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同時刻
兵頭雪哉の怒号が各メンバーのスマホから聞こえていた。
「今すぐ、四郎とモモちゃんを連れ戻せ!!」
「ちょっと落ち着いて下さいよ、ボス」
東京のとあるビルの屋上にいた五郎は、ライフルスコープから視線を外す。
低い体勢のまま、五郎は言葉を続ける。
「どう言う事ですか?四郎の奴、休養中なんじゃ…」
「その四郎が俺の命令を聞かずに横浜に向かってんだよ。良いから、つべこべ言わずにさっさと横浜に向かえ」
そう言って、兵頭雪哉は通話を切った。
「え、ちょょ!?って、切れてるし…。何なんだよ、仕事を放り投げてか?」
今、五郎は兵頭雪哉からの任務でターゲットが出てくるのを待っていたのだが。
五郎は乱暴に髪を掻きながら、ライフスコープに視線を戻す。
「いや、仕事を終わらせてからだよな…」
そう呟いた瞬間、ターゲットの男が会社のビルから出て来た。
「お、出て来たな」
体勢を変えつつ、ARES MS700スナイパーライフルの引き金に指を掛ける。
照準を整え、五郎は迷わずに引き金を弾いた。
パシュッ!!!
放たれた銃弾は、数十メートル先のターゲットの頭に命中し、小さな血血飛沫が上がる。
もう一度、引き金に指を掛け様子えお伺う。
倒れているターゲットの体が小さく動くのを見つけ、
五郎は再び引き金を弾いた。
パシュッ!!!
ブシャッ!!!
銃弾は容赦無く、ターゲットの命を奪う。
ブー、ブー、ブー、。
再び五郎のスマホが振動し、腰を上げながらスマホを取り出した。
東京市内の地下駐車場
「今、どこにいるんだ」
二郎はスマホを耳に当てながら、駐車していた車に乗り込む。
バンッ!!!
こべりついた血の付いた上着を脱ぎがら、エンジンを掛ける。
「どこって、雑居ビルの屋上だけど…。春も聞いたんだろ?ボスからさ」
「お前、本名で呼ぶな。来たから、連絡したんだろ。
一郎も六郎を拾ってから向かうって」
「あんなに怒ったボス、久々に見たんだけど。なんか
したの?四郎の奴」
「…」
五郎に通話を掛ける数分前、二郎は一郎と通話をしていた。
***
一郎から四郎の病態、余命半年だと言う事を。
「嘘だろ?四郎が肺癌だって…?」
「四郎の様子がおかしかったのを見ていただろ。爺さんの知り合いに診てもらって分かったんだ」
「ドナーが見つかれば助かるんだろ?だったら、僕にでも出来るだろ?」
「お前はO型だろ、それに喫煙者は対象外だそうだ」
二郎は自身の体から血の気が引いて行くのが分かっ
た。
「四郎が死ぬのを黙って見てる事しか出来なのか…。アイツは生意気だけどさ、僕と一郎は勝手に弟みたいに思ってたじゃん?」
「…、ボスが三郎に闇闘技に出るように頼んだんだよ。賞品にJewelry Pupilが出ているんだ」
「ボスが…?四郎の為だよな…、病気を治す為に使う気なんだな」
二郎の言葉を聞いた一郎は数分の間、口を閉じる。
「ボスは今までの価値観をひっくり返してる。変わって行くんだろうな、俺達の組織は」
そう言った一郎の声は普段よりも低く聞こえた。
***
二郎は眉間を抑えながら渋々、口を開く。
「肺癌だよ、ステージ4まで進行が進んでる。余命半年だ」
「…、は?今、なんて?」
五郎の動揺している声がスマホ越しから聞こえた。
同じタイミングで、一郎と合流した六郎の口からも漏れていた。
静かな車内に重苦しい空気だけが流れる。
「ユマ、お前も喫煙者なんだから候補から外れ…」
「そんな事が聞きたいんじゃない!!どうしたら、四郎の病気が治るかしりたいの!!」
「ユマ…」
六郎が目に大粒の涙を溜めながら、小さく呟く。
「四郎はあたしよりも強いから、殺されたりしないって…。癌になっちゃうなんて、思ってもいなかったっ」
