2025.11.5
🖤side 8:00pm
🖤「阿部ちゃーん?いい?閉めるよ?」
💚「オッケーオッケー!思いっきりやっちゃってYO!!」
🤍「キャハハ!!!ファンキーだね、阿部ちゃん(笑)」
俺たちは、今、阿部ちゃんに呼び出され、しょっぴーと阿部ちゃんの新居にお邪魔しています。
で、家に着いた途端、俺たちの目に飛び込んできたのは、広いリビングの中央にどでんっと置かれたバカでかい箱。箱には可愛くブルーを基調とした下地に、ご丁寧に緑色のハート柄がプリントされてある。
聞かないけど、多分、自分たちのメンカラだろうし、そしてこれも聞かないけど、多分特注の大箱。蓋は可愛いリボン付きで、中も大人の男一人が余裕で入るサイズだ。
そして多分、これに梱包される気マンマンの阿部ちゃんは、上背は少しあるけど、細いし、まあ、余裕でこれに入れるだろう。
箱のそばには低い脚立が添えられていて、タキシードでキメまくった阿部ちゃんは到着した時から箱の前で待機していた。
俺たちの知る、阿部ちゃんって、こんな人だったっけ…?
二人が順調に付き合い始めてから、かなり首を傾げざるを得ないような言動が多い阿部ちゃんだけど、先日も謂れのない疑いを掛けられて殴られそうになったことだし、しょっぴー絡みの阿部ちゃんには警戒するに越したことはない。
🖤「これ、後でやっぱり出して?って言われても中々大変なやつだよ…?」
🤍「確かにぃ!!しょっぴー、一人で阿部ちゃんを引っ張り出せるかな?」
ラウも心配そうに箱の上から覗き込んでいる。
💚「大丈夫!!!俺たち愛し合ってるから♡♡」
普段は頭脳明晰なくせに、ことしょっぴーのことになると、驚くほど頭が悪いこの人をどうしたらいいんだろう。親友の大事な人だし、心配になるよ……。
🖤「じゃあ、本当に閉めちゃうよ?」
🤍「スマホはー?持ってなくていいの?」
ローテーブルに置きっぱなしのスマホを見つけたラウールが、声を掛けると、阿部ちゃんは、時間気にしちゃうからいい!と男?らしく、スマホの同梱を断った。
🤍「じゃ、閉めまーす」
🖤「空気とか、大丈夫だよね?」
💚「大丈夫、大丈夫。じゃ、ありがとー♡」
こうして阿部ちゃんは、オレとラウールによって、無事にプレゼントとして、完成した。
🖤「ラウール、飯食いに俺ん家来る?」
🤍「え♡行く行くぅ♡」
💙side 8:30 pm
💙「まずい、まずい💦」
誕生日当日も、俺は仕事だった。
しかも、個人仕事がパンパンに詰め込まれていたのを、阿部が物凄い形相で、マーカーを引いた労働基準法のコピーだの、過去にタレントと所属事務所との間で起こされた裁判資料だのを持ってきてマネージャーを説得(脅)し、夜の仕事は全てリスケしてもらった。学のあるやつは、戦い方も半端ない。
しかし、こんな日に限って機材トラブルで撮影が押して、今やっと帰れるところ。
最後の仕事はグループの動画の撮影で、他には照とふっか、そして佐久間がいた。
💛「翔太、ちょっと」
💙「何?俺、急いでるんだけど…」
💛「時間は取らせないから…」
捨てられた大型犬みたいな顔をされたら断れない。送りの車を待たせて、俺は照と二人で少し離れたところへと歩いた。
💛「翔太、お誕生日おめでとう。この世に生まれてきてくれてありがとう///」
照は、大事そうにプレゼント包みを渡して来た。まあ、こいつには何かと世話になったし、個別プレゼントは嬉しくないわけでもない。ありがたく受け取る。とりあえず宝飾品じゃなさそうでよかった。
💛「筋トレする時に使って♡」
💙「あ。グローブか。ありがとう!じゃーな」
💛「あっ!翔太!?」
照の逞しい腕がグイッと、肩を掴む。意外に力がこもっていて、痛い。
💙「なに?まだ何かあんの?」
こいつ、俺とのことは諦めたはずだよな?
