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「、、、見つからない。冬紋がない!」
冬紋がある、いや、冬紋があったはずの所に来てかれこれ30分。雑草を掻き分け、岩を動かし、木の上にまで登った。
「なんでないの!寒いんだけど!」
「でも、寒いってことは冬の精霊の影響を受けているなので、冬紋は近いはずなんですけど、、、」
精霊の紋の近くにいると、その季節の影響を受けるからだ。
探し回っていた時、上空から声が降ってきた。
「冬紋は閉じました。粉雪芽様は話されることをお望みではありません。お引き取りください。」
青い巫女服を風にはためかせながら、声の主、冬斬冴は降りてきた。
「ビンゴ、ほんとにあんただったのね。」
「久しぶりね、雪。あったのは何年前かしら。」
凍てつく瞳を濁らせ、雪を睨め付ける冴に、雪はまるでなんでもないように言う。
「さあ?五年くらいじゃない?」
「そう、そんなに経ったのね。それより、どうしてここへ来たのかしら。」
服の裾をパッパとはらいながら、冴は尋ねた。
「分かんないの?、秋がなくなったのは、冬の精霊のせいでしょ。」
「粉雪芽様にはお考えがあるのよ、異論は認めないわ。」
「そのお考えとやらを説明してくんねぇかなぁ」
あまりの暴論に口を挟むが、ギロリと睨まれるだけで、答えは返ってこない。
「冬紋を開けて、今すぐに。あまり手荒なことをさせないでよね。」
挑戦的に輝く雪の瞳を覗き込み、冴は煩わしそうに舌打ちをした。
「悪いけれどそれは出来ないわ。粉雪芽様は冬紋を開くことを望んでいない。」
「そんなぁ、、」
凛が悲しそうな声を出して項垂れるが、雪はまるで動じずに、言い放った。
「なら、こうするだけよ」
雪は手を冴にかざし、何やらボソリとつぶやいた。全員の目が雪に向かったその時だ。
「!?」
冴の体から青い影が引き出され、雪の手に集まっていく。
「どう?このくらいで冬紋が開くかしら」
バスケットボール位の球体になった青い影が、雪の手の中でてらてらと光っていた。
「お前そんなことできたのかよ、、、」
「そうね、圧倒的な力の差が相手との間にある場合しか出来ないけど」
ニヤニヤと冴を見つめながら答えた雪。
「ふざけないでよ!そんなわけない!」
冴の叫びを無視して、空に影を放った雪は、現れた冬紋を見て
「あたり」
と呟いた。
「待ちなさい!」
俺たちを掴んで冬紋に飛び乗った雪を追いかける冴を視界に入れることもできず、一行は死氷の洞窟へと到着した。