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政治的な判断が行われる間、連邦政府は俺たちに休暇を与えた。俺たちはそれを楽しむことにして、今俺は出かけるところだ。
「この後何が起こるかを多くの人は何も知らないんだ。それはある意味幸せなのかもね。」俺はそう隣のルドルフに向かって語りかける。
「アルフレッド、お前がそういうことを言うとは な。」ルドルフはいつもなぜか怒っているように感じられる。正直に言うと、理解不能だよ。そのような振る舞いが自分自身に対して何をもたらすか冷静に考えたことが、ルドルフの場合はないんだろう。
「ルドルフ、君もそう思うだろ?君も俺もお互い政治と関わりが深い家の人間だ。よくわかっているはず。」
ルドルフが珍しく突っかかってこない。これは肯定だな。
「でミゲルと君の保護者、あるいは幼馴染のギルベルトはどこに行くんだったかな?」
「ウシュアイア通りのライブハウスに行くらしい。」
「ウシュアイア通り。最高のライブハウスとナイトクラブが揃っているストリートだ。ギルベルトは楽しみ方をちゃんと理解しているな。ところで。ドルフ、どうして俺たちは水族館に向かっているんだ?2人仲良く。理解した、これってデートか。それならギルベルトを誘うべきだったな。」
「仲良くでもデートでもないわ!ギルベルトと俺がそんな関係になるとでも?」
「残念ながら客観的にはデートに見えるかもしれないし、俺から見ると君たちの間には複雑ななにかがあるように感じられる。そもそもドルフ、君が水族館に行くパーソナリティの持ち主だとは思わなかったよ。そして何で、死ぬほど憎んでいる俺についてくる?」
おっと、彼は苦虫を噛みつぶしたような顔をしている。いかにと怒り出しそうで、必死にこらえているような感じ。客観的に俺とドルフ(ルドルフ)の関係を見ると多分理解不能だけど少なくとも俺は彼を使って結構楽しめてはいる。
アスラン水族館は大富豪の寄付によって作られた巨大な水族館で地球から搬送されてきたラッコやイルカのような海洋動物が展示されている。
「ラッコか。ずっとボーッとしているように思える。」俺はラッコを見てそうつぶやく。
「そうだな。」ルドルフは珍しく俺に同意する。明日はなにかとんでもないことが起こるのかもな。
「ラッコにとってはこの狭い水槽が世界の全てなんだろう。そして金星のコロニーに暮らすこの国の人たちもそうで、俺たちですらそうなのかもしれない。」
俺は思ったままありのままを口にしたが、それはルドルフを困惑させるものだったらしい。
「何が言いたい?」彼は怪訝そうに俺に聞く。
「特に何かがある訳じゃない。ただ俺たちが見ている世界も何かの拍子に変わる余地があると思っただけさ。」俺は淡々と述べる。まるで「2×2=4」と暗唱するように。
「お前自身にその経験が?」ルドルフはますます怪訝そうな顔をする。ルドルフはわかりやすい人間だな。
「さあね。ひょっとしたらあるのかも。」俺はぼかすような言い方をしたが、それはルドルフの望む答えではなかったようだ。本格的に怒り出しそうなルドルフを眺める。そうさ、俺には自分の周囲や環境の全てが変わった経験がある。でもまだルドルフやミゲル、つまり信頼できる(ように思える) 同僚にすらそれを言い出すことはできないだろう。
お前に色々伝えたいことはある、でもそれはまたの日にな。MGK(ラッパー、ロックスター)