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ユリノって冠名が既にウイポにあるらしくちょっとびっくりしました∑(º ロ º๑) 別にパクったわけじゃないし、百合の花→ユリノになっただけで、別にパクったわけじゃない(2回目)のでご安心を(⑉・̆༥・̆⑉)
おお…!
遂にユリノもダービー制覇!この後の菊花賞楽しみ! さらに最後の絵最高!!!!
ユリノに合わせる顔がなかった。
どうしてもどうしても勝ちたかったのに、勝てなかった。なんで?なんで…?
全力は出した。いっそ全力をも超える“何か”がアタシにありでもすれば………。
そんなことを考えながら机に突っ伏していた。
美浦寮のとある一室。
いつもルネと一緒に過ごしている部屋。
でもルネはもう寝た。ルネはいつも早く寝る。
………次走はダービーか。
出てもいい。でもただの恥さらしだ。
一生に一度の晴れ舞台。でも出てもおそらく勝てない。
それに、アタシはまだまだ未熟だから………。
部屋着は着ている。もう寝よう。
そして、明日トレーナーに伝えよう。
────東京優駿には出ない、と。
「…………いいの?後悔しない?」
そっと、トレーナーはアタシに聞いた。
トレーナーは、アタシの出る予定だったダービーに向けた書類をクシャリと握った。
申し訳ないな。
「……うん」
「…………じゃあ、天皇賞に向けたトレーニングに急遽変更…か。今日は放課後トレーニングなしね。マイルカップ頑張ったから、友達と遊んできたら?」
トレーナーはそう言って作業を再開した。
全く外面だけはいいんだから。
そう思いながらも、少し迷っていた。
ユリノは、今日空いてるだろうか。
「ほら、今日は白い子と楽しく遊んできな〜」
しっしっとトレーナーは手を振った。
アタシは荷物を持ってここの部屋から出ていく。
「じゃ、また明日ね」
トレーナーはそう言うも、アタシの顔は見なかった。
目線はノートパソコン。何を調べてるのかは知らない。
………担当トレーナーなんだから、もうちょっとアタシのこと見ていて欲しい。
そんな戯言を頭の中で並べながら、トレーナー室のドアを閉めた。
レーストラックは……やっぱり人とウマ娘がいっぱいだな。
ユリノは、スピカだっけ。
そんなこと考えなくても、白くてちっちゃいからわかりやすいけど。
トラックの周りを探してみる。
意外にも見つからなかった。
「ほらぁー!もっと気合い出せぇぇ!!」
一際大きい声が聞こえ、声の方を見てみる。
「…………」
前走でアタシに先着した子だ。
名前は……エドヒガン。
隣はトレーナーかな。小さい男の人だ。
「……声の割に体は小さいんだな」
自分の体を見てみる。
身長は170センチ越え。この体見る度、母さんは嫌味を言ってたっけ。
『なんで、コールちゃんはこの前までちっちゃくて可愛かったのに……』…──きっしょ。
こんなこと思い出しても、仕方ないのだけれど。
毎日夢に出てくるから、自然に脳裏に張り付いている。
「───あれ、コール」
後ろから聞きなれた声が聞こえた。
ゆっくりと後ろを振り返る。
ユリノだ。アタシの……友達。
「……最近話してくれなくなったけど、何かあったの?」
「あー、いや。最近トレーニングがキツくて、あんまり話しかけられなかったんだ。ごめん」
「………そう」
咄嗟に嘘を言い、なんとか納得させる。
ユリノはいつもの無表情でアタシを見る。
いつもと同じで、少し違う。
「………ねぇ、この後空いてる?…って、ダービーあるよねごめ───」
ハッとして、すぐ謝ろうとする。
そうだ、ユリノは皐月賞ウマ娘だ。クラシックウマ娘だ。
アタシとはきっと“格”が違う。アタシに付き合ってる暇なんてないのかもしれない──
「───空いてるよ」
「えっ」
予想外の回答。
本当にいいの?そう聞き返す。
「うん。友達とお出かけしてみたかったの。ルネも誘おう?」
まるで青春を夢見た田舎の純粋無垢な少女のよう……実際そうなんだけど。確か出身も石川とかだったよね。
ルネも……。
「………いや、2人で行こう」
「分かった。着替えてくるから、待ってて」
そう言って、ユリノはアタシの方に走ってった。
いつもと変わらない、無表情で。
いろいろと店を回った帰り道。
アタシは右手に、ユリノは左手にドリンクを持ち、河川沿いを歩いていた。
「……ダービー、楽しみにしてるからね」
ユリノは夕日を浴びながら言った。
「一生に一度しかないダービー。沢山のウマ娘が憧れ、夢破れ、ひと握りのウマ娘だけが挑める舞台。そこでコールと走りたい。マンガみたいに熱い勝負を交わしてみたい。………コールとまた」
いや、違う。
勝利を望み、熱い勝負を望んだ少女の瞳。
その目には勝利が見えているのかもしれない。
自分が勝つ姿が。
「…………でも、アタシ──」
「マイルカップのこと気にしてるの?でも出れるじゃない。2着だったんだから」
出ないということ。ダービーに出ないってこと言わなきゃ。
「ダービー一緒に走ろ。約束」
そんな約束はアタシに聞こえてはいなかった。