「ボスが三郎に頼ったのも四郎を助ける為なんだよ。あの人が長年貫いてきた信念を曲げるって事は、よっぽどの事なんだよ」
「お兄ちゃんは分からないの?四郎がなんで、ボスの命令に逆らって横浜に向かったのか」
六郎はそう言って、一郎の顔を見つめる。
「三郎を道具みたいに使われたからよ。それも自分絡みの要件なら、もっと嫌っだたんだよ」
「…、そうだな」
一郎は短い言葉で返事をし、高速道路に入った。
***
兵頭雪哉からの通話の後、二郎からの通話に出ていたのだが。
「え…、本当なの?」
スマホを握り締めたまま、七海は呆然としていた。
両隣にいた天音とノアは七海の様子がおかしくなった事に、すぐに気が付く。
「ボスから連絡が来たでしょ?僕等にも連絡がきてさ、四郎がモモちゃんを連れて横浜に…」
「そうじゃなくてっ!!四郎が癌って、本当なのって話だよ!!」
「「!!」」
七海の大声を聞いた天音とノアは驚きながら、七海の
顔を見つめる。
「僕だって、混乱してるんだ。七海には言ってなかったんだけど…。煙草も吸わなくなったし、ご飯も食べずに寝てる日が多かったんだ。あと、吐血をする回数も量も増えてたんだ」
「これだけ聞いたら、確定じゃん。だからボスは慌てて、僕に連絡して来たんだ。知っていたら、四郎に教えなかったのに…」
頭を抱えながら七海は項垂れる。
「七海は何も悪くないよ。四郎が任務だからとか言って、七海に調べさせたんだろ?」
「それは…、そうなんだけど…」
「四郎の事は共有しておいたほうが良いと思ってね。もしかしたら、また連絡すると思うから…。気にしずぎないでね」
そう言って、二郎が通話を切った。
「行かなきゃ…っ」
「
マ、マスター!?何しようとしてるの!!」
慌ててノアが七海に声を掛けた。
「僕も四郎を連れ戻さないとっ!!」
車椅子の車輪を手で回し、ドアの前にノアが立ち静止させる。
ガタッ!!
天音が七海の背後から手を伸ばし、車椅子の車輪を抑える。
「行かせれないよ、マスター。君を危険な場所に連れて行かないよ」
「僕の所為で四郎が倒れたりしたらっ…。帰って来なくなったら、どうしようっ」
七海が泣きながら、ノアの服を掴む。
「マスターの所為じゃない、何も悪い事なんてしてないじゃないか。頼まれたから、調べてあげたんだろ?だったら、マスターは…」
ノアは子供のように泣く七海を抱き締め、背中を優しく摩る。
「こんな事お願いする事じゃないって、分かってるんだけ…」
「四郎って男はマスターにとって、すごく大切なんだよね?瞼を真っ赤にさせるぐらいだ。大丈夫だよ、僕が行く」
天音はそう言って、七海を背後から抱き締めた。
CASE 三郎
闇闘技場の会場は深夜なのに、祭りみたいに騒がしい。
観覧席は満席で、見るからに普通じゃないよねー。
ワアアアアアアアー!!!
「良いぞ!!もっとやれ!!」
「おい、死んでんじゃねーぞ!!こっちは大金を叩い
てんだぞ!?」
客達は目の前で繰り広げらる殺し合いを見て、大興奮だ。
大きなモニターに映ってるのは、大金を掛けられてる奴の名前と値段か。
『YASUKE 5,000万』
聞き覚えのある名前だな…。
ピンポンパンポーン♪
モニターを見ていると、会場に似つかわしい音楽が流れる。
「今、会場入りした参加者は10人ずつステージに上がって下さーい」
やる気のない声のアナウンスが流れた。
「おい、聞いたか?今から参加者を何人か減らすらしいぜ」
「らしいな。思ったより参加者の人数が多かったみたいだぜ?」
「そりゃあ、賞品がアレだしな」
前方を歩く男達の会話を聞きながら、ステージに向かう。
俺以外にも後から会場入りした奴等が、約100人ぐらい?
目の前で見ると、ステージってかなり大きいな。
20人くらい上がれるんじゃない?
