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「白い砂浜! 海!」

「さっきまではあんまり乗り気じゃなかったくせに、エトワール様の方がはしゃいじゃって」

「だって、海。誰もいない海なんて珍しいじゃん。海って陽キャが集まるキラキラしたところでしょ?後家族連れとか。無なのない私には、水着を着るという勇気も無いし、見せる胸も無いし」

「はいはい。別に棟を見せるために水着を着るんじゃないわよ。エトワール様」




と、半分呆れたような感じで、リュシオルが言う。


でも、彼女の言ったとおりテンションが上がっていたのはそうだ。

だって、海なんて行ったことなかったし、勿論、あれで……家族で海に何て行かなかったから、こうして海を間近で、船に乗るとかじゃなくて海水浴にいくみたいな感じでこれたのは初めてだったのだ。それも、誰もいない海。

此の世界では、水着を着るとかないのだろうか。まあ、年から年中真夏の国みたいな感じだし、さほど海なんて珍しいものではないのかも知れない。いや、逆にというか、熱いからこそ人気だと思っていたのだが、想像の何十倍、いや人がいなかった。


今は災厄も過ぎ去ったばかりで、復興の方に力を入れているからか。まあ、何にしろ好都合だった。人がいないのは楽で良い。




「今度は、殿下を誘っていけば良いんじゃない?」

「え、え……でも、水着」

「水着のこととか気にしすぎなのよ。別に、海に行く用の服を作って貰えば良いし、殿下がそんな胸とか何とか貴方を嫌いになるわけないでしょう。何年片思いさせたと思ってるの」

「う……すみません」




身体的特徴について触れてこなかったのは知っている。本当にそういう下心有馬線みたいな、まず表情筋がそこまで動かないタイプだったので、私のことをどう思っていたか、どんな目で見ていたかは分からないのだが、リースは一切そういうことを言ってこなかった。私がそういうのを嫌っていたのを知っていたのか、それとも、配慮か、はたまた真面目に興味が無いのか。リースのことだから私のこと全部好きで受け入れてくれているの張っているし、あれだけ長いこと片思いしてくれていたから、今更飽きた、ぽい……とかはないと信じたい。

(リースに限ってないよねえ)







自意識過剰といわれたらそれまでだが、私もリースのことが好きなので、今更離れるなんて絶対にしないで欲しいし、引き止める。今回は。




「それにしても、人いないわねえ」

「さすがに、流れ着いているなんてないでしょ。どれだけ、ラジエルダ王国とここから距離あると思ってるの」




いや、一週間もすれば流れ着く可能性はないわけじゃないけれど。でも、そしたら、ひからびているんじゃないかとすら思った。一週間も海を漂うなんて、それも既にボロボロだったのに。サメの餌食にされていても可笑しくない。




「……」

「そんなに心配なの?」

「え?」

「だって、貴方がそこまで心配するって珍しいから。ほら、殿下の事は信用して、いつも助けに来てくれるヒーロー的な感じに思ってるのに、アルベド・レイの事になると、エトワール様人が変わったみたいになるから。そっちの方が素というか、友達感覚、相棒……見たいな。よく分からないけれど、恋愛感情とはまた違うものを向けてるんじゃないかなあ……なんて、私は思うわ」




と、リュシオルは私の言葉を代弁してくれた。


彼女の言うとおり、私にとってアルベドとはそういう存在なのだ。一言でまとめられるような関係ではないし、名もないような……相棒であり、パートナー……いいや、これは同じ意味か。何にしろ、大切という事には変わりなくて、それぐらい気になる存在、気にしている存在なのだ。




(あれから、何も話せてないし……)




私のことをいち早く気づいて、助けに来てくれて。それから、ラヴァインと戦って……あの兄弟喧嘩はどうなったのだろうか。アルベドが勝ったと信じたいけれど、ラヴァインもいつもと様子が違ったし。負けていたとしたら死んでいて、でも、そしたらラヴァインは私の元に来るんじゃ無いかとも思った。なにげにヤンデレを極めているから。




(ヤンデレって言えば、グランツもそうだけど……)




グランツも起きたら、しっかり話し合って向き合っていかないとと思った。もう怒ってないし、彼の口から真相を聞きたい。アルバは、大凡のことは話してくれたし、アルバを最後は救ってくれたみたいだから、良心は残っているだろう。

問題はそこじゃないけれど。




(護衛を付けろってリースに言われてたから、付けようとは思ってるし。勿論、アルバは継続だけど、もう一人って……だから、リースもグランツの事は怒ってないんじゃ無いかなあって思ったけど)