そんなことを思いながら訝しく振り返ると、また泣きそうな顔をしている。
💛「お礼にハグしてもらっていい?」
💙「…………わかった、いいぞ」
💛「ふわぁ……いい匂い。あったかーい…」
💙「………うらぁっ!!!!!」
………いつまでも離してくれないので、最後は強引に引き剥がした。
💜「なべ、ここにいたの?佐久間が探してるぞ」
俺を探していたらしい、ふっかに手を上げ、俺はその場を後にした。阿部の同期である深澤に照と抱き合ってるところなんぞ見られたら大変だ。間一髪だった。あいつら、ツーカーだからな。
💚side 8:45 pm
「……………翔太くん、まだかなぁ、、、、」
俺の誕生日である11月27日は、翔太をリボンで拘束して美味しくいただくつもりだけど、翔太は俺を縛ってくれないので俺は自らをプレゼントにするという古典的かつ間違いのない方法を選んだ。
有益有能なインターネットで検索して、人が入れる可愛らしい箱をオーダーし、夜から予定が空いていためめを呼び出した。
めめだけでよかったのに、最近少し俺から距離を取っているめめは、ラウールも一緒に連れて来た。二人に手伝ってもらい、箱に入れてもらった。今日の仕事は8時には終わるはずだから、すぐに帰ってくるだろう。ロケの現場もそう遠くないし…。
俺は箱の中で今か今かと翔太の帰宅を待っている。
💙side 9:00 pm
💙「俺、今日、時間ないんだけど…」
🩷「ごめん、涼太がどうしても翔太を家に連れて来いってしつこくて…」
帰りの車を断り、俺は今、佐久間の車の中にいる。
💙「もー。なんだよみんなして…」
誕生日当日。
みんな忙しいはずなのに、次から次へと俺に声をかけて来る。嬉しいけど複雑だ。
だって朝、俺は阿部に耳にタコができるほど言われたのだ。
💚『ねぇ、絶対ソッコーで帰って来てよ?ねぇ?ねぇねぇねぇねぇ???』
💙『はいはい』
💚『返事は1回!!!ねぇ、俺、首をながーくキリンさんみたいにして待ってるからね???』
💙『はい…』
阿部は、俺のために揃えた資料の数々を自分の担当マネージャーにも見せ、俺を上回る1日オフを勝ち取っていた。きっと阿部のことだ、あれやこれやと準備してお祝いしてくれるつもりなのだろう。
愛は重いが……嬉しくないわけではない。
俺だってその…阿部のこと好きだし///
🩷「何笑ってんの?……はーい。降りてー」
阿部のことを思い出していたら、いつの間にかにやついていたのか、佐久間に気持ち悪そうに突っ込まれた。
急いで車を降り、涼太の家へと向かう。
玄関を開けた途端、やたらといい匂いが漂ってきた。俺の好きなものばかりの匂いだ。夕方から仕込んで、あれこれと作っていてくれたらしい。
❤️「君たち料理苦手だからね、少しはパーティの足しにと思って…」
そういって詰められた幼馴染の愛情たっぷりの料理は、隙間なくお重に詰められ、風呂敷に包まれ渡された。
🩷「俺からはコレ」
💙「えっ!いいの?」
佐久間がくれたのは、少し前に俺が欲しがっていた時計だった。これは嬉しすぎる。
❤️「それと、これも康二からことづかってる。後で二人で見てみなよ」
涼太はフォトブックを渡すと、笑顔で玄関まで送ってくれた。
タイトルには【向井康二隠し撮り。あべなべの愛の軌跡💚💙】とある。…あとで絶対シバこう。
🩷「阿部ちゃんをあんま待たせんなよ」
💙「お前が言うな!!!」
🩷「にゃはー♡♡」
佐久間の腰に回された涼太の腕を見て、相変わらず仲が良いなとほっこりしたところで、家を出たら9時30分を回っていた…。
💚side 9:45
💚「翔太、まだかな」
二人が家を出る時、電灯はついたままだったか、消すように頼んだかももう忘れた。
暗くて狭い箱の中にいつまでもいると、時間や場所の感覚が曖昧になっていく。
結構待ってる気がするけど、そうでもないのだろうか。
子供の頃に弟と家の中で隠れんぼしたことを思い出す。押し入れに隠れたまま、気持ちよくて寝ちゃったりしたっけ。
箱を開けてもらった時に、カッコよく見つかりたいと思って、気取った体勢で待ち続けたので腰が痛くなって来た…。少し体勢変えようかな。
💚「翔太、早く帰ってこーーーーい」
💙side 10:30 pm
💙「え?運転手さん、コレ道合ってます?」
極め付けは、やっと捕まえたタクシーの運転手が、上京したばかりで道を間違えまくるという始末。勘弁してくれとぼやきたいのを我慢して、ほとんど俺自身がナビして予定より大幅に遅れて家の前に到着した。
「お客さんつきましたよ〜料金はぁ〜」
💙「ああ!もういいです!お釣りいらないんで!!!」
「領収書はどうしますかぁ?」
💙「要らないっす!!!」
強引に渋沢を握らせると、ドアが開くのを待つのももどかしく、慌ててタクシーを降りた。
💙「急がなくちゃ!!……って、マジ!?!?」
