「 あ 〜!! 菊だ 〜 !!
おはよーー!!! 」
校門に着くと向こうの方から私の名を呼び大きく手を振るフェリシアーノくんと、
そんなはしゃぐ彼をまるで保護者のように見守りながら見届けるルートさん。
私は軽く頭を下げてにこりと頬を上げた。
「おはようございます 。」と返すと彼らは優しく微笑んだ。
「おい、俺には挨拶もなしかよ、?」
「わ!あ!!ごめん!!」
2人にはアーサーさんが見えていなかったようで、
必死に謝るフェリシアーノくんは挨拶を急いで交わした。
彼は 、 教室まで着くと、今日の予定表を見た。
「… 今日は …… 持久走 、??」
「 … そうですね、」
「 …… はぁ 、めんどくせぇなぁ、、」
「ぁ、あのッ 、」
「え。」
「菊はダメだ。もしその体に何かあったらどうするんだ。」
「…はい 、わかってます。」
「ん。いい子だ。」
彼はぽんゞと私の頭を撫でれば、安心したように笑った。
体育をやってみたかった。
体育をやりたかったのにも対して、クラスメイトはサボるなと私をよく罵り、ペットボトルを投げつけた。
彼のいない所で。
持久走で走る彼らはとても辛そうで、記録係の私を恨めしそうに見つめた。
そんな彼らを追い越して私にニコリとも笑みを浮かべてくれるのはやはり、アーサーさんだ。
心の救いであった。
「ぁ…よ、4分28秒!!!」
「おう!!!」彼の背中を見ていると、憧れと羨ましさがある。
たくましい背中にあなたは何を抱えているの。
羨ましい。
「あいつさ、アーサーのこと好きなんじゃねw」
「え。それな?やっぱそう思うよな?
ゲイってやつ?ww女子の大好きなやつじゃんw」
「うへぇ、俺には無理だわ〜男なんて抱けないってww」
腹が立つ。腹の底からふつふつと湧き上がってくるこの熱を紛らわせようと自分の測定係を全うした。聞こえないふりをして、集中するようにした。
「まじクソど陰キャ、」
そんなの、言われ慣れた。
小さな音を立てて、シャーペンの芯が地面へ転がった。
虫の声が、耳の奥を響かせた。汗が、止まらない。息が苦しい。日光が熱い。水が欲しい。
周りが見えない。手が震える。地震でも起きているように足がフラフラしてくる。
あぁ、どうして私はいつも…。
ハッとして意識を取り戻すと目の前にはアーサーさんが私の肩を掴んでまじまじと見ていた。
「……ぁ、アーサーさん…?」
「顔色悪いぞお前、どうした…?
とりあえず保健室行こうぜ?」
「だ、大丈夫です、私、動いてないですし、
少し、嫌なことを考えていただけなので…」
「……でも、一応行っとこうぜ?」
「大丈夫です!!!ほら!!元気ですので!!
ちょっとだけぼーっとしてただけです!!」
「…菊……」
目線をアーサーさんから外すと、ほかの彼らは私の方をチラリと見ては仲間たちと笑い、睨んでいた。
アーサーさんは人気者だし、光ある生徒だ。
そんな彼はクラスの太陽のような存在。
その正反対の私を皆、恨んでいる。その目すら恐ろしい。本当は、一人でいたかった。
こんなに苦しい思いをするくらいなら。
何をしても、恨まれ、妬まれ、笑われてしまうのか。
「…恐ろしい 、」
「何が…?」
「いえ、日光は怖いなぁ、と。」
「まぁ…熱中症になるといけないから、
日陰にいろよ?いいな?」
彼はそそくさと言ってしまった。
私には蒸し暑さと、孤独感を感じた。
距離感を感じてしまうのだ。彼と私は違いすぎる。
それなのに彼は私に執着した。
普通の暮らしがしたかったのに、
邪魔 だなぁ 、
少しでもそう思ってしまっていたのか、
少しでもそう思っている自分が大嫌いだ。
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アーサーさんが次の日学校を休んだ。
持久走はちょうど秋の終わりくらいだったので、自分でもできると思った。
少しでもやりたいと思った。
だから……彼に秘密で参加した。
そんなに体が弱い訳ではないし、そもそも何も知らないクラスメイトにあのような事ばかり言われて流石に腹が立っていたのか、
やる気がみなぎっていた。
「……え、本田やるの…?」
「なんだよ。できるんじゃん。やっぱサボり?」
「あいつ実はめっちゃ、運動音痴だったりして」
「てかあいつと小学校から一緒だけどさ、
あいつが運動した所見た事ねぇわ。」
予想していた通りの言葉ばかりで自分でも笑ってしまう。まさか当たってしまうとは。
低脳な事ばかり言うだろうとは思っていた。
早速走ってみたが、案外行けるものなんだなと
思い、それに、アーサーさんの次くらいの速さだ。
自分でも驚いている。もちろん彼らも驚いていた。
手のひら返しをしたのか、彼らは私を応援し、私を褒めた。
初めからやれとの事を言われたのは事実だが、
すごいねと言って貰えて嬉しかった。
運動って楽しい、こんなにも楽しいのになぜ今までやってこなかったのか。
もっとやりたい。
もっと
みんなのように
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