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(岩本視点)
もう、全部我慢しなくていいって思ったら、ちょっと楽だった。
さっきまでは、できるだけふっかを傷つけないように、言葉を選んでた。
でも、もう必要ない。
全部教えてやるよ。
俺の思ってること、全部。
嫌って言っても辞めない。
聞きたくなくても、無理やりに聞かせてやる。
俺にここまでさせたのは、お前だかんな?
「…ひか…る…?痛いよ……」
ふっかを抱きしめる力が自然と強くなってたみたいで、ふっかが少し苦しそうにする。
それすらも愛おしいんだ。
「ふっか、さ…俺の事なんだと思ってるわけ?」
「……ぇ…?」
少し、怒りが声にでてたんだろう。
ふっかが少し震える。
怖がらせたかな?
でも、それでいい。
今のお前には、この強引さが必要なんだよ。
だから、全部さらけ出す。
俺の全てをお前に伝える。
何も隠さない。
「最後まで、責任もって聞けよ。」
命令みたいに、厳しく言う。
ふっかの瞳が揺れる。
やっぱりそうだ。
こっちのがふっかに届く。
俺は、ずっとお前のことが大事だった。
だから、綺麗なとこだけ見せ続けてきた。
お前、そんなに長く隠してるけど、傷つきやすい性格だろ?
傷つけたくなかったから、言わなかった。
俺は、お前の偽物の笑顔が”大っ嫌い”だよ。
最初に、仮面の笑顔をつけてることを知った時、気持ち悪いってすら思った。
誰かに好かれようと、必死に笑顔を振りまいて、サポート役に徹するお前を、俺は理解ができなかった。
式神使いって能力があるから余裕こいてるウザイ奴だと思ってた。
これが、お前と相棒になる前の俺。
俺は、最初お前が嫌いだった。
お前と相棒になってから思ったこと。
“可哀想だな”。
これが1番だった。
そうやって笑顔でいないと、自分が耐えきれなくなる。
だから、笑ってる。
そんなお前を見て、本当に浅ましいって思った。
悪いけどさ、お前の仮面の笑顔、気づいてるやつ全員お前のこと気持ち悪いって思ってるよ。
でも、俺はお前と一緒にいる道を選んだ。
それは、本当に気まぐれで…
なんか、放っておけない気がしたから。
お前は、優しすぎる。
優しさゆえに、苦しみ続けた。
それも、わかってんだよ。
お前は、優しすぎるせいで自分を殺した。
誰の役も奪わないように。
ニコニコニコニコ、後ろで笑いながら。
じゃあ、お前はそれで何を得た?
それで、お前の中の何が成長した?
お前が変われなかったのは、能力も理由の1つにあるよ。
でも、その理由はちげぇだろ。
お前は、本当に変わる努力をしてたのか?
そこで、一旦言葉を区切る。
「……っ…ぅ…っ……ふっ…ぁ……」
ふっかが、俺の中で震えながら呼吸を乱してる。
さすがにやりすぎかとも思う。
あえて、ふっかを傷つける言葉を使ってる。
でも、全部俺の本音だよ。
だから、受け止めてよ。
最後まで。
俺が、お前と一緒にいることを選んだ理由。
お前を1人にさせたくなかった。
ほんとに、それだけだよ。
深い理由とかもない。
お前は、俺がいないとなんも出来ない。
俺の中で、そんな確信があった。
それに、ふっかは俺に対する態度が少し違うことも知ってた。
それに対して”優越感”があったんだ。
誰でも気持ち悪い笑顔を振りまいてるお前が、俺に対してはちょっと違うっていうのが。
お前に対する嫌悪感が消えたのは、名前について触れてくれた時だよ。
あの時、初めてお前の優しさの本質に触れた気がした。
今まで気持ち悪いって思ってたやつが、急に変わったんだよ。
優しすぎるゆえに、気持ち悪い役を演じてる、っていう風に。
その時から、俺はとっくにだめになってたんだ。
もう、ふっかが隣にいない生活なんてありえない。
お前の言葉は、それくらい大事なもんなんだよ。
そこから、俺の全部が狂った。
お前のせいで、狂ったんだよ。
お前の笑顔を見る度に、幸せになれる。
お前が辛い時は支えてあげたい。
一緒にいたいんだ。
隣にいるだけでいい。
それだけで、俺は救われる。
責任、とってよ。
俺の人生を狂わせた責任。
お前に対しての、醜い感情が消えないんだよ。
優越感、嫉妬、独占欲…
俺の中の醜い感情。
お前のせいで、生まれた感情。
全部、ふっかのせいだ。
ふっかと出会ってなければ、こんな感情なんて知らなかった。
今になったら、お前が隣にいないとなんも出来ないよ。
ふっかが奪われて、改めて思った。
俺は、ふっかっていう理由がないと、何も出来ない。
ふっかが、消えたいって思ってるんだったら、それでもいい。
俺が隣で、支えるから。
それでも無理で、しんどかったらさ…
どっかで一緒に死のうよ。
ま、そんなことさせないけど。
ふっかの空っぽの心が埋まんなくてもいいよ。
俺が、ずっと注いであげるから。
こぼれ落ちても、また新しいのをあげる。
これなら、空っぽの状態は続かないでしょ?
