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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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そこには絶世の美女がいた。

「ふぅ。こんなものかしらね?」

美女の前には真新しい家が建っていた。

「久しぶりの大工仕事だったから、感覚を取り戻すのに時間が掛かったわね」

美女はそういうが、建物は周りとのコントラストと絶妙に調和の取れたある種の芸術品の様であった。

もちろん使える芸術品である。

そんな一枚の絵画の様な家に、躊躇なく足を踏み入れた。

「中も綺麗になったわ。以前と同じ様にしようかと思ったけど、やっぱりその時感じたデザインが全てね」

思い出はいつも心にある。

そして美女は新しいもの好きらしい。

「ミルキィは上手くやれているかしら?レビンくんがいれば大丈夫よね。あの二人は一人ずつだと危なっかしいけど、二人ならどこまででも行けそうだわ」

はぁ。

ミルキィの母であるレイラは、ため息を一つ落とした。

「…また独り言ね……ここに初めて来た時と、私は何も変わってないわ……」

『つまり若い時のままねっ!』ポジティブに心の中で納得したレイラは、夕食の準備へと取り掛かった。



ザシュッ

『グギャオオ!?』

「さっさとやられなさい」

レイラの魔法を喰らい、悲鳴を上げた体長2.5メートルは悠に超える鬼の顔をした魔物へと、吸血鬼は追撃の手を緩めない。

ヒュンッ

レイラが腕を振り不可視の魔法を飛ばせば、魔物の頭部が胴体と切り離された。

「やっぱり馬鹿な魔物には、風魔法が効果覿面ね。少しでも魔法の素養があれば避けれるのに出来ないのだもの」

レイラはオーガの血を容器に移しながら戦いの感想を述べた。

「あの子にも魔法を教えていれば良かったかしら?

ううん。あまり過保護になってもダメだし、魔法の素養が人族と違うだろうから怪しまれるわ」

これで良かったのよ。と、締めくくると、血抜きを終えた魔物の死体を焼却した。

ダンジョンでは魔物が時間で消滅するがそれ以外では残ってしまう。

まともな…真面目な冒険者であれば、魔物の死体の処理は怠らない。

しかし、大多数の冒険者が街や村のそばでなければ必要な(売れる)部位以外は、面倒なのでそのまま放置しているのが実情でもある。

そして、レイラは真面目だから焼却しているわけではない。

魔物の死体を処理しなければ、そこを餌場だと考える魔物が集まる。後の面倒事を避ける意味で処分しているのだ。

これはレビン達の故郷の村でもそうしている。

魔物の死体は魔物を呼ぶ。

この習性を利用した戦法は、遥か昔から人族の間では使われてきていた。

もちろんレイラもその知識があり、エルフとダークエルフの戦争でもダークエルフ側が度々使ってきていた。

閑話休題。

レイラはその知識のお陰で魔物の死体をしっかりと処分しているのだが……

「私は血だけでいいのよね……無駄が多過ぎるわ」

あれだけのサイズの魔物だ。ほんの少しの新鮮な血液のみしか採取…使う事がないレイラにとっては無駄が多く、スマートではないことを嘆いた。

200年以上の時を生きるレイラにとっては、学ぶ事以外で大切な事は効率である。

効率を求めて生きる事が“美しい”と考えているのだ。

自身のアイデンティティである美しさ。これに磨きをかける事に余念は無い。

「でも効率の中の無駄もまた、美しかったりするのよね…」

……こういう所が少し人族臭かったりもするレイラであった。


レイラの1日のルーティンは整然としている。

まず朝日と共に起きる。もちろん美容の為だ。

朝食はバーンナッドからの知識で森の野草のサラダで済ませる。もちろん美容の為だ。

朝食後は、以前住んでいた時に埋めておいた書物の中から、人族の著名な詩人が書いた詩集を読む。もちろん…美容の為だ。

間食に森で採取した果物を食べる。もちろん……

昼食は朝食と同じ物を。もち……

間食に果物……

夕食前の運動に森の散策に。も……

夕食に、散策時に仕留めた新鮮な魚、又は動物の肉を食べる。

夜食に果物を……

寝る前に、1日で食べた果物の皮や種子を使った自家製のパック。もちろ……


「今日も美しさに磨きが掛かった1日だったわ。早く迎えに来ないと美の女神になってしまうわよ?バーン」

今は離れて過ごす夫へと言葉を投げかけて眠りにつくのであった。



「おかしいわね……私以外の足跡があるわ…」

ある日。いつもの様に森の散策へと出掛けたレイラは、自身のものではない足跡(靴跡)を発見した。

「どう見ても昨日以降に付けられたものだわ。足跡の大きさや深さから見て……身長170~175くらいね。体重は…おデブさんね」

靴のサイズに比べ、足跡の深さが深かったようだ。

「敵でもそうじゃなくても関係ないわ。私達の住処に土足で踏みいった無法者には罰を与えないとね」

レイラはその美貌に不敵な笑みを浮かべると、自身の身の危険に繋がる可能性を排除するために足を向けた。

自身の強さを凌駕する存在。恐怖の魔王が降臨しているとはつゆ知らず。


混血の吸血姫と幼馴染の村人

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