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2164年(1年前)
今日はアカデミーの卒業式。俺はオーダーメイドのスーツを着ている。窮屈であまりにも形式的で完全にカネの無駄でうんざりするような服装だ。しかしながらこの国の中で最も裕福な家であるクルーズ家の後継者である以上避けられないのも事実だ。俺はアスラン市内にある多目的ホールであるポールソンホールの前にいる。アカデミーの卒業式はポールソンホールで開催されている。いつもはアーティストのコンサートが行われるこのホールだが、この日だけは全く別の用途で使われるのだ。
「アルフレッド、よく似合っているな。」
「ありがとうございます、クルーズ国防長官。何かお話しでも?」
「親として立ち会うのは当然だろ?」
「親というより個人的には法的な保護者という認識でした。もちろんあの時に助け出してくれて感謝していますよ。でも今更親みたいな素振りをするのはやめてください。さてもう行く時間です。それでは。」
俺とクルーズ国防長官が見る世界は違うように思える。俺は新しい可能性や世界に対して開かれたマインドセットを持っている。でもおそらくクルーズ国防長官はそうではない。だからこそなぜクルーズ国防長官が俺を救い出したのかはわからないし、俺に何を期待していたかも不確かだ。なぜクルーズ国防長官は俺を養子として迎えたのだろうか?俺はポケットからコインを出して上に放り投げて、落ちてきたコインをキャッチする。ルドルフとギルベルトたちが奥の方に家族といるのを見つける。そしてミゲルはすぐそこに家族といる。目新しいスーツを着ているミゲル。そのスーツは俺からの贈り物だ。濃いネイビーのジャケットは彼の慎重さや人の良さを象徴するように思える。彼の穏やかさを反映しているような淡いグリーンのタイもよく似合っているな。
「ミゲル、待たせたかな?」
「いいえ。」
「はじめまして、アルフレッドです。ミゲルのご家族の方ですよね。ミゲルは本当に素晴らしい人間ですよ。ひたむきな努力家、いつも周囲の人間の幸せを願っている。」
ミゲルは苦笑している。これが俺の嘘偽りのない本心なんだがな。このような話をしている間も時間は過ぎていく。卒業式が何かの終わりで、何かの始まりであるなら、いったい何の始まりなんだ?
始まりがあること全てには、終わりがある。 出典不明
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