エピソード1 “朧”
「…そこにいるのは」
「誰?」
霞む視界の中で銀の髪が目に入る。
辺りは漆黒に包まれているが不思議な事に暗さは感じない。
「…」
銀髪の少女らしき者がこちらをみる。
彼女がだんだん迫る。
そして彼女の手が視界を遮った。
「私を迎えにきて。それが君のした約束だから…」
その囁き声を彼の耳がとらえる。
(約束…?なんの___)
そこで彼の意識は闇に沈む___
目覚まし時計のうるさい音が頭に響く。
身長はそれほど高くない、髪色は緑っぽいような青色で彩度は低めの男。彼-早乙女 凪は勢いよく体を起こす。
「ゆ…夢か」
朝から変な夢を見てしまった。
白色の光が窓を透り、朝だと言うことを強調している。
髪は整ってるとはいいがたいが彼は気にしない。と言うか整えるのがただめんどうなだけだ。
「朝ご飯、食べるか…」
コンロの火は弱々しく燃え、 目玉焼き焼きの香ばしい匂いが部屋中に広がる。
が次の瞬間
「あ…やっちまったよ..ったく」
黄色の液体が白色を覆う。
「しゃーなし…スクランブルエッグにしちゃうか」
特に目玉焼きを食べたいわけではなかったナギは、それを乱暴に混ぜる。
朝食の準備をし終え、 食べながらニュースをつけた。朝の習慣である。
すると興味深いものが耳に入る。
「えー今朝のニュースです。
*今月、すでに朧市で50人もの行方不明者が出ております。いずれも原因不明で…*」
朝から不吉な予感がする。
「へー、こっわ…」
感情のない適当な言葉を吐く間に、 朝食を食べ終えた。リュックを背負い ドアを開ける。
今日もキーーーと言う具合に扉が高い音を立てた。
学校に行くため
自転車に乗って凸凹のあぜ道を走っていると
「おーい、なぎくーん
私も乗せてってくれよー」
明るく、中性的な声が飛んでくる。
振り返ると紫がかった黒髪、紫紺の瞳をもつ少女が手を振りながらこちらへ向かってきた。
「なんだシオンか」
ソシャゲで10連して爆死した時なみの遺憾のを感じながらため息をついて言った。
「なんだとは失礼だな、なんだとは!」
彼女はハムスターのごとく頬を膨らませ、ご機嫌斜めなご様子だ。
「なんでお前を乗せないといけないんですかー」
少し嫌味ちっくに言ってやった。
「いいじゃん、か弱い乙女を救うと思って」
彼女は強引に自転車の後ろリアキャリアに尻を置く。
(どこがか弱い乙女だよ…)
そう思ったがグッと言葉を飲んだ。
下が凸凹しているためか、自転車がやけに揺れる。
「そうやーさ
昨日ゲーム漁ってたらさー
おもろいのなの見つけた」
「へーどんなの?」
いつものように適当に返事をする。
「なんか…異世界?に飛ばされてそこから脱出するゲームでさー
その世界のボスを倒したら脱出できるんだけど、実はステージによって隠し脱出ルートが___」
「へー」
彼女の声に被せて言った。
この手の話の時に主導権を握らせると永遠に喋りやがる。
「お前さ、なんて言うの、変なのというか、独特なの好きよね」
また適当なことをいう。面白く無さそうと言う感想を持ったのは、さておき、どこで見つけてたかの方が気になる。
「今、変なの言ったな!」
彼女はゲームオタクのためか、変と言われ、否定されたためかその言葉に少し苛立ちを感じた。
「ごめん、ごめん」
彼女に視線をやったその時
自転車の後ろに銀髪の少女がそこに乗っているのが確かに見えた。
シオンでない誰か…….
