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コメント
2件
やっさし〜!(*´∇`*) なくだけのばしょじゃなくなったのかぁ…!! よかったなぁ、、泣
放課後の校舎裏。
おらふくんは、いつものように壁にもたれて座っていた。
コンクリートの冷たさが、傷ついた膝にじんわり響く。
誰もいない空間。遠くで誰かが笑う声が聞こえるけど、ここは別世界のように静かだった。
「……いた」
背後の声に、体がびくっと震える。
振り返ると、やっぱりおんりー。
今日は少し、近づいて立っている。
距離は昨日よりも近い。でも、すぐには座らない。
「……うん」
小さく答える。
声は昨日より少しはっきりしていた。
ここに座る理由は、まだ誰にも言えない。
けれど、誰かに見られてもいい――そんな気持ちが少しだけ芽生えていた。
おんりーはしゃがまず、立ったまま地面を見ている。
その沈黙は、押し付けがましくなく、ただ存在しているだけ。
それだけで、おらふくんの心は少し落ち着いた。
「……傷、大丈夫?」
低くて優しい声。
おらふくんは手元の膝を見つめ、小さくうなずく。
「うん、大丈夫だよ、ちょっと痛いけど…」
おんりーは何も言わず、でもその目は優しく見守っている。
動かず、ただそこにいる。
その距離感が、昨日よりも安心できる。
二人の間に、時間だけがゆっくり流れた。
風が木々を揺らし、葉のざわめきが耳に届く。
遠くの笑い声やチャイムの音が、ここだけ切り取られた世界に溶けていく。
おんりーはふと、しゃがむこともせず、地面に落ちた小さな石を拾った。
そしてそっと、おらふくんのそばに置く。
「……踏まないように」
言葉少なで、でもその仕草には優しさがにじむ。
おらふくんは、一瞬だけその手を見て、胸の奥がじんわり温かくなる。
「ありがとう……」
小さくつぶやくと、おんりーは軽くうなずき、また黙る。
言葉は少ないけれど、存在が静かに心を包んでくれる。
おらふくんは、目を閉じて深く息を吐く。
この場所で、誰かに守られる感覚を、少しだけ覚えた。
名前も知らない、思い出せない人。
でも、その人が隣にいるだけで、心は少し軽くなった。
「……また明日も来る?」
おんりーは立ち上がる前に、ほんの少しだけ柔らかく声をかけた。
正直、まよっていた。でも、
「うん……来るかな」
おんりーは笑わず、でも安心したようにうなずいて校舎の方へ歩き出す。
振り返ることもなく、足音だけが遠ざかる。
残されたおらふくんは、手に握ったハンカチをぎゅっと握りしめる。
名前も知らない、過去も思い出せない。
それでも、確かに感じた――
――ここにいてもいい理由が、少しだけ見えた気がする。
校舎裏の空気は、今日も静かで、昨日より少しだけ温かかった。
そして、おらふくんの胸には、昨日よりもほんの少しだけ、勇気が芽生えていた。
少しずつ…
放課後。
おらふくんは、校舎裏には行かなかった。
代わりに向かったのは、使われていない準備室だった。
理科室の奥。
ほこりっぽくて、椅子が一つだけ置かれている。
誰も来ないし、音も届きにくい。
ドアを閉めると、外の気配が遠くなった。
「……ここなら」
壁に背中を預けて、ゆっくり座る。
今日は、裏に行くほどつらくなかった。
それだけで、少し進んだ気がした。
コンコン。
小さなノック音。
一瞬、心臓が跳ねる。
でも、聞き覚えのある間だった。
「……いる?」
おんりーの声。
おらふくんは、少し迷ってから答えた。
「……いる」
ドアがゆっくり開く。
おんりーは中を見て、少しだけ驚いた顔をした。
「ここ、来てたんだ」
「……裏、今日は行かなかった」
そう言うと、おんりーは何も否定しなかった。
ただ、小さくうなずく。
「そっか」
それだけ。
おんりーは中に入らず、ドアの外に立ったまま。
入り込まない距離。
それが、ありがたかった。
「……昼は、来る?」
昼、というのは校舎裏のことだ。
おらふくんは、少し考えてからうなずいた。
「……ごはんのときだけ」
「うん」
短い返事。
でも、安心したみたいだった。
それ以上は話さず、
おんりーは「また明日」とだけ言って去っていった。
次の日の昼。
おらふくんは、パンを一つ持って校舎裏に向かった。
ここはまだ、外じゃないと息ができない時間用。
少し遅れて、おんりーも来る。
二人は並んで座るけど、距離は保ったまま。
「……ここは、昼だけにしよ」
おんりーが、静かに言った。
おらふくんは、少し驚いてから、うなずく。
「……うん」
「中の方が、寒くないし」
それは理由の半分だけだと、分かった。
でも、言われるのが嬉しかった。
二人は黙ってご飯を食べる。
包み紙の音だけが、やけに大きい。
「……放課後は」
おんりーが、視線を地面に落としたまま言う。
「さっきの部屋、悪くなかった」
その言葉に、胸が少しあたたかくなる。
「……来てもいい?」
遠慮がちな声。
おらふくんは、すぐには答えなかった。
でも、首を横に振ることもしなかった。
「……うん」
小さな声。
それだけで、十分だった。
校舎裏は、
もう“泣く場所”だけじゃなくなっていた。
そして校舎の中にも、
少しだけ、逃げなくていい場所ができはじめていた。
なんこれ