あの言い方からするに、リースは別に裏切ったグランツの事を何とも思っていないようだった。寧ろ、その実力は認めているから、爵位をとも言っていた気がする。どうだったか、あまり詳しく覚えていないけれど。




「また、難しい顔してる」

「うーん、色々あるから。山積み、山積み……あー楽になりたい」

「一生なれないわよ。だって、貴方は未来の皇帝の妻になるんだから」

「分かってますー」




ふくれっ面で返す。


親友だけど、お母さんみたいなところが或るリュシオル。まあ、このお節介なところが好きではあるんだけど、私は内面子供だから、言われるとやる気なくなるって言い返したくなった。きっと、口にしてたら「ほんと、子供ね」なんて笑われていただろう。




「あ、靴脱いで良い?」

「ドレス濡らさないでね。後、転ばないこと」

「分かってるって~さすがに、転ばないでしょ」




私は、言うのと同時に靴を脱いだ。チャプンと音を立てて海水に足を突っ込む。ラスター帝国がいくら太陽さんさんの暑い国とは言え、海水は冷たくて、ひやっと全身に染みこんでいくような感覚になった。それが、またいい。




「リュシオルははいらないの?」

「私は遠慮しておくわ」

「さっきまで、はいる気満々だったんじゃないの?」




そう私が言えば、メイドが主人と一緒になって遊んでいるようじゃ示しがつかないからと言う。確かにそうかも知れないが、せっかく来たんだから、楽しんで欲しいとは思った。




「いいって、私がいいって言ったんだから」

「そう?」

「そう!」

「じゃあ、遠慮無くはいらせて貰おうかしら」




と、リュシオルは少し暗かった顔をパッと明るく染めて私の方に歩いてきた。丁寧に靴を並べて、海へと駆けてくる。


そういえば、二人でお出かけなんて、コラボカフェか推しのイベントぐらいしか言ったことなかったなあと思いだした。二人とも、他に興味が無かったからと言うのもあったけど、それでも前世、二人で海に行けばよかったかもと今になって思った。過ぎ去ったことはもう忘れても良いんだけど。




「ねえ、リュシオル。私が、もし、前世海に誘ってたらアンタは一緒に来てくれた?」

「何その質問……というか、100パーない。無いって言える。だって、アンタが外に遊びに行くって言うのは、天地がひっくり返っても無かったと思う。でも、誘われたらいくに決まってるでしょ」




と、リュシオルはまんざらでもないと返した。


その言葉を聞いて、何か心が温かくなったような気がした。




(そうだよね……リュシオル)




唯一趣味が共有できる友人であり、今は主とメイド、けれど、親友という関係は今世でも変わらない。私達はずっと変わらないのだ。

そんなことを思いながら、水を掛け合ったり、浜辺を走っていたりすると、少し歩いた岩場に何かが打ち上げられているのが見えた。魚でも打ち上げられているのではないかと、思いつつ安易に近付けば、リュシオルに肩を引かれた。




「え、何」

「あれ、人じゃない?」

「ひひひ、人!?漂流してきたって事!?」




先ほどまで、流されてきていれば、とか言っていた自分が嘘みたいに、驚いた。リュシオルが嘘をついているようにも思えないし、でも、そんな人が打ち上げられているなんて。




(まだよく見えないけど、鮮やかな色してた気がしたからてっきり大きな魚かと)




リュウグウノツカイみたいな……いや、此の世界にいる魚はあっちの世界と同じとは限らないけれど。




(でも、赤色だったような……)




そこまでじっと観察して思い出してみれば、赤という色に私は反射的に走り出していた。




「ちょっと、エトワール様。危ないって」




赤、紅蓮。もしかしたら、バカみたいな確率で、もしかするとかも知れない。と、自分でも何を言っているのか分からないけれど、危ないごつごつと出っ張った岩場を裸足で走りながら、その人物の元にたどり着く。




「あるべ……」




ようやくその男が、現われ、岩場でぐたっと下向きで倒れるのを見つけた。だが、私の想像していた紅蓮ではなくて、それはくすんだ赤色だった。




「……ん」




死んでいるんじゃないかと思うぐらい無様に倒れていたそれが、その人がピクリと指先を動かした。また反射的に私の身体は強ばって、いつでも魔法が撃てるように手に魔力を集めていた。




「…………ん、ここは」

「……」




ばっちりとその濁った……いいや、澄んだ満月の瞳と目が合った。




「ら……」

「あの、君は誰?」




その一言で、こちらが金槌で殴られるような衝撃を受けた。


【番外編~巡廻~】乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたい

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