仕事が終わって、翔太が家にやってきた。
玄関の扉が開いて、「ただいま」と小さく呟く翔太を「おかえり」と微笑んで迎え入れる。
リビングに入ると、翔太は何気ない素振りをしながらソファに腰を下ろした。
何かを言うわけじゃない。
だけど、その肩は少しだけ力が入っていて、指先は膝の上でゆっくりと動いている。
俺は何も言わずに、その様子を横目で見た。
ドラマの撮影で、共演者とのキスシーンがあった日は、いつも翔太はこんなふうになる。
気にしなくていいのに。
そう思いながらも、翔太の気持ちが手に取るようにわかるから、何も言わずにそっと腕を伸ばした。
「ん」
短くそう言って、翔太の背中を引き寄せる。
翔太の肩が小さく震えて、ゆっくりと腕の中に沈んでいく。
「おつかれ」
そう言って、背中を優しく撫でる。
翔太は少しだけ身じろいで、それから俺の服の裾をぎゅっと握った。
「……していい?」
少しだけ伏せた瞳で、翔太が尋ねる。
こんなふうに尋ねられるまでもなく、俺にはわかっていた。
翔太はきっと、心のどこかで引っかかるものを抱えている。
演技だから、本気じゃない。
そんなことはわかっているはずなのに、どこかで引っかかる感情を、俺に触れることで塗り替えたくなるのだろう。
「うん」
頷くと、翔太はゆっくりと目を閉じた。
静かに、優しく唇を重ねる。
翔太の肩からすっと力が抜けるのを感じながら、もう一度、腕の力を強めた。
「……ありがと」
小さく囁かれたその声が、少しくすぐったくて、愛おしくて。
(気にしなくていいのに)
そう思いながら、今度は自分から翔太の髪に唇を寄せた。
「……大丈夫だから」
ぽつりと呟くと、翔太が少し驚いたように俺を見上げる。
その瞳の奥に、ほんの少しの戸惑いと、安心が滲んでいるのを見て、そっと笑った。
翔太も少しだけ唇を緩めて、もう一度、唇を寄せた。
今度はさっきよりも、ずっと優しくて、甘いキスだった。
コメント
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ゆり組ってやっぱりいいですね! リクエストします… リクエストする場所違うんですけどR18のなべ攻めだて受けで書いて欲しいです!
繊細なしょっぴーとそれを包む舘様…尊いなぁゆり組✨✨