テラーノベル
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煙草の匂いだとわかった瞬間、十二村の方を向く。
煙草…?
なんでそんなものの匂いが十二村から?
朝はしなかったはず。
疑問が俺の中で増えていく。
「?」
「どうしたんすかパイセン?」
俺が見ていることに気づいて、十二村は不思議そうな顔をする。
なんでもないと言いつつ、まだ頭の中は疑問で溢れている。
俺の匂いが移ったのか?と思ったが、そんなわけが無い。
煙草を吸うときは必ず十二村から離れて吸っている。
いくら考えてもそれらしきものは出てこない。
いっそのこと聞くか?
「なぁ、十二村。」
「なんすか?」
「その煙草の匂い、どうしたんだ?」
「え!?まじっすか!?」
そう驚きながら、十二村は自分の服の袖の匂いを嗅いだ。
「うわ、まじっす…。」
最悪だという思いが顔や声から伝わってくる。
にしてもどこでつけてきたんだ…。
2人揃って頭を抱える。
考えていると「あっ」と十二村が声を出す。
「もしかして、並んでる時かもっす。前の人が並んでいる時に吸ってたんで」
吸うなら喫煙所とか別の場所で吸えよ。
そう、思ってしまった。
それなら匂いがうつっても仕方がない。
よくよく考えれば、俺の煙草と匂いが少し違うし、さっきまで十二村は外にいたのだから、そんなことも有り得るか、と納得する。
「家帰ったら風呂と洗濯するっす〜」
「あ、そういえばもうすぐドク□の在庫がなくなりそうっす!!」
「終わったら買いに行くか」
「はいっす!!」
そんな他愛ない会話をしながら仕事へ戻る。
仕事が終わり、十二村と共に家へ帰る。
途中でコンビニに寄った時、外で待っていてほしいと頼まれた時はびっくりしたが、少し外で待っていたらすぐに戻ってきたのであまり気にしないでおく。
コンビニで買ったものを十二村はそそくさとしまい、ソファへダイブする。
疲れた、何もしたくないと言いつつゲーム機に手を伸ばす十二村を見て口元が緩む。
いや、口元が緩むなんてもんじゃない。
小さな笑いが出てくる。
「え、パイセンなんで笑ってるんすか?」
「いや…wなんでもない」
「えぇ〜?それ気になるんすけど!」
身体を起こし、俺の方を向いてそう言う。
嗚呼この笑顔だけは守らなければならない。
改めてそう感じる。
一度だけ十二村が煙草に興味を持ったことがあったが、駄菓子のシガレットで我慢してもらった。
子供に煙草は早い。
いや、まず吸ってはいけない。
十二村、お前だけは吸うな。
そんなことを考えながら、俺はキッチンへ入り、夕飯の準備に取り掛かった。
今日はオムライスにでもしよう。
十二村のは少し辛めのチキンライスにでもしようか。
「パイセーン、おれ風呂沸かしてくるっす」
「あとついでにシャワー浴びてくるっす」
「わかった」
パタパタとスリッパの音を立てながら十二村は、風呂の方へ走っていった。
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