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36話 秋新聞より129スポット、海底石が見つかる
朝。
テーブルの上。
折られた秋新聞。
紙は少し厚く、
角が丸くなっている。
リカは、
少し長めの上着を羽織り、
椅子に浅く座る。
髪は結ばず、
肩にそのまま落ちている。
指先で、
紙をめくる。
音は、
乾いている。
見出し。
大きすぎない文字。
129スポット
海底石、発見。
一瞬で、
目に入る。
港。
旧団地。
寂れたショッピングセンター。
かつての名前。
胸の奥が、
少しだけ詰まる。
そこは、
もう住めない。
でも、
消えたわけじゃない。
写真。
水面。
作業用の船。
知らない人たち。
知らない用途。
「へえ」
声は、
小さく落ちる。
喜びでも、
悲しみでもない。
ただ、
番号が続いていること。
終わったと思っていた場所が、
別の役割を持つこと。
リカは、
腰元に手をやる。
電子マネーと、
お守り。
少し重い。
「まだ、
あったんだね」
誰に向けるでもなく、
言う。
新聞を畳む。
紙の音が、
部屋に残る。
窓からの明かりが、
紙の上を滑る。
129は、
もう帰る場所じゃない。
でも、
番号としては、
まだ生きている。
それだけで、
胸の奥が、
少し落ち着いた。
リカは、
立ち上がる。
今日の予定へ、
戻る。
新聞は、
そのまま置かれる。
129の文字だけが、
静かに残っていた。