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刻の碧律

114 - 第11話:ライフカード1分の朝定食

2025年04月18日

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第11話:ライフカード1分の朝定食



🌅 シーン1:夜明け前の訪問者


空がまだ碧く染まりきらぬ早朝。

《碧のごはん処(ミドリ)》の扉が、音もなく開いた。


入ってきたのは、痩せた体をマントで包んだ壮年の碧族。

髪は白く、目の下に深い影。手元には、碧く薄く光る《ライフカード》――残り“00:01:03”。


彼は、カウンターに腰を下ろし、ぽつりとつぶやいた。


「……あと何か、できることあるかな」





🍳 シーン2:朝定食、その価値


タエコはゆっくりと頷き、すずかAIに目配せする。


「残存寿命確認。調理制限:60秒」


「1分でも、心満たすメシ作ったる」


タエコが手を動かす。


《FRACTAL_COOK_MODE=FINAL》《LIFESPAN_LIMIT=1MIN》《TRACE=DAWN》


碧素で炊いた白粥、甘く煮た碧大根、光を帯びた玉子焼き。

湯気の温度も、香りの揺れも、すべてが“穏やかな目覚め”にチューニングされている。





🍽️ シーン3:空を見上げて


男は、黙って一口一口を大切に噛みしめた。


最後の一口を飲み込み、ふっと息を吐く。


「……なんだか、生きてたって感じがするな」


タエコは笑って、言った。


「その1分、ちゃんと“食うた”ってことや。ほな、行っといで」


男は席を立ち、朝焼けに染まる空を見上げた。


残された“1分”で、何も語らず、ただ静かに笑い、店を後にした。





1分でも、生きるということ。

それを支える料理が、ここにはある。

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