言わなくちゃ、もうアタシ、ユリノの1番の親友じゃなくなっちゃ───
「───…コール、大丈夫?」
ユリノはアタシの方を向いている。
自分という王者を見据えた瞳には、アタシの格好悪い泣き顔が映っている。
大粒の水はアタシの頬を辿り、コンクリートに落ちる。
ぽたぽた、と。
「……あっ…えっ………?」
手を受け皿に涙で濡らす。
その手には少しだけ赤が混ざっている。
まるで、未だに扱い慣れない赤い絵の具のよう。
未だに忘れられない母さんが着せてた紅い紅いドレスのよう。
「コール…?」
ユリノはこっちに駆け寄ってくる。
駆け寄ってくるなり、アタシの目にハンカチを当てた。
「違っ……アタシ……」
不器用ながらもハンカチを当てているユリノの腕を、そっと触った。
ごめん、ごめんね。
アタシ、ダービー出ないの。
ユリノと一緒に、走れないの。
本バ場入場………するところだけど…。
雨だな。とことん雨。
こういう空気、嫌いなんだよな。ジメジメしてるの…。
……………しょうがないか。
今日はダービーだ。コールもきっとゲート前にいるに違いない。
そう思い、1歩踏み出してずぶ濡れになりながらもゲートの前に行った。
僕が出てくると、観客席の方から歓声が上がった。
そっか、僕初めての1番人気だっけ。
会場には僕を呼ぶ声が響いた。
こんなことは2回目だけど、すごいなと今も思う。
僕の耳元を歓声が駆け抜ける。
なんだか暖かい。
─────あっ、
「コール!」
そう言い振り向いた。
ターフにコールはいなかった。
「………あれ…?」
見渡してもいなかった。
『さぁユリノテイオーが登場し、ターフに18人の優駿が姿を表しました。なおコールドブラデッドは直前で出走回避となりました』
…………え?
『さぁ第2コーナー曲がり、向こう正面に入りました18人。1番人気の皐月賞ウマ娘ユリノテイオーは後ろから4、5番手の位置でレースを進めています!』
大雨の中の日本ダービー。右隣にはスピカのメンバーとトレーナーさん。左隣には伊織。今日は何ヶ月かぶりにユリノのレースを見に来ている。
「…………少し、前に行きましたね」
「えぇ。位置取りとしては問題ない……だが最終直線で外に持ち出せるか…?」
スピカのトレーナーさんはただ真剣な表情で言った。
8Rの青嵐賞を勝ったウマ娘は外から伸びて差し切った。コースは皐月賞の時のようにバ場は大荒れ。ユリノは内に埋もれていた。無駄にスタミナを消費しないように……。
勝負服を泥で汚しながらも、ユリノは府中の不良バ場を駆けていた。
「………いや、皐月賞の時の戦略勝ち。あれはユリノのレース勘と華奢な体に秘められたパワーのおかげです。このぐらいのバ場だってきっとこなせますよ」
「…………」
きっとこなせる………と言っても少し不安だ。
何が不安かはよく分からない。この感情が不安なのかも分からない。
だから、
(………勝って)
ただただただただ願うだけ。
『さぁまもなく第3コーナーのカーブに差し掛かるところ!ユリノテイオーはまだ中団やや後ろ!』
3コーナーを曲がった。
残すところは4コーナー………!
「………ユリノちゃんどうなんだよ」
伊織が眉をひそめて言った。
「順っ調………!」
俺は自信満々で言った。
『大ケヤキを過ぎて第4コーナー!オクシデントフォーはリードが少なくなってきた!!』
バ群は横に広がって、ユリノは外の内。
さぁ直線だ。府中の長い直線…!
「…………!待って、あれ……!」
スピカのメンバーの一人…ダイワスカーレットが言った言葉にハッとする。
「斜行!!?」
ユリノより外にいたウマ娘が、無理やり内に切れ込んで来た。
そしてユリノにぶつかった。
ユリノは少しバランスを崩した。
「危ないっ!」
ユリノは踏み足を崩し────
───それを弾みに加速した。
『さぁ先頭エドヒガンだが、真ん中ユリノテイオーが!ユリノテイオー勢いよく上がって来たあぁあ!!』
他のウマ娘と明らかに脚色が違う。
1人、2人、3人、4人………エドヒガンを抜かした。
瞬きする間に先頭に立った。
俺だけじゃなく、伊織も、スピカのトレーナーさんとメンバーも呆気に取られて見ている。
『ユリノテイオー凄い脚だ!!エドヒガンをあっという間に交わし先頭に立った!!』
差は縮まらない。縮まるどころか、どんどん離されている。
『ユリノテイオー、後続をどんどん突き放す!差は4バ身!5バ身!6バ身!!さぁ二冠ウマ娘誕生の瞬間!!ゴールまで残り100メートルを切った!!』
6バ身、7バ身、8、9バ身………。
もう後続は追ってこない。
独走状態だ。
『ユリノテイオー!ユリノテイオーだ!!後続との差は縮まらない!!』
9。9バ身。
その差を保って、今───
『ユリノテイオー!!後続をちぎってちぎって大楽勝!!差は9バ身!なんとダービー史上最高着差を、白毛のウマ娘が塗り替えました!!!』
ユリノはゴールを通過した後、身を屈め呼吸を整えた。
『ユリノテイオーやりました!菊花賞に続く三冠の道を、目の前に築き上げてみせました!!』
ユリノは観客の方の見ると、凛々しく二本指をあげた。
俺も、兄としてなんだか誇らしいな。