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照と俺には、誘う時の『合図』がある。
それは——相手の右手を握ること。
俺が誘う時は少し控えめに指先を触れるように握る。
一方照は、両手で包み込むように、しっかりと、握ってくる。
「……っ」
今まさに、俺の右手が照の両手に包まれた。
照の手は大きくて、あったかい。
俺の指をするりと包み込み、逃げ場のないように絡めるように握る。
自分から仕掛ける時は、ほんの少しだけ触れるくらいなのに。
照がこうやってくる時は、いつだって……
「……照、さ……その、さ……」
視線を逸らして、もごもごと呟いた。
「何?」
「……いや、なんでも……ない……」
「ふーん?」
ニヤッと笑った照が、さらに指を強く絡めてくる。
熱い。
手のひらだけじゃなく、耳の先までじわじわと熱を持ってくるのがわかる。
「っ……!!」
無意識に手を振り払おうとするけど、逃げられない。
顔が赤くなっているのが、自分でもわかった。
照は、そんな俺を見てますます楽しそうに笑う。
「……部屋、行く?」
低く囁かれた声に、こくんと小さく頷いた。
合図は、もう十分すぎるほど伝わっていた。