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「なっ……」
「……勝負アリだ」
真下で繰り広げられた光景に目を丸くするツクヨミ。
「有り得ない……1人で?ただの人間が」
炎の海と化したコロシアムからツクヨミ達を見上げるジュンパク。
「……勝負は勝負だ、仮にも神の名を名乗るなら潔く負けを認めろ」
「ぐぬぬ……これが悔しい感情か」
涙目になりながら指をパチンと鳴らす。
すると最初のバーになる。
「アニキ!」
「……良くやった」
「っ…………へへ、アニキに比べればまだまだだよ」
あんな激戦をした後だが、バチンっと2人は軽く片手でタッチして終わり、そのままジュンパクはバーのカウンターでつまらなさそうにしているツクヨミにドヤ顔を披露した。
「はいはい君の勝ちですよ、約束通り【神聖】した後にここから出してあげる」
「1つ聞いていい?」
「なんだい?」
「【神聖】って?何?」
「え!?」
「アニキ知ってる?」
「……NO」
「え、えーっと、神聖ってのは武器に神を宿すって事なんだけど……」
「いまいちピンと来ない、時間もないから手短に」
「要するに僕が君の鎖鎌に入って僕の力を使える様になるって事なんだけど……」
「断る、早く出せ」
その言葉にツクヨミはキングタナトスが倒された時より大袈裟に驚く。
「うぇええええええええ!?僕の力だよ!?夜の神だよ!?自慢じゃないけど神の中ではかなり上位クラスだよ!?」
「それが事実だとしてもミーのアニキを盗ろうとした泥棒猫の力なんて借りない、早く出せ」
「知らないよ!?後悔しても!」
「海賊は航海しても後悔しないの!早く出せ!」
「むぅ……そこのドアを開ければこの世界から出れるよ、時間はここに入ってきてから5分くらいだ」
「入った瞬間くらいにして、時間ないんだから」
「無理言わないでくれ、『時間』は最上位の神の特権、この世界の時計をいじってもあっちの時間を完全に停止することはできない」
「そ、アニキ!いこいこ!」
「……あぁ」
ジュンパクはツクヨミと話す事はもうないと判断したのか背を向けてヒロユキの腕に掴まる……まるでカップルの様だ。
「……」
2人がドアに向かうのをツクヨミは見る。
「アニキ!ドア開けますね」
「……あぁ」
そしてジュンパクがドアノブに手をかけた瞬間。
「ちょっと待って!」
ツクヨミは2人を止める。
「あ?なんだ?時間ないって言ったよね?もうお前と話す事はないの!」
「ほんとに後悔しない?」
「しない!」
ジュンパクは即答する。
「その言葉に嘘はない??」
「なんだって言うんださっきから!こっちは身体ボロボロだし限界突破をまだ解いてないからタイムリミットがあるの!」
「ぐぬぬ…………!」
ツクヨミは何か閃いたようだ。
「いいや、ジュンパクくん……いや、ジュンパク」
「てめーに呼び捨てされる筋合いは__」
「“僕の力を使えば女の身体にもなれるよ”」
「っ!!!」
ジュンパクに衝撃が走る。
「ふ、ふん、何を今更……ミーは男である事を苦に思った事はない」
「うん、君の性格を見てきて“女になりたい”って事じゃない事は分かってる、だけどね」
ツクヨミは自分の頭を指でちょんちょんと叩くと、ジュンパクだけに脳内に言葉が聞こえてくる。
{女の身体になったらヒロユキの子を授かれるかもだよ}
「っ!!!!!!!!!!?!?!」
ジュンパクの顔が一気に赤くなる。
「……?」
{もちろん、一生女ってわけじゃない、君が好きな時に女になれるんだ}
「好きな……時に……」
ミクラルでは性転換魔法手術はある。
だが、当然海賊であるジュンパクは受けれず。
何より自分の適性魔法上、男という性別を捨てるわけには行かなかった。
だが“能力として女になる”……ジュンパクにとってその誘惑はどんな言葉よりも効いた。
{そう、好きな時に……}
「あ、アニキ!」
「……なんだ?」
「アニキは、その……」
ジュンパクはそこで言葉をやめる。
それもそうだ、どう言えば良い?「男の自分が好きか?」など聞けない。
それに女になってもユキと言う人物もいるのだ、今でこそヒロユキにラブラブコールしてるのは男であるからこそ見逃してくれてるのではないか?
様々な考えが次々とジュンパクの頭の中に出てきてパニックになりそうになる。
____そんなジュンパクをヒロユキは撫でた。
「アニキ?」
「……お前が何を言われたか分からないが、今考える事か?」
「!?」
そのひとことだけでジュンパクの目が覚める。
「た、たしかに、ミーとしたことが……」
「……それともう一つ」
「?」
「……【神聖】するんだ」
「え!?」
「え!?」
まさかの提案にジュンパクとツクヨミは似た顔で2人とも鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
「ど、どうしてアニキ!?」
「そ、そうだよ、なんでいきなり」
ヒロユキはツクヨミをチラリとみた。
その目はツクヨミの心を見透かしている様な目__
「…………………貰えるものは遠慮なく貰え……兄さんの言葉だ」
ヒロユキは何かを言おうとしたがそれを隠し一言だけそう言った。