順番的に、俺は2番目か。
カタカナでスタッフと書かれたTシャツを着た眼鏡の男が、声を掛けてきた。
「次の参加者様は、こちらから1つ武器を選んでくださーい」
「あ?んだよ。ただのインキャが前に立つなんざ、生意気なんだよ」
俺の後ろにいたリーゼントヘアの男が躍り出て来た。
俺の直感的にコイツ、死ぬなぁ…。
後ろに下がってよっと…。
スッと後ろに下がった瞬間、グサッと何かが刺さった音がした。
「あ…?んだ…、これ?」
リーゼントヘアの男の胸部にアイスピックが深く突き刺さっている。
「うるせーんだよ、リーゼント野郎がよ!?黙って言われた通りに動けよ!!!」
とち狂ったように叫びながら暴れ出す。
こう言うタイプは怒らせると、面倒臭いんだよね。
参加者達は次々に、武器ルームと書かれた部屋に入って行く。
武器ルームにはありとあらゆる武器が置かれ、参加者達は武器を選んでいる。
「俺はどうしようかな」
壁に飾られている武器を一通り見て周り、小さめの鎌が目に入った。
刃も磨き立てだけど、所詮は草刈り鎌だ。
チラッと右側を見てみると、試し斬りが出来るスペースが設けられている。
ここには似つかわしい大根が数本置かれ、床に斬られた大根が落ちている。
クルクルッと草刈り鎌を回しながら、置かれている大
根に向かって鎌を振り下ろす。
ブンッ!!
ズシャッ!!
ゴトゴトッと斬られた大根達は床に落ちる。
ワアアアアアアア!!!
観客席から大盛り上がりの声が聞こえ、ステージを覗く為に武器ルームを出た。
出てみると、真っ白だったステージが赤黒く染まっている。
最初に生き残ったのは、俺と同い歳の派手な男か。
スタッフが死体と血の床を手慣れた手付きで、颯爽に掃除して行く。
掃除が終わるまで、第2軍の俺達は待つしかないらしい。
ものの5分で掃除が終わるが、派手な男がまたステージに上がる。
成る程、勝ち残った奴は殺し続けて行く感じか。
モニターに『Stage1 HADEOTOKO 500万』と映っている。
「次の参加者の方ー、ステージに上がって下さーい」
スタッフの呼び掛けにより、男達は気怠げるそうにステージに上がって行く。
「ちょっと、お兄さん上がらないんですか?みんな、いち早く上がってますけど…」
不思議に思ったスタッフの女が声を掛けてきた。
「あー、最後が良いんで」
「は、はあ?」
困惑する女を避けながら、ステージに上がる。
最後にステージに上がったのには、ちゃんと理由がある。
あー、やっぱり派手男が集中的に狙われてんな。
闇闘技や普通の喧嘩でも、弱そうな奴が最にやられる。
たまたま勝ったって、所かな。
体に結構傷があるし、息もかなり上がってる。
「皆さん、まもなく第2試合が始まります!!気に入った出場者が居ましたら、お手持ちのタブレットに名前と金額を入力してください!!」
チェック柄のスーツを着た男がマイクを持って、観客達の方を向く。
客達はタブレットから金を落としてるって感じか。
そんな事を考えながら観客席の方に視線を向けると、真ん中の席に椿恭弥の姿があった。
来てるだろうとは思ってたけど、嘉助を連れて来てない感じか。
「試合開始まで、あと5秒!!4・3・2・1…START」
ビー!!!
男達は一斉に派手男を取り囲み、容赦無く各々の武器を振り下ろす。
ブンッ!!!
ブシャッ!!!
「あ、あががががががががが!!!!!」
派手男の頭に斧が突き刺さり、大量の血飛沫が上がる。
公園にある噴水みたいに、ドバドバと血が噴き出す。
ワアアアアアアア!!!!
観客達は血が流れる度に大きな歓声を上げ、会場は熱気に包まれた。
「こ、この野郎がああああああああ!!!!」
ブンッ!!
派手男が振り回したナイフが、男の1人のこめかみに突き刺さる。
ブシャ、ブシャッ、ブシャッ!!!
誰から流れ出した血か分からないが、血飛沫が止まる事はない。
男達が派手男に夢中になってる間に…。
静かに草刈り鎌を構え、体勢を低くしたまま脳裏に映った映像通りに行動を始めた。
タタタタタタタタッ!!!!!
俺が走って来た事にも気付いておらず、男達は後ろを振り返ろうともしない。
「遠慮なく殺させてもらうよ」
陰キャ臭い痩せ細った男の後ろから首元に草刈りの鎌の回し、一気に奥に引いた。
グニュッと刃に首の肉が食い込む感覚が指に伝わる。
「へ…?」
男が何か言おうとしているが、構わずに草刈りの鎌を引く。
シュッ!!!