マンションの敷地内に駆け込もうとしたところで、目の前の路上にお腹を押さえてうずくまるおばあさんの姿が。
💙「嘘だろ………」
俺の脳内には、櫻井翔くんの、あの有名なドラマの台詞が響いていた……。
💚side 同時刻。
💚「ヤバイ……紅茶のせいかこれ」
家の飾り付けやケーキの支度なんかで、いそいそと作業をしながら、優雅に飲んでいた紅茶を今さらながら恨む。めめたちに箱に入れてもらう前に、トイレはちゃんと済ませたはずだったのに。
俺の膀胱は、先ほどから限界を迎えていた。
さっきまでは余裕だったのに、今の俺は尿意の塊だ。
トイレ。
トイレに行きたい…。
自分一人じゃ出て行けないし、せっかくの箱を傷つけずに戻れる自信もない。
でも、中で粗相するなんてもっと嫌だ…。
💚「翔太、早く帰って来てくれ〜〜〜💦💦」
💙side 11:00 pm
救急車を手配し、そのまま路上で30分ほどおばあさんを介抱した後で、しきりに感謝しながら手を振るおばあさんに、アイドルスマイルで手を振り返した。
ここに至るまで、何度も阿部に連絡を入れたが、ちっとも既読がつかないし、向こうからの連絡もない。
💙「やっべぇ……絶対拗ねてるよな…随分遅くなっちゃったし…」
深呼吸して、玄関を開ける。
音を立てないようにしたのは、自分の中にこれ以上ない申し訳なさがあったからだ。
部屋には電気ひとつついていない。
怒って寝てしまったかもしれない…。
悪い想像ばかりが頭に浮かぶ。
俺の手には照にもらったグローブ、康二からもらったフォトブック、涼太にもらったお重と佐久間にもらった時計、普段荷物を持たない俺にしては大荷物だ。それらを一度玄関に置いて、おそるおそる真っ暗な廊下を歩く。そして、意を決して、声を上げた。
💙「亮平〜いるのか〜???」
奥から返事はない。
部屋に上がって、電気をつけると、リビングに巨大な箱があった。
💙「うわっ!!!」
明らかに中身は阿部だろうと、そしていつからこの姿で待っていたのだろうと考える。
💚「翔太、帰ったのぉ〜???」
サプライズも何もかも吹っ飛んだのだろう。箱の中から情けない声が聞こえた。
💙「遅くなってごめんなさい、今帰りました…」
💚「早く開けてぇええええ!!!!!!」
なぜか阿部の口調が切迫してるのは俺の気のせいだろうか?
俺は壁に立て掛けてあった脚立を持ち出し、上に登ると、大きなリボンの付いた蓋を開けた。
中には、下腹部を押さえて涙目の阿部がいて…。
💚「翔太っ!!助けて!!ここから出して!!!」
必死で俺に出してくれるよう訴えて来る。
何事かと慌てて引っ張り上げるが、持ち上がらない。箱の横が高くて跨げない。
💚「もう無理!!!っうおおおおおおおお!!!!!」
阿部はいきなり大きな声を上げたかと思うと、力任せに箱を倒した。勢い余って天地がひっくり返り、逆さまになった箱から阿部が飛び出して来る。
着ていたタキシードもしわくちゃ。阿部は前屈みになって顔を歪めながら小走りに去って行く。
💙「どこ行くんだよ?怒ってるの??」
💚「んっーーんうううう!!!」
阿部は声にならない悲鳴を上げながらトイレに駆け込んだ。
しばらくして、盛大にトイレを流す音が響く。
💚「はぁ、ヤバかった。紅茶、こえぇーーー」
胸に入っていたポケットタイで洗った手を拭くほどに取り乱していた阿部は、よほどスッキリしたのだろう、アイドル力全開の爽やかな笑顔で戻って来た。
💙「あのぅ」
時刻は、もう11時半だ。
💚「あれ?もうこんな時間?」
💙「遅くなって…ごめんっ!!色々あって、でも!!これでも最速で帰って来たからさ…」
俺は、阿部に思い切り頭を下げた。
おそるおそる顔を上げると、阿部はキョトンとしている。そして俺がみなまで言わないうちに、阿部はにっこりと笑って、俺を抱きしめた。
💚「ハッピバースデー翔太。今日中に言えてよかった」
💙「怒って……ないの?」
💚「翔太を見れば、嘘言ってないの、わかるから」
阿部の胸の中は温かい。
心臓の音がとくとくと聞こえる。慣れた匂いとその感触がすごく落ち着く。
阿部は、どうしようもなく、俺のことが好きで、そんな阿部のことを俺も好きで。
阿部は俺のここまでの道中の話を、優しく身体をさすりながら、抱きしめたまま聞いてくれた。
💚「翔太、生まれて来てくれてありがとう。これからもいつまでも愛してるよ♡」
色々と大変だったけど、俺の帰る場所がここでよかった。どちらともなく視線がぶつかると、抱き合ったまま、ふたり、優しく、唇を重ねた。
とんでもないこと続きだったけど、なんだか今年の誕生日は、とても思い出深い一日になったなと俺は思った。
コメント
28件
絡みは?ねぇ…絡みは?😆
最高すぎ😂😂😂 やっぱり💚💙できましたね😏😏
ガチ笑ったw最高です🤣 ちょい残念あべべとバタバタなしょぴぴ💚💙 2人の愛が愛おしくてめっちゃ伝わった🥺 💚の誕生日に💙を美味しく頂けるの見れることを期待して待ってます