孤独だって感じさせない。
俺は二度とふっかから離れる気なんてない。
こっち来んなって言われても、ぜってぇ離れてやんねぇ。
綺麗な救い方じゃないよね。
俺もそう思う。
でも、それでいい。
お互い、汚れて、醜いじゃん。
だから、こんな救い方でも許してよ。
一緒にいる理由なんて、なんでもいいじゃん。
一緒にいたいって思うのが大事なんだから。
嘘でもいい、空っぽでもいい。
これを、狂ってるって思うかもしんない。
それでもいい。
俺とふっかだけが、歪んだ関係を”幸せ”って感じれるなら、いいんだよ…
それが、共依存だとしても…
俺は、ふっかといられれば幸せだから。
周りの全てから否定されてもいい。
せめて俺らは、幸せだねって笑ってようよ。
否定の中心に、2人きりで立ってさ。
(深澤視点)
ほんとに…狂ってる……
歪みすぎてんじゃん…
そうか…
俺も、お前のこと全然知らなかったみたい。
俺も、照の内側には触れようとしなかった。
それに、全然気づかなかったよ。
お前も…醜いね。
そんで、歪んでる。
なに、その愛情?
もはや、こえーって……
でも…さ
「……照…」
照の名前を、呼んでみた。
照の目は、すんごいギラついてて…
もう理性なんかないみたいだ。
初めて見る、照の表情。
俺も、歪んでるよね…
そうだよ。
俺は、きっと照がいないとなんもできない。
知ってる、知らなかった、知りたくなかったなぁ…
照の、醜い感情と、歪んだ愛情。
俺の、醜い感情と、歪んだ心。
似てるのかなぁ?
いや、全然違う。
同じ感情でも、こんな違う。
むしろ、お前の方が重いじゃん。
なんだよ、早く言ってよ。
笑えてくる。
本当に、笑えちゃうよ。
「……ひか…る…ひかる…」
涙が、溢れてきちゃうよ…
こんなの、救いじゃねぇ…
歪んでる、狂ってる…!
こんなの、ヒーローじゃないね…
こんな救い方、どのテレビでも放送できないね。
ダークヒーローでも、ここまでしない。
ほんとに、狂ってる。
俺も、お前も……
だから、すごい安心する。
溜まるのは、気持ち悪いじゃない。
“安心”が溜まってく。
この世界で、俺と照が2人っきりになったみたいだね。
俺が泣いてるのに気づいたのか、抱きしめる力が強くなる。
俺も、照の背中に手を回す。
照に負けないくらい、強めの力で。
俺だって、お前を離す気なんかない。
お前と、一緒にいたい。
まだ、消えたいって感情は消えない。
でも、照は一緒に死んでくれるんだね。
すごい嬉しい。
俺は、幸せな気持ちで死ねるね。
だけど、照にはまだ生きてて欲しいから、俺もまだ死ねないかな。
「……ふっか…」
「照…」
お互い、顔を見合せて名前を呼ぶ。
幸せだな。
照も、そう思ったんだろうね。
柔らかく笑ってくれる。
照の前だと、もう隠さなくていいんだ。
笑顔も、醜い心も、全部さらけ出していい。
照が、見せてくれたから……
だんだん、意識が散漫になってくる。
きっと、この空間はもう壊れる。
それでも、俺らは笑い合う。
もう、1人じゃないから。
抱きしめ合いながら、もう離さないって…
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