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若井と涼ちゃんは、同じマンションの部屋で暮らすことになった。
けれど、部屋はそれぞれ別。
リビングやキッチンは共用だけど、自分の部屋はちゃんと別々だった。
最初の日。
荷物を運び終えて、二人とも少しだけリビングに立っていた。
「……」
「……」
静か。
元貴が強引に決めた同居だったけど、二人とも何を話せばいいのか分からない。
若井は頭をかきながら言う。
「……とりあえず」
部屋のドアを指さす。
「俺ここ」
涼ちゃんも少しだけ頷いて、
反対側のドアを指す。
「じゃあ俺こっち」
それだけ。
お互いの部屋に入って、
バタン。
ドアが閉まる。
それぞれの部屋は静かだった。
それでも、生活のルールだけは少し決めた。
ある日の夜。
二人ともリビングにいて、なんとなく気まずい空気の中。
若井がぽつっと言う。
「……ご飯どうする?」
涼ちゃんは少し考える。
「交代で作る?」
若井は少し間をあけて、
「……あー」
頷く。
「それでいい」
それだけ決まった。
交代交代でご飯を作る。
シンプルなルール。
それ以外は特に決めていない。
ある日。
涼ちゃんがご飯を作る日。
キッチンでフライパンの音がする。
若井はリビングのソファーでギターを触っている。
二人の間に会話はない。
料理が出来上がる。
涼ちゃんが小さく言う。
「……できた」
若井は顔を上げる。
「おう」
それだけ。
二人でテーブルに座る。
カチャ、と箸を持つ音。
食器の音だけが静かに響く。
会話はほとんどない。
同じ部屋で暮らしているのに、
どこか 距離があるままだった。