今回は少し時間を遡り、新一年生の入学式から数日後で、雨花、桃時、兎白が三年生、橙、瑠璃人が二年生に進級して少し経ったある日のこと。
???「あんた結構学校サボってたのに、よく進級できたね……」
???「不思議だねぇー」
???「いや他人事みたいに言ってるけどおめぇのことだぞ」
???「全くサボっちゃダメですよ?」
???「頭は悪い方じゃないのにもったいないぞ」
「雨花」、「橙」、「桃時」、「兎白」、「瑠璃人」は、一年生たちの入学式から教室に戻るところ。
瑠璃人「そういえばあいつ無事入学できたかな?」
雨花「あいつ?」
橙「誰かお知り合いでもいるんですか?」
瑠璃人「あぁ、妹がいるんだよ」
桃時「え!?そうなの?あんたの妹って……どんな性格なのかしら?」
兎白「何となく明るいイメージがあるが……」
雨花、橙、桃時、兎白は瑠璃人の妹を想像する。
瑠璃人「どんな奴か、か……うーん、超ガリ勉?」
桃時「が、ガリ勉?」
瑠璃人「妹とは腹違いの兄妹で、オレは大暴れしたから自由の身になれたんだけど、あいつは本妻との子供だからずっと当主になるために勉強やら作法やら徹底的に教え込まれてた。あまりにもそのやり方が酷くてさ。だからうちが引き取ったんだよ。その時もすんげぇ揉めて警察沙汰になっちゃって……今あいつの母親にはあいつとの接近禁止命令が出てる。まぁそれほどやばい母親なんだよ」
橙「…………そうですか」
桃時「(橙には……痛いほど分かるでしょうね。その妹さんの気持ち……)
兎白「その母親のことその妹さんはどう想ってるんだろうな……」
雨花「わたしなら……寂しいだろうな。沢山沢山頑張って頑張って続けてるのに、一番理解して欲しかった人に理解しようとすらされないのは……辛いよ。そして、とても淋しい。それに、いくらお母さんと離れられても、家庭環境が変わっても、傷は残り続けるからね。それが大切な人から傷つけられた人からなら尚更。」
瑠璃人「あいつ……オレが雨花たちの話するとすごく楽しそうに聴いてくれるんだ……!だからオレたちがいるこの学校で楽しく過ごして欲しいなって想う!」
雨花「あっじゃあさ!今から妹さんみに行こうよ!まだホームルームまで時間あるし!」
兎白「俺は別に構わないが……」
橙「私も良いですよ」
瑠璃人「オレも!行く行く!」
桃時「アタシも別に良いわよ」
そして、雨花たちは瑠璃人の妹に会いに行くことになった。
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桃時「あの子ね。目が瑠璃人似てるわね」
橙「可愛らしい人ですね」
兎白「そういえば名前なんて言うんだ?」
瑠璃人「あぁ名前は……」
「「海音です」」
桃時「でもあの子ずっと下向いてるわよ?」
橙「俯いてますね……」
兎白「周りの空気も暗いな」
瑠璃人「あいつ人見知りだからな……中々人に心を開かないんだよ……」
「あの変人だらけの生徒会また何かやってる……」「なんかこの光景俺見たことあるぞ?」「前にも同じことやってたの?おかしな人」「なんか怖いな」
周りになんだかんだ言われているが、橙たちの耳にはきこえない。
桃時「そうなのね……ってあいつは?!」
橙・兎白・瑠璃人「え?」
気がつくと、雨花がいなくなっていた。
橙「人が大事な話してるのに!!もう……」
桃時「次会ったらとっちめてやるわ!……こうやって……」
雨花「えぇ〜それは勘弁してよ〜」
橙・桃時「雨花さん・雨花!!」