ブシャァア!!!
陰キの男の首元から大量の血が噴き出し、男達は頭から血を被った。
「は、はあ!?」
「ぶっ!!?口の中に血が!!!ガハッ!!」
茶髪の男の喉仏に鎌を回し一気に引き、隣にいた小太りの男が持っていたハンマーを奪う。
「なにす…!?」
ブンッ!!!
奪い取ったハンマーを小太りの頭に叩き付ける。
ドカッ!!!
ゴキゴキゴキッ!!!
飛び散る血肉、砕けた頭蓋骨の破片が宙を舞う。
叩き付けたハンマーが頭に深く突き刺さり、抜けなくなってしまった。
「お、おい。コイツ、やばいんじゃ…」
「殺される前に殺すしかないだろ!?
ステージの上の男達は俺の姿を見て後ずさるが、向かって来る奴を殺す方が簡単だ。
「うわああああ!!」
ステージに落ちいていたサバイバルナイフを拾い、走って来た男の顔に向かって投げ飛ばす。
ブンッ!!!
グサッ!!!
「あ、あああああ!!!俺の、俺の目があああ!!!あ?」
投げたサバイバルナイフが男の右目に刺さり、動揺しいている男に近付き草刈り鎌を振り落とした。
ブンッ!!!
グサッ!!!
「あがあああああ!!!」
「肩に刺さっただけだろ?男のくせにうるさいなぁ」
右肩に刺さった草刈り鎌を乱暴に抜き取り、刃を向けたまま男の首に回し一気に手前に引く。
ズシャッ!!!
ブシャアアア!!!
勢いよく噴き出す血を見た観客達は、一斉にタブレットに名前と金額を打ち込み始めた。
タタタタタタタタッ!!!
タブレットの画面をタップする音が観客席から聞こ
え、スタッフ達の顔に困惑の色が浮かび上がる。
「え、え?どう言う感じ?これ…」
「客達が一斉に入力し始めてるみたい!!ヤバイ、サーバーがパンクするかも!!」
ズシャッ!!!
スタッフ達が何か話してるみたいだど、話をある程度聞きながら草刈りの鎌を振るう。
「嫌だ、嫌だあああ!!!」
「うわ、うるさ…」
男の甲高い悲鳴が耳に響く。
これだから…、闇闘技に出る奴は嫌いなんだよなぁ。
大体の奴は、殺しの素人か闇金を借りて返せなくなって送りと飛ばされた奴。
「死にたくない、死にたくない!!!」
「アンタ、軽い気持ちで参加しちゃったんだー。可哀想に」
「だったら、助けてくれよ?!!」
男が懇願しながら、俺の体にしがみつく。
あらあら、自分から良い位置に移動してくれちゃって。
「それはー、無理な話なんだよねー」
「は、はあ!?テメェ、ふざ…」
「アンタさ、俺が鎌を持ってない事に気付いてる?」
そう言って、男に向かって両手を広げて見せた瞬間だった。
ヒュュュュウ。
グサッ!!!
男の頭にさっき空中に投げ飛ばした草刈りの鎌が見事に、ナイスタイミングで頭に深く突き刺さる。
「あ、くま…だ。おま、え…」
「悪魔?何百回も聞いたよ、その言葉は」
ステージに倒れた男の頭に刺さった草刈りの鎌を抜きながら呟いた。
答えたとしても、返事は返って来ないけど。
「み、皆様落ち着いて下さい!!!サーバーが大変、混み合っております!!!一斉入力はお控え下さい!!」
「ねえ、チェック柄の男」
「あ、はい!!」
「終わったんだけど」
「へ?」
俺の言葉を聞いたチェック柄のスーツを着た男は、ステージの上を見て絶句した。
それは観客席も同じで皆、一斉に時計に視線を向ける。
「え、え?上がってから5分も経ってないのに…。全員、死んでる…?」
チェック柄のスーツを着た男がそう言った瞬間、会場が一気に湧いた。
ワアアアアアアア!!!!
