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29 - 第29話*演技派彼氏と雨の記憶*17

2025年07月18日

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半年前からバイトをしている、このカフェ「アンジュ」は朝の七時から夜十時までオフィス街の一角、その中にある古い商業ビルの一階で営業をしている。

その為忙しいのは平日のモーニング、ランチタイムだ。

定休日はまわりのオフィスに合わせて日曜日。

モーニングは航平と、航平の父であるオーナーが。

柚はその後九時から出勤し、ランチタイムが終わると休憩を続けて二、三時間貰う場合もあれば何度かに分けて休ませてもらう時もある。


が、基本営業が終わり掃除をして夜の十時半頃に帰るのが、なんとなくいつもの流れ。


「天野さん、もっと早く帰ってもいいんだぞ」

「いえいえ、今はとりあえずたくさんこのお店で働きたいので!」


力んで拳を作り応えるけれど、航平は、うーん、と。なおも悩む素振りを見せる。



「……もう1人雇うか考えてんだけどな。 いやでも親父の復帰も近そうだし、どうするかな」


考え込む航平に、今度は優陽がカウンター席に座ろうと床に固定されたイスを軽く回転させつつ言った。


「おじさん、腰だいぶ良くなった?」

「ん? ああ、まだ長時間立ってるのが無理みたいだけどな」

「そっか、ならよかった」


二人がカウンターとレジ前という五メートルほどの微妙な距離感で話すのを眺める。


そう。

もともとは、航平とオーナーである航平の父が二人でまわしていた店なのだ。

柚は腰を痛めてしまったオーナーのピンチヒッターでもある。

まあ、人手不足なので復帰後もクビになる予定はないそうなのだけれど。


「おう、また親父にも顔見せてやれよ……っと」


会話が途切れて、航平がポケットからスマートフォンを取り出した。


「なに? 女?」

「うるさいぞ」

「ははは、まあ、この時間に着替えてんだから、そっか」


特に楽しくもなさそうに、わざとらしい乾いた笑いを出す優陽。

その視線がキッチンにいる私に向けられた。


「柚、まだ着替えてないね。 航平、彼女に鍵渡してあるんでしょ?」

「ん? ああ、時々閉めて帰ってくれてる。 俺が早く上がる時とか」

「ははは、女と遊ぶ時ね」


だからお前は、と。 言い返す航平の声を遮って。


「俺と柚で閉めといたげるから、早く行けば?」

「いや、着替えくらい待つけど」

「え? 航平に合わせて急がせなきゃダメなの? 柚を?」


航平はレジの売上金を袋に入れながら、呆れたように眉間を寄せた。


「へーへー、二人きりにしろってか。 まあ、いいよ」


繰り広げられる会話を優陽と航平。二人を交互に目に映しながら聞いていると航平柚へと声をかけた。


「天野さん。悪いな、俺先に上がるけど。 あと入口閉めてシャッターおろして貰うだけだから」

「はい、いつものとおりにやっておきますね」

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