイルはまだ昨夜の余韻に浸っているのか、時折熱い視線を送ってくるが、私の頭の中は吐き気と「いかに換金レートが良い石を選ぶか」で埋め尽くされていた。
***
「殿下、私、あのショーケースの真ん中にある、一番大きくて装飾の少ないあのエメラルドの首飾りがいいわ」
「お前の瞳のように美しいな。……気に入ったなら、それにしよう」
カイルがドヤ顔で頷く。
(よし! 余計な細工がない分、石そのものの価値で売れるわ! さらば皇宮、今日が私の『独立記念日』よ!)
鼻歌まじりに皇宮へ戻った直後、待ち構えていた侍従長が深々と頭を下げた。
「妃殿下、素晴らしい宝石をご購入されたとか。……ですが、1000万ルクを超える品を自室に置くのは、皇宮の防犯規則により認められません。厳重な管理のため、宝物庫にてお預かりいたします」
「は……? 自分で持っておくわよ。愛するカイル殿下からいただいたものを、いつでも身近に置いておきたいの(大嘘)」
「規則ですので(無慈悲)」
目の前で巨大な鋼鉄のケースに封印され、十人の衛兵に守られて運ばれていくエメラルドを私は見送った。
(……ああ。私の、私の1000万万ルクが……。これなら、欲をかかずに『数万ルクの指輪』を100個買ったほうがマシだったわ……!!)
「ちょっと! なんでそんな大事なことを先に言わなかったのよ!」
私はたまらず、横で満足げにしている彼に毒づいた。
「な、なんだ急に! 大事なものならば、宝物庫で警備してもらうのが当然ではないか! その方が安心だろう!?」
「これじゃ意味ないじゃないのよ!!」
《な、なぜだ……? 俺はソフィアを喜ばせたくて、あんなに頑張った(夜も予算も)というのに……(涙)》
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#ワンナイトラブ