「な、なんと言う事でしょうか!?たった4分で瞬殺してしまいました!!!闇闘技場始まって以来、初めての事です!!!」
「さっさと次の奴等を呼んで来てくんない。なんなら、まとめて連れて来て」
「え、え?ま、まとめてって…」
「いちいち、10人を相手するのが面倒なんだよね。どうせ、死ぬんだからさ」
俺の言葉を聞いた参加者達は顔を青くして行く。
「良いじゃんない?彼の言う通りにさせてあげたら」
声のした方に視線を向けると、椿恭弥席を立っている。
「あ、支配人!!」
チェック柄のスーツが椿恭弥を見て、支配人って呼んだな。
ここの格闘技会場を買い取ったのは、やっぱりアイツだったか…。
俺の存在に気付いてるな。
観客席から妙な視線を感じていたし、気付かない方がおかしいよね。
「まぁ、残ってる参加者達と戦わせても同じ結果だろうし。同じ500万の参加者の奴と戦わせた方が、面白いじゃないか」
「支配人がそう言うなら…。でも、参加者の方々は…、どうし…」
「ギャアアアアア!!!!」
椿恭弥とチェック柄のスーツの男が話していると、大きな叫び声が聞こえてきた。
ズルズルッ…。
「参加者?なら全員、殺しちゃったよー?」
返り血で真っ赤に染まった木下穂乃果が女の髪をっ引き摺って現れる。
目が完全にイッてやがんな。
黒猫ランドの時よりも、殺す事に慣れてる。
場数を踏んだのか、それか椿恭弥に薬でも盛られたか。
「もっと殺したいなあ、早く殺させてよお」
木下穂乃果はそう言って、引き摺ってきた女を乱暴に投げ捨てる。
「ご覧の通り、僕が連れて来た弥助が片付けたから。参加者の心配は不要だ」
椿恭弥は話を続けながら、俺と木下穂乃果の顔を交互に見つめた。
「楽しもうじゃないか、夜は長い。ステージの掃除を始めてくれ、試合を始めないといけないからね」
「わ、分かりました!!すぐに掃除させまーす!!!」
「よろしく頼むよ、今夜は大金が動く。最高の試合を用意してあげないとね」
チェック柄のスーツを着た男がそそくさに、スタッフに掃除を促す。
掃除道具を持ったスタッフがステージに上がって来たので、仕方なく降りると木下穂乃果が声を掛けて来た。
「お兄さん強いんだね、四郎みたい」
木下穂乃果はうっとりした目で、俺の事を見つめる。
「お前ごときが気安く口にして良い名前じゃねーんだよ、糞女」
「フフフッ、喋り方も一緒なんだね。良いなぁ、ますます好きになっちゃうなあ。殺しちゃうのが、勿体無いなぁ」
「殺せる前提で話を進めてるのがウケる。何?調子に乗ってる感じ?そうだとしたら、調子に乗り過ぎだろ」
俺の言葉を聞いた木下穂乃果の顔付きが、一気に変わり不機嫌になったのが分かる。
ピンポンパンポーン♪
「まもなく試合が始まります!!!参加者の2人はステージに上がって下さい!!」
チェック柄のスーツを着た男が、俺と木下穂乃果に呼び掛けて来た。
***
椿恭弥所有の高級マンション PM 23:24
未だ傷が癒えていない佐助は、白雪がいる部屋に訪れていた。
ガチャッ。
「起きているんでしょ。大丈夫、椿様はいないよ」
佐助の言葉を聞いた白雪は閉じていた瞳を開け、佐助を視界に入れる。
「何しに来たの、佐助」
「ご飯、持って来た」
「いらない」
「食べないと動けないよ。近々、動き出すんでしょ」
そう言って、佐助は持ってきた野菜サンドと水をガラステーブルに置く。
「どこまで知ってるの」
「どこまで?嘉助と何かしようとしてる事くらい」
「知っていて、貴方は椿に言わないの」
「…、言わない。椿様は私の事も捨てるから」
佐助がベットに腰を下ろし、白雪の方に視線を向ける。
「捨てる?」
「伊助も喜助も弥助も死んじゃった。伊助と弥助は椿様が殺しちゃったんだけど。私以外のメンバーが死んでも、椿様は…」
「好きなんでしょ?だとしたら、私の行動を黙ってるのは?」
「椿様は楽しんでるの、貴方がどんな事をしだすのか」
佐助の言葉を聞いた白雪の背筋凍った。
「知ってるの、椿様は貴方と嘉助が色んな意味で仲良くしてること」
そう言って、佐助は白雪が隠していたスマホを取り出した。