兎白「お前どこ行ってたんだ?」
瑠璃人「誰だ?その子」
雨花「この子は……」
「「紅緒ちゃん!!」」
桃時「紅緒ちゃん?」
紅緒「こ、こんにちは!紅緒です!」
「紅緒」は挨拶をした。
橙「こんにちは。私は橙です」
桃時「アタシは桃時よ」
兎白「兎白だ」
瑠璃人「瑠璃人でーす」
紅緒「わざわざご丁寧にありがとうございます!私は紅緒です!」
橙「ふふっ」
桃時「うふふっ」
紅緒「な、何でしょう?」
橙「あぁすみません。先程も自己紹介していらしたので……ふふっ」
桃時「そんなに慌てなくて大丈夫よ」
紅緒「え!?すみません!!!!」
橙「いや大丈夫ですよ」
桃時「アタシも平気」
紅緒「あぁもう……私ったら……」
橙・桃時「…………」
「「何この子可愛すぎ!!!!」」
雨花「あはは!この二人なら紅緒ちゃんのこと大切に想ってくれるよ!……それでね。紅緒ちゃんに頼みがあるの」
紅緒「頼み?」
雨花「あそこの席に座ってる海色の髪の女の子いるでしょ?」
紅緒「あぁ確か海音さんでしたっけ?同じクラスなので知ってます」
雨花「そうそう。あの子に話しかけて欲しいの」
橙・桃時・兎白・瑠璃人「!」
雨花「あっもし話しかけるのに勇気がいるならわたしを通しても良いし、海音ちゃん入学してからずっと独りなんだ。友達になれとは言わない。でも、何となくで良いから近くにいて欲しいんだ。少しで良いから話しかけて欲しい。沢山の人の中から自分を選んで話しかけてくれるのはとっても嬉しいことなんだ。だからお願い」
雨花は頭を下げる。
瑠璃人「雨花……」
紅緒「そ、そんな!顔を上げて下さい!雨花さんの気持ち。わかりました!話しかけてみます!」
紅緒は海音に近づく。
紅緒「あの……海音さん!こんにちは!」
海音「…………?」
紅緒「あのどうしていつも俯いてるんですか?あっ言いたくなかったら良いんですけど!」
海音「話すようなことないから」
紅緒「じゃあ私が質問するので、応えてくれませんか?言いたくないことは言わなくて良いので!」
海音「別に良いけど……」
紅緒「何か部活に入る予定ありますか?r
海音「ない」
紅緒「好きな教科は?」
海音「ない」
紅緒「好きな食べ物は?」
海音「…………かき氷」
紅緒「かき氷ですか!美味しいですよね!何味が好きなんですか?」
海音「ブルーハワイ」
紅緒「おぉ!私はチーズ味が好きです!」
海音「ち、チーズ?」
紅緒「はい!チェダーチーズが大好きです!一度食べてみて下さい!」
海音「絶対嫌」
紅緒「えぇ〜でもでも!本当に美味しいんですって!」
海音「変なの。ふふっ」
兎白「何か仲良くなってるな」
瑠璃人「マジか。海音が少し笑ったぞ?」
桃時「チーズ味のかき氷なんて美味しいの?」
橙「さ、さぁ?」
「でも、」と橙は話を続ける。
橙「話し相手なら私たちでも良かったのでは?どうして紅緒さんに?」
雨花「わたしたちはクラスも学年も違うから、話し相手になるには離れすぎる。だから同じクラスの紅緒ちゃんの方が適してると想ったの。わたしたちの友達だから海音ちゃんに何かあってもすぐ教えてくれるかもだし」
桃時「それもそうね」
瑠璃人「仲良くなりそうで良かった。これならオレが毎日クラスに通いつめることもないし、ひとまず安心だな」
橙「あなたそんなことするつもりだったんですか?」
兎白「それは逆に負担を与えるからやめた方が良い」
瑠璃人「すみません……」
雨花「あはは!じゃあそろそろクラスに戻ろうか」
こうして、雨花たちはクラスに戻っていた。