少女と会話してる光景がほんの僅かに流れ込んできた。いや呼び起こされたと言った方が適切なのだろう。
少女は俺に向かって何か言っている。
まるで水の中にいるのように音がぼやける。
少女は笑顔で語りかけているが 霞んで内容がわからない。
眩しい笑顔だ…太陽のように___
この時、これが自分の記憶であることに気づけなかった。
全身の力が抜ける。
自転車が動きを止めたことにより激しく揺れ、彼女は放り出される。
「ってー
急に止まってどうしたんだよ」
「…」
ナギは自転車が止まった時の衝撃のせいか、前屈みになっている。
かろうじて立っているだけの力は残っているようだった。
「おーい、もしもーし?聞こえてる?」
自転車の前に回り込み、うつむいた俺の顔をシオンが覗き込んだ
「…お…おい…
大丈夫か?体調悪かった?」
返事はない。
「…何も言わないとチューしちゃうぞ」
「…….」
「本当だかんな!」
彼女は顔を近づける。
「…」
意識がこっちに戻ってきた。
画面いっぱいに彼女が映る。
ナギの瞳孔は目一杯に開く。
「おい!」
ナギは彼女を無理やり引き剥がす。
「何?照れてんの?
顔、赤いよ?
なんか期待しちゃった?」
嘲るように言葉を放つ。
「あんなことされたら
誰でも照れるだろ!バカ!
あと何も期待してねーから!」
「へー、そう」
彼女は目を逸らしながら返事をした。
声のトーンが一段低いような気がしたが気のせいだろう。
「ささっと学校行くから乗れ」
「へいへい」
彼女はどこか残念そうだったが、理由は知らない。
ナギは再び自転車を走らせる。
道中、ひまわり畑を見かけた。
お天道様に照らされ元気に並んでいる。
ここで一つ思い出らしきものが蘇る。
(ひまわりの種を一つずつ取って、一緒に集めてお店屋さんごっことかしたっけ…)
(誰とだっけ…シオン?…違う気がする)
(誰だ…っけ?まあいいか)
細かいことを考えるのは性に合わない。
キーンコーンカーンコーン
チャイムの音が廊下に鳴り響く。
「あっぶねーセーフ」
ナギは教室に滑り込む。
「セーフじゃありません」
この三十代半ばの教師はクラスの担任
吉川ことヨッシーだ。
「ヨッシーのくせに…こまけーなー」
「誰が某ニン⚪︎ンドーのキャラだっ」
「…まあ今回はセーフということにしましょう、早く席に_」
そう言おうとした時、廊下にうるさい足音が響く。
「ナギー…待っておくれよー
階段ダッシュは足がやばいって…」
息を切らして今にも倒れそうなくらい疲れた顔をしてる。普段の運動不足が足を引っ張っている。
「…」
教室が静かになった。少し間が空いた後に
「お前はアウトな!」
吉川先生と俺が同時に声を発する。
「先生ー頼むよー今回だけ…」
小動物のような目で見つめて言った。
「ダメだ!毎回そうやって…あ、そうだ
ついでにナギも職員室言ってこい」
「え!?なんで?俺はセーフじゃ…」
「やっぱアウトで」
「ま、マジすか…」
ナギは従うしがなかった。
裏庭の橘の弁が一枚ひらひらと舞うのが見えた。
おまけ①(作者のぼやき)
読んでくれた少数民族のみんな…ありがとう!
次もお楽しみに!
こう言う創作出すの初めてだからへたっぴかもしれないけど多分だんだん良くしてくのでよろしく!
2話目もそのうち(不定期)公開しますが毎回こんな感じで雑談チックにおまけを書いていこうと思うので質問等をコメントしてくれたらこのコーナーで答えます。よろしく( ・∇・)
最低、月一では投稿するのでよろしく!
最近、本場の浜松餃子を食べにいったんですけど、いつも家でやる冷凍のやつとは一線を画したうまさでした!なんか、小籠包を思い出させる様なあの肉汁…おそるべき…本場!
浜松に行ったら是非、餃子を食べてみてください、とぶぞ(?)まあそんな感じで…
お終い!
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