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「飲み会、来週になったって聞いた?」
食器を洗いながら、龍也が言った。
「うん。昨日、千尋とバッタリ会って、聞いた」
以前は不定期で集まっていたOLCの仲間とは、三、四か月おきに飲むようになっていた。
「行くだろ?」
「うん」
私はスマホから顔を上げ、龍也を見た。
「そっか」と、龍也は嬉しそうに目を細めた。
前回の飲み会の時は、私に恋人がいた。だから、私は行かなかった。
それが、ルールだから。
どちらかに恋人がいる間は、他人。
友達、ですらない。
だから、恋人がいない時は必ず参加する。
次、は行けないかもしれないから。
「そういや、昨日、麻衣《まい》さんに会ったよ」
「麻衣? どこで?」
麻衣は私たちより二歳年上のOLCの仲間。行政書士をしている。
本人は背が低くてぽっちゃりした体格がコンプレックスらしいが、私は可愛いと思う。
「陸さんに頼まれて、ホテルから家まで送った」
「陸さん?」
「そ」
「なに、それ」
「それがさ、仕事相手に食事に誘われて断り切れなかったんだって。嫌な予感がして陸さんに連絡入れてたみたいなんだけど、案の定、部屋に誘われて、陸さんが助けたって。麻衣さん曰く、絶対部屋に制服があったはずって」
「ああ。またソッチの男……」
麻衣は胸が大きいこともコンプレックスで、男にいやらしい目で見られたり、痴漢に触られたこともあって、潔癖症気味。
「けど、陸さんのホテルを予約するなんて、結構本気だったかもしれないよな。スイートっぽかったぞ」
「金持ちの道楽でしょ?」
「俺には無理だなぁ……」と、龍也が呟いた。
龍也はFree Style Production《フリースタイルプロダクション》というオリジナル商品の開発をしている会社で、営業をしている。主任の龍也には、EMPIRE HOTEL《エンパイアホテル》のスイートルームは、軽い気持ちで女を誘うには高すぎるだろう。
「てか、EMPIRE HOTELのスイートルームに誘いたい女がいるの?」
「……気になる?」と、龍也がニヤッと笑う。
「まさか。そんな女がいるなら、ここには来んなって話よ」と、私はツンと目を逸らした。
断じて嫉妬などではない。
「わかってるよ」
「彼女が生理中だから、でもダメだからね」
「お前……俺をどんだけゲスだと思ってんだよ」と、龍也がため息をつく。
「念のため、よ。あんたがあいつらとは違うことはわかってるから」
「ホントかね……。つーか、また言われたのか?」
「事実だもの。気にしてない」
「あきら……」
龍也の目は、明らかに同情を示していた。
私は時々、自虐的になる。
龍也の前で、だけ。
言えば、私も龍也も辛いだけなのに、言わずにはいられない。
「生理がなくて避妊の必要もない女は、セフレにピッタリでしょ?」
「やめろ」
龍也の、この怒った顔が見たいからかもしれない。
龍也が怒ってくれるから、私は冷静でいられるのだと思う。
『いつでも中出しし放題なんて、サイコーだよ』
『将来を考えたいから、別れてほしい』
私の身体のことを知った男は、みんなどちらか言った。
最初は、傷ついた。
けれど、次第に開き直るようになった。
中でなんて出させてやらない。
フられる前にフってやる。
「着けないで……」
ゴムを持つ龍也の手を掴んで、言った。
「あきら」
「いいから」
私は身体を起こし、同時に龍也の胸を掌で押した。彼のお腹の上に跨る。
膝を立て、腰を浮かし、硬いモノを入り口に擦りつける。
「ダメ……だって」
目を細め、そう言った龍也の息が浅く早くなる。
「このまま挿《い》れたいくせに」
「けど——」
「じゃあ、挿れないでする?」
私は龍也の上に腰を下ろし、少し前屈みになって腰を揺らす。
私の柔らかく膨らんだ部分と龍也のモノが擦れて、気持ちいい。
「くそっ——!」
龍也は私の腰を掴んで持ち上げると、入り口にぴったりと先端を当てた。
私がゆっくりと腰を下ろし、龍也がゆっくりと腰を上げる。
「あ——っ!」
龍也は、いつもゴムを用意している。
必要ないのに。
だから、決めた。
「あきらっ——!!」
龍也も身体を起こして、私を抱き締める。
「あきら……」
私も龍也の首に腕を回し、唇を重ねる。
ギシッギシッとベッドのスプリングが悲鳴を上げる。
互いの体液が混ざり合う卑猥な水音と、肌がぶつかる乾いた音。
「龍也……」
龍也以外の男には、中出しさせてやらない。
龍也以外の男のDNAは、挿《い》れてやらない。
「あっ……、あ……。イ……ク——!」
「ん……」
どちらからともなく、とても自然に、動きが加速する。
唇は繋がったまま、龍也が私の腰を押した。
「ひゃぁっ——!」
当たるトコロが変わる。
ソコは私のイイトコロで、龍也はソコを擦られると私が我慢できないことを知っている。
「イ……ク」
「俺も……」
「ん……。出して——」
何度も抱かれたら、私の身体の半分くらい龍也のDNAに染まらないかな。