テラーノベル
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「尊くんを本当に愛しているのは俺なんだよ……ッ! お前さえいなければ尊くんは俺の元に……!!」
狂乱した叫び。
それでも、俺は一歩も怯まなかった。
手のひらから伝わる尊さんの温もりを信じて、逃げることなく、まっすぐに相手の瞳を見据えて言葉を叩きつける。
「……違う」
俺は一度、深く、ゆっくりと息を吸い込んだ。
それは逃げるためでも、怯えを隠すためでもない。
自分の意思を、一言一句違わずにまっすぐ届けるためだ。
「俺がいなくなったら尊さんがあなたのところに戻るなんて……そんな都合のいい話、どこにあるんですか」
成田の顔を射抜くように見つめたまま、静かに、けれど断固とした口調で続ける。
「あなたは〝捨てられた〟って顔をしてます。けど、尊さんを大切にしなかったのは、あなたの方ですよね……」
「……は? お前になにが……」
「お金だけ使わせて、搾取して、挙句の果てにはフォークという第二性だけを見て尊さんを予備殺人鬼扱いし精神的に追い込む。……それは、恋人のすることじゃないと思います」
核心を突いた一言。
成田の眉間がピクリと跳ね、動揺が表情の端々に滲み出た。
「それでも……っ、!受け入れたのは尊くんだ。何も知らないくせに……出しゃばってくんなよクソが……っ!」
成田の瞳が、激昂と困惑の間でわずかに揺れる。
「……出しゃばります。尊さんのことなら、いくらでも出しゃばります……!」
「……第一、過去のことで縛って、逃げ道を塞いで……それで一緒にいさせた関係を、愛だなんて呼ぶんですか」
「うるさいうるさいうるさい!! これが俺の愛なんだよ!! 恋人なんだからなにしたっていいんだよ!」
叫ぶ成田に対し、俺はむしろ自分でも驚くほど落ち着いていた。
頭の芯が冷えていく感覚に近かった。
「……恋人なら尚更、相手の人生を狭くすることはしないです。そういうのは……ただの、自分のことしか考えてないワガママじゃないんですか」
声の震えはもう完全に消えていた。
左手の指に力を込め、隣に立つ尊さんの存在を確かめる。
この温度こそが、俺の勇気の源だった。
「尊さんのこと、人としてなにも知ろうとせずに、ただ利用してたのはあなたじゃないですか……っ」
最後に、俺ははっきりと言い切った。
「お願いですから、 これ以上、尊さんの人生に踏み込まないでください──」
静かな拒絶。
それが成田の歪んだプライドを徹底的に煽り、決定的な逆鱗に触れてしまったらしい。
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