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「兄さん…。兄さん……。」

ぐったりとした体は、自分であるのが信じられないくらい言うことを聞いてくれない。無抵抗の俺の体を支えてくれた弟、アンドリュー・ラファエルは、ずっと耳元に何かを囁いている。俺は唯一動かせる唇をゆっくりと開いた。

「ラ…ラファエル……。俺は…何を……。」

突如起こったことを整理するのに時間がかかる。

兄さんと呼ばれる俺、アンドリュー・イアンは、18歳になったラファエルを学園の同室で迎えいった。随分と久しぶりに会ったのだ。見惚れても仕方ない。流されるまま椅子に座らされ、大きくなったラファエルに感動しながら目の前に出された茶を1口飲んだ。瞬間、手先が小刻みに震え出した。

ガシャンッ

大きな音を立ててティーカップを落とすと、力が入らなくなり前かがみになる。

「…ああ、兄さん。可哀想に。」

(…?)

ラファエルは兄が痙攣しているのにも関わらず、まるで何が起こるかを知っていたかのように平然としていた。

「…ラ、ファエル…?」

混乱する俺を、ラファエルは抱き抱えた。

「兄さんが俺から離れようとするからだ。俺以外に優しくするなんて、許さない。」

何を言っているのか分からない。お姫様抱っこのような格好で 運ばれた先は、ラファエルのベッドと見えるものだった。

「うっ…。」

ゆっくりとベッドに寝転ばされ、スムーズに手首を締められる。恐らく両手をカーテンの布か何かで縛られたのだろう。かなり頑丈であり、力が入っていない俺には尚更抜け出せない。

「何…して……?」

「兄さんが俺から逃げ出さない様にだよ。」

そう言うとラファエルはニコリと笑い、俺の顔をそっと撫でた。


「もう離さないから。」

弟に何故か執着されている。

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