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「未亜さんなら、『きっかけはきっかけ。使えるものは使った上で、自分の魅力を知ってもらえばいいのですよ』くらいは言いそうだね」
「実際、そう言うと思います。でも、結局何をやっても、私は竹川家の長女として見られてしまうんです。美洋ではないんです」
重いなあと思う。
新興住宅地のサラリーマン家庭で育った僕には、きっとその感覚を本当に理解するのは無理だろう。
でも、それでも。僕に言えることはある。
「本当にそうかな」
えっ、という顔をする美洋さん。
僕は、頭の中で組み立てを間違えないよう、必死に考えながら口を開く。
「まずは、簡単なところから。例えば、僕や彩香さん、亜里砂さんには、そういう内部事情は関係ないだろ」
美洋さんは、頷く。
「その僕から見て、美洋さんという女の子は、華がある女の子だよ。隣の教室をちょっと見るだけで、ああ、あそこにいるな、ってそれを感じるくらい。
存在感というより、やっぱり華かな。見た目もあるけれど、それだけじゃない。人を引きつける何かを持っている。それが何かとは、具体的には言いにくいんだけれどね。例えば何かの時に見せる積極性とか、それでいて感じる上品さとか、人の事をくささないところとか。見た目の華やかさも、確かにあるけれどね」
「そうでしょうか」
「本人は気づかないだろうけれど、美洋の周りには人が寄ってくるだろ。狐系とかそれ以外とか関係なく。それにさ」
僕は、論理の組み立てを再確認する。
少しの間違いが致命傷になりかねないから。
でもこれで大丈夫だ、きっと。
最後は思い切って、でもそんな内心は表に出さないようにして、あくまでいつも通りの表情と口調を心掛けつつ、言葉をつなぐ。
「前にキャンプの夜に、亜里砂が言っていただろ。美洋狙いで、なぜか僕まで物理的排除の目標になっているって」
「あれは、本当に申し訳ないです。うちの家とか、里の方の問題なのに、関係ない悠さんまで巻き込んでしまって」
「それは、美洋が謝るべき事じゃないと思うけれどさ。ここで、ちょっと視点を変えて考えてみて欲しいんだ。
もし美洋が『他の名家の誰々と結婚しろ』とか『付き合え』とか言われて、それが気に入らない相手だったら、嫌だろう。断固として断るか、少なくとも言う通りにするものか、と思うだろ」
「それは当然です。私の恋愛は、私が決めたいですから」
よしよし。
「それが普通だと僕も思うんだ。例えば家がどうであれ、結婚とかを前提に付き合うとかするなら、せめて自分が気に入った相手でなきゃ絶対に嫌だ。それが中学生として普通というか、当然の感情だと思うんだ。
美洋を狙っている男子の皆さんだって、当然そうだろう。そう僕は思う。いくら美洋が名家の筆頭後取りで、結婚したら家の立場とか財産とかメリットがたくさんあったとしてもだ。気に入らない女の子だったら、絶対に狙ったりはしない。
そんな子と財産のために一生過ごすなんて、僕なら断固として断る。それでも駄目なら逃げる。ここの学校は家から離れているから、逃げるまでする必要はないけれどね。
好きじゃ無い人に好かれているという事実が、気持ちのいいものかどうかは別として。美洋を狙っている、という男子の皆さんは、美洋自身にも魅力を感じているんだろう。それは、家の事情がどうだこうだだけじゃない。違う?」