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〜如月風香side〜
眠ろうと目を閉じると、瞼の裏にあの忌まわしい日々が浮かんでくる。
どうにかして消そうとしても、脳裏に焼き付いて消えてくれない。
(眠れない……。)
結局一睡もできず、日々濃くなるクマを手でなぞりながら廊下を歩く。
「おはよう如月さん。ポスター完成した?」
「あ、東雲くん。」
先生箱推し同士仲良くしている東雲くんも、十三歳にしてはクマがひどい。
リュックをおろし、クリアファイルからポスターを取り出す。
テストの点数底上げ作戦として、各教科の要点をまとめたポスターを作成することになったのだ。
「えっと、理科三枚と英語、で大丈夫だよね?」
「うん、完璧だよ。ありがとう。」
「良かった。これで、テストの点数に落ち込んで辞める先生が出ないね。これ以上教員が減ったらたまったもんじゃないよ。」
「うん。AI先生たちでシミュレーションしたから、範囲もドンピシャだろうし。」
「私にも今度、AI先生の作り方教えてよ。イタリアのロッシ先生と喋ってみたいんだ。」
そんなオタク談義に花を咲かせ、今日も頑張ろうねと言って別れると、入れ替わるように一人の生徒がやってきた。
「風香、おはよー!」
「おはよう、空。朝練は?」
「馬場先いないからなし。やったね!」
同じクラスで幼稚園からの付き合いの空。
いつも可愛くて、友達がいっぱいいて、私の自慢の親友だ。
(あの時だって、空には本当にお世話になったな……。)
「何ぼーっとしてんの?」
「ああいや、そんなことないよ。」
「なら良いけど。ていうかそれよりさー。」
私の前に立ちふさがると、ぴっと人差し指を突きつけてきた。
「ねえ、いつまで”先生推し”なんてふざけたこと言ってるの?」
「ふざけてないよ。」
自分の推し活をふざけているなんて言われて、むっとしないオタクがいるだろうか。
それでも空は私が不機嫌になったことに気づいていないのか、まくしたててくる。
「空もオタクだから、本気で推してる人に何か言ったりしないよ。でも風香は違うじゃん。先生のこと大嫌いだし、学校だってすごい怖がってるじゃん。何で身を削ってまでオタクって言ってるの?」
「……さい。」
「え?」
「うるさい!!」
学校で怒鳴ったのは、これが初めてかもしれない。
「私がどういう思いでオタクやってるのか、知ってもないくせにうるさいよ!」
泣きそうになりながら空を睨んでも、彼女は目をそらすことなく私を見つめ続ける。
その瞳があまりにも眩しくて、私から目をそらしてしまう。
「……もういい。」
彼女に背を向けて歩き出そうとすると、空は優しい声で私を呼び止めた。
「風香。空、ちゃんと知ってるよ。だから無理してほしくないんだよ。」
私はろくに返事もできず、そのまま来た道を戻った。
(空、ごめん。)
※キャラ紹介の章、